「絆 ONLINE ~美咲忍法帳 友達が華やかなので影の道を歩もうと思います~

一 万丈、(にのまえばんじょう)

開幕致します

運命はじい様と共に

 忍びとは人知れず事を成し、他人に功を明かさず、そして人知れず消えてゆく運命さだめ

 なれど、わたしは闇に咲く花。花には花の生き様がございます。毒花に化生しこの身体、折れるものなら折ってみやがれ

 これより始まりますは、モモと名乗りし忍びのお話し 皆々様、御注目あれ。美咲忍法帳これより開帳にてございます

 

───


 わたしの名前は百々美咲どうどうみさきと申すのです

 今年から商業科高校に入学し、日々それなりに忙しく生活するなかで新しい友人が出来ました

 クラスメイトの有漢美袋うかんみなぎちゃん

 夏休みになりアルバイトで家業のうどん屋を手伝ってもらったのですが、その時フルダイブのVRMMORPGの事を教えてもらえたのです

 なんでも世界の美しさに一目惚れしたそうで購入を即決したそうです

 わたしはと言えば気にはなっていたもののー、家業の手伝いや勉学で手を出し損ねていました


 これは良い機会かもー

 

「さて、いくらあるかなー?」

 と、財布を覗けば中身は多くない

「これは、もうちょっと先の話になりますなー」

 安い方のヘルメットタイプでも結構なお値段なのです。ちなみに高い方は変わった形の椅子タイプ

 全体的に、まーるい形で座る所を切り取った感じ

 秋くらいには、何とかなりそう。そう思ってたんだけど

 

「み~さ~き~」

「お爺ちゃん!?」

 我が家の爺様が呼んでる。何故か元気が無い

「ちょっと来てくれ~」

「ほいほい」

 どうせなら、お小遣い下さいませ


「これ、使うか?」

 出てきたのは、お小遣いよりも凄いあのヘルメットでした

「お、お爺ちゃん!? これはそのあのゲームでするかなあ」

 言語崩壊。お爺ちゃん、苦笑い


「おう、そのゲームじゃ。ばあさんと一緒にやるつもりで2台買ったんじゃが、断られた」

 んで余ったとー。ん? ということは

「お爺ちゃんもゲームやってるのー?」

「おお、そうじゃよ。わし、発売日スタート勢」

 なんとなんと。こんなことなら最初から頼めば良かったよ

「分割払いでええぞ」

ガクッ

「かわいい孫からお金取るのー?」

「それ、わりかし高いんじゃよ」

 知ってるよ。だけどねえー、マイクロバスをキャンピングカーにして旅行を楽しむような、じい様だよ。せめて負けてよ

「年金暮らしの老人を不憫に思わんのか」

 思わねー、資産いくらよ。そんなやり取りもお構い無しにパソコンを起動する、じい様


「おうおう、更新されとるわ。ほうほう空中戦の動画か」

 ちょーいと覗いて見れば、とあるプレイヤーのブログでした

「相変わらず、ポシェットちゃんは良いのう。ジジイ感激」

 うわー。画面に映る可愛らしい子を見ながらニヤケてるよ

 

 白く輝くヨロイを身に纏った女の子がデッカイ、人?と戦ってます。おやー? この娘はひょっとしてー……やっぱりそうだ


『ゲーム内ではポシェットって名前の精霊なんだ』

 美袋なぎちゃんとの会話を思い出す。よーく見ると、髪とか目の色が違うけど間違いないですねー

 

「これ、なぎちゃんのブログなんだ。カッコいいー!」

 ピクッと反応する、じい様

「その、なぎちゃんとやらは知り合いかの」

「この前、手伝いでアルバイトに来てくれた娘だよー。学校のクラスメイト」

 スザッと正座して、わたしに詰め寄るお爺ちゃん

「その、紹介してくれんか? もちろんゲーム内の話じゃ。わし、この娘のファンなんじゃよ。な、頼むよこの通り」

 両手を合わせて拝み出したよ。友人を売るわけには……待てよ


「さて、どうしようかな~」

 ポンポンとヘルメットなVRマシンを叩く、わたし

「四割引」

「それじゃあ、友達は売れないなあ~」

「七割引!」

「電話番号もしってるから、直接話せるし~」

「くっ、持ってけ!」

「ありがとう、お爺ちゃん」

 こうしてVRマシンを手に入れました


「じゃあ、連絡をじゃな」

「待って待って。仲介する、わたしが居ないと警戒されるでしょー。早速始めるから、ちょいと待っててよ」

「仕方あるまい。頼んだぞ」


 自分の部屋に帰って準備をしましょうか。連動させるのはスマホだけでいいですね

「さて、起動スイッチオン」

 ヘルメットに付いてるバイザーから文字が浮かびます

 『バイタルチェック……正常』

 『フルダイブシステムON』

 『絆オンライン、起動します』


──これが、なぎちゃんが惚れた世界


 賑やかな、おしゃべりが聞こえる街中。植物の匂いさえする森の中

 触ると冷たい水、吹き抜ける風

 息づかいで緊迫さが伝わる戦闘。味、香り、感触が分かる料理

 全てが現実と変わらぬ仮想現実の異世界


 凄い、凄い! これがフルダイブ!!

