ハエハエ蚊蚊果チョコレート

 回る~回る~ルーレット~♪

 只今、種族決めルーレットの真っ最中でございます。さて何になりますやら


 ピッピッピ……ピコーン!


 おっ、止まったよ。さあ何かな何かな

「決定しました。種族は【動物】そして……カメレオンです!」


……は?


 エリーさんの言葉に思考停止。動物までは理解した、だがその続きが

「カメレオンです」


…………


「え~! マジでー!!」

 爬虫類生物が机の上に3D表示される。まさしくカメレオンだ

 多少、現実より大きいかな

「それで、どうします?」

 エリーさんが聞いてきた。どうするとは、カメレオンになるかって事だよね


「あのー、もしカメレオンで始めたとして何が起こります?」

 おそるおそる聞いてみる

「予測されるのは通常のスタート地点ではないこと。人型と異なるため普通のプレイが困難である事などでしょうか」


 あー、まあ分かる。どうしよう、やり直すという選択もあるんだけど

「そうなると人種でのスタートになります」

 そうなんだよね。勿体ない気もする

 別にカッコいいプレイスタイルを望んでるわけじゃないけど、それにしても爬虫類かあ


「ここだけの話しですが」

 え、なに?

「人型以外の種族から進化により、その身体を得たプレイヤーも居ます」

 ほう、そうするとカメレオンもひょっとしたら人型に……想像してみる。うん無いわ

 

「やり直しされますか?」

 残念そうな顔をするエリーさん。なんかあるの?

「ルーレットを回された方の8割が、やり直されていまして。その、運営こちら側としては少し残念なのです」

 ほー、それはそれは。まあそうだよね、準備したものが活かされないのだから

 うん、そうか。よし!


「カメレオン、やってみます」


 エリーさんが嬉しそうな顔をしてる。さあ始めよう

「スタート地点は安全地帯ですから、ゆっくりステータス確認などが出来ます。チュートリアル担当者も近くに居ります」

 分かったよ。準備はオッケー


「では、あなたの冒険が幸せに溢れますように。行ってらっしゃいませ」


─── 


 目を開けると、そこは……うわ!

 視界が広すぎる。左右の目がぐるぐるして酔いそう

 ピコン! 『通常視野に切り替えますか?』

 

 はい/いいえ

 

 サポート機能かな。はい

 ふう、いつもの視野に。カメレオンって、あんな感じで見てるのかな 

 あらためて、周りを観察する

 どうやら森の中らしい。あまり深い場所ではないのか、木漏れ日が多い

 綺麗な水を湛る泉がある。覗いてみると緑色した爬虫類の姿が見えた


「うわー、カメレオンがわたしの思う通りに動く。じゃなくて、わたしがカメレオンかー」


 左右の目をぐるぐるさせてみるが視界はぶれない

「ここは安全地帯って言ってたね。よし、ステータスを見てみよう」


 モモ【カメレオン・動物】

LV1

HP20/20

MP5/5

STR5

INT2

AGI1

DEX2

DFE4

LUK3

固有スキル

 【共通語】【舌攻撃】【景色同化】


 うん、弱いね。スキルはどうかな

 共通語は、そのままの意味だろう。他の言語もあるのかな

 舌攻撃はカメレオンだしなあ。あれだろう、伸びるやつ


 その時、視界の端を何かが動いた。視線を向けると一匹のバッタだった

……待て、わたしは今なにを考えた?

 『美味しそう』だと! 確かに今はカメレオンだが虫を食べるのは、ちょっと遠慮し……

 うわあ、舌が発射体勢になってる


 シュッ!


 避けただと! いや、違う違う。バッタを食べる事をだね……


「スキルを使ってごらん」

え!? どなたでしょう。何処からか女の人の声が聞こえた

「いいから、まず気配を消してごらん」

 はい。えーと、これかな景色同化スキル発動

 自分では分からないなコレ、上手く出来てる?

「ああ、いい感じだよ。じゃあ狙いを付けて……今だ!」


 シュッ! パクン


 あ。口の中にバッタがいらっしゃる

 ま、いっか。ゲームだし、虫を食べても身体に害は無いでしょう

 

…………


…………


「なんで、チョコレート味なのー!!」

 もう、ビックリ。覚悟して噛んでみたが感触はコリコリするくらいで忌避するほどではない

 味は、まんまチョコレート。バッタ美味しい


「リアルの味な分けないだろ。そこまで運営もアホではないぞ」

 先ほどから話しかけてくる声。姿が見えない

「少し前に猫の姿をした子が来てね。味は果物なのにネズミや蛇を食べるのは嫌だーって逃げたんだよ。あんたは平気かい?」

「はあ、チョコは好きなので。ところであなたは誰でしょう?」

「私かい? 私はねえ……」


 後ろから気配が! 振り向けばエロ……じゃない色っぽい女性が立ってた。いつの間に現れたのか、最初からそこに居たのか分からないが強者の気配がする

 それより何より

「お稲荷さん?」

 そう、キツネ耳にふさふさ尻尾が生えてる


「ハハハ、そんな上等なモノじゃないさ。私は……そうだな胡嬢こじょうとでも呼んでもらおうか」

「コジョーさんは何者なの?」

「チュートリアル担当者と言えば分かるかい?」

 なるほど、それでアドバイスをくれたのか


「ところでアイテムインベントリは確認したかい? 宝珠ってアイテムがあるだろ」

 どれどれ、あるある。宝石みたい

「それを割ると経験値になって、売るとカネになるって仕組みだよ」

 へー、そうなんだ。え……もしかしてこれ

「さっきバッタを仕留めたから?」

「知らないで倒そうとしてたのかい、あれは立派な魔物さ」

 魔バッタさんであったか。そういえば回避されたしね

 魔物を倒して宝珠を稼いで強くなるシステムか、理解した。じゃあ質問

「ところで、ここは何処でしょう?」

 


「ここは暗黒街、その近くの森さ。ようこそ新人さん、闇に生きるモノたちが巣食う場へ」


 うわー、ヤバそうな街ですなあ

「なんで、ここがスタートなんだろ」


悪食あくじきだからじゃないかね?」

 悪が付くからってそんな単純な


「さあ、案内するよ。ついておいで」


 前途多難な気がします。あっ、ハエと蚊もチョコ味だ。飽きないようにイチゴとミルク味なのは気遣いかな、アハハ


 続きは次回の講釈で


 ─次回予告─

「ご褒美をあげるわ」

 妖艶な美女のご褒美とは

「おもしろそう♡」


 次回【謎の少女】

 皆様、お楽しみに~

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