第3話 守りたいもの
守りたいもの(1)
夕ご飯の後、自宅のリビングでテレビを視ていた時の事です。
「これは使えるかもしれませんね」
「何が使えるの。トワ?」
首を傾げるセカイさんに私はテレビの画面を指差しました。そこにはどこぞの地方にある巨大な大仏が映っていました。
「これをモデルに向こうの世界の怪物らを退治する人型を作ろうかと思いまして」
「こっちの世界の人からしたら罰当たりって言われそうだけど……それはいいとして、あんなに巨大な物を作れるの?」
セカイさんが画面を指差して疑問の表情を浮かべました。そう思うのも無理もないでしょう。番組で紹介されている“牛”の名を持つ大仏は百メートル程の高さがありますから。
「大きさは前回と同じ二十メートル程の高さを予定してます」
「前回……ね……」
セカイさんの顔に影が差します。
────ごめんなさい。嫌な事を思い出させてしまいました。本当に反省してます。
「こ、今回はこの姿に見合った必殺技も考えてみたんですよ」
気を取り直して、セカイさんの心の傷を広げてしまわないよう注意し、なるべく明るく説明を続けました。
「南無サンダー! です」
「…………………………」
「……ダメですか?」
「ダメってわけじゃないけど、トワの想像力が変な方向にいってるんじゃないかと思って……」
今度は心配そうな顔をされてしまいました。そんなに変だったのでしょうか?
でも今、ここで考え込んでも仕方ないので、とりあえずそのまま話を続けます。
「名前はアミダニョ
「雷にこだわっているのね……」
セカイさんは苦笑いをしながらも「いいんじゃないかしら」と言ってくれました。
とはいえ、反応が今一つだったので、もう一度よく考えてダメだったところを洗い出して、アイデアを煮詰める事にしました。
翌日。お昼の時間を回って、世間一般のサラリーマンの方たちの休憩時間が終わる頃、我がお店の中は相変わらず閑古鳥が鳴いている状態でした。店内はセカイさんと私しかいません。
レジで座っていた私がふと横を見るとセカイさんはスマホの画面を見ていました。
「何を見ているんですか? セカイさん」
「株価よ。トワ」
セカイさんは株投資をやっています。しかも今まで損をした事がありません。
以前、どうして株価の上がる銘柄を予測出来るのかを聞いたら、
「だって私は世界の意志だもの」
と、笑顔で返されました。
どういう事なのでしょう。世界の意志とは予言まで出来るのでしょうか。少なくとも私には出来ません。
だとしても、そのお陰でお客の来ない私のお店も維持出来ているので特に深くは突っ込まず素直に感謝する事にしています。
「トワこそ何をしているの?」
今度はセカイさんが私を見て、首を傾げました。
私の両手の平の上には一匹のアゲハ蝶が羽根をヒラヒラとさせて宙に浮いていました。もちろん、これは生命のあるものではありません。
「これは私が作った蝶なんですが、何か使い道がないか考えていたところです」
ただ観賞用として飛ばしておくだけなら本物を見ていればいいだけなので、何か用途がないと何も意味がありません。
「……………………」
何か私、せっかくセカイさんから大きな
「あの、セカイさん。今日はお店も空いてますし、ちょっと任せてもいいですか?」
「そうね、今日もお店空いてるし別に構わないけど。どうかしたの?」
「う……こ、今後色々なアイテムを作るための参考として家の倉庫の中を見てきたいんですが」
倉庫は住居と隣接していて、その中は私達が元々住んでいた世界で作られたマジックアイテムなどを保管している場所です。だいたいはセカイさんが役に立ちそうな物を独自に集めた物で、状況のわからない私は滅多に入る事はありません。
「う~ん……いいけど。そのかわり一応扱いには気をつけてね。そんなに危ない物は置いてないはずだけど」
「わかりました」
そして私は、今日も空いているお店を後にして住居の方へと向かいました。
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