 人生において久しぶりに感動しました


 やがてデモンストレーションが終わりタイトルが表示された。そして暗転


 目覚めた先は


「ようこそ、絆オンラインの世界へ。私の名はエリー、この大地への案内人です」


 オレンジ色のローブを着た、女の人が挨拶をしてくれた。周りを見ると石造りの建物内のようで、部屋には机と椅子がある


「ここは転生管理局です。登録者カンバアルキ様ですか?」

 おやー? 聞いたことあるような……思い出した!

 昔、お爺ちゃんが声優やってたときの芸名だ。何で本名じゃないのー?

 まあいいや、私の名前に登録し直そう


「承知しました。登録者を変更します。お名前を確認しても?」

 え! 何で分かったの

「迅速に進めるため、脳内思考を読み取っております。登録者様に不利益な発言は致しませんので、御了承ください」

 まじかー。あ、名前は百々美咲です

「ドウドウミサキ様ですね。登録完了しました。このゲームの説明を求められますか?」

 くわしいことは知らないからねー。お願いします

「畏まりました。このゲームは──」


 タイトルは【絆ONLINE】

 仮想現実世界に埋没フルダイブして遊ぶゲームだ

 身体に以上が起きたり、精神的に苦しくなると強制ログアウトされ、医療機関に通報もある

 この辺はしっかり確認された。一人暮らしであるかとか家族構成なんかもね

 この世界ヒューガルデンに人種もしくは、それ以外の種族となって、いろんな事を体験できる

 目的は何でもいいらしい。ひたすらに強くなるために戦ったり、美味しい物を求めて料理したり、もしくは引きこもったりー

 なかにはNPCに溶け込んで町を発展させたりしてる人も居るらしい。そして盗賊だったり、暗殺者だったり闇に生きる住人も

 あまり酷いのは取り締まりの対象(BAN含む)になるんだってー。とは言うものの全年齢対象であるため、あくまで職業的な意味合いであり、ゲーム内で忌避されてるわけでは無いみたい

 ロールプレイとしての裏稼業なのだそうだ。一定以下の年齢層には危険な単語は伏せられるようだし節度を持てないと、そういう職業クラスには就けないらしいようです

 なるほどー、要は現実でダメなことは、こっちでもダメって事ね。仮想現実だからといって、ヒャッハー! はダメと


「──以上で説明を終わります。質問はございますか」

 人種とそれ以外って何か設定はあるのー? 差別だったり、戦争してたりだとか

「いえ、そのような事はありません。見た目と能力が違うだけですね」

 へえ、面白そう。普段の自分とは全く違う姿かあ

 そう思っていると、なぜか顔を曇らせるエリーさん

「申し訳ありません。所謂、幻想種アナザロイドは課金によるガチャチケットのみでしか選択出来ないのです」

 おおう。金持ちにのみ許された特権かい

  

「そういうご意見が多数ありましたのでアップデート後に措置が取られました」

 そう言えば昨日メンテナンス中だって、なぎちゃん言ってたっけ


「お金を出して頂いた方と差別化をするため、初回限定一回のみのルーレット選別になります」

 それ、何回もキャラクターを作り直せばいずれは当たりを引くのではー?

「1アカウント一回のみです。やり直された場合は人種ヒューマノイドのみの選択となります」

 なるほどねー

「ではアバターを作成致しましょう。まず、この世界での名前を教えて下さい」

 むー。百々だからねモモでいいかな

「畏まりました、モモ様。さて、では種族決めルーレットは回されますか?」


 もちろん!


「では、ルーレット召還!」

 ポンッと煙と共に大きいルーレットが召還された

「ルーレット、スタートします」


 回る回る運命乗せて


 わたしはワクワクして見てたけど、この後の結果に落ち込む事になります


 続きは次回の講釈で


 ─次回予告─

「ええ~! マジでー!!」

 果たして美咲に選ばれた種族とは

「なんで、チョコレート味なのー!!」

 

 次回【ハエハエ蚊蚊果チョコレート】

 皆様、お楽しみに~





 




 

 

 

 

  

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