第8話

「凄い……」


 二人がエイデンに案内された場所は数多くのパワードスーツが保管されている。初めてここに来たアリエルにとっては驚愕に値するような場所であり、一般人であっても似た反応を示すだろう。

 ただ、オスカーは何度もここに来ているからか、大した感慨もなさそうだ。


「ははっ、私はその新鮮な反応を見れて嬉しいよ。まあ、君はサイズを測りに来たんだろう? なら、私の部下に任せるよ。女性のことは女性に、だ」


 エイデンが更に奥に進み、扉を開くと一人の女性が現れた。

 薄緑色の三つ編みの髪と目の色白の女性。


「社長! どうしたんですか?」

「お客様だ、カタリナ」


 カタリナと呼ばれた女性はエイデンの後ろにいた、アリエルとオスカーに視線を移す。


「はい?」

「『牙』のパワードスーツを作るからサイズを測って欲しいのだよ」

「『牙』のパワードスーツですか……。確かに担当ですので引き受けますね」


 先ほどからチラチラとカタリナがアリエルに視線を送ってくる。

 視線を感じて、アリエルの気持ちは少しばかり落ち着かない。


「では……」


 彼らにカタリナが近づく。


「その間、私はハワードくんと話すことにしよう、良いかい?」

「オレは構いませんよ」


 オスカーとエイデンの二人は来た道を戻って行った。この場に残されたのはアリエルとカタリナだけ。


「うふっ、ふふふっ、宜しくね、えーと……」


 どこか喜ばしそうな表情。カタリナの口がモニョモニョと動いている。


「アリエル・アガターです!」


 名前を名乗っていなかったことを思い出してアリエルが名前を教えると、パッと花が咲いたような笑顔を見せた。


「アリエルちゃん。うんうん、宜しくね。末永く、ご贔屓に」


 何故か初対面だと言うのに妙にアリエルに対するカタリナの距離が近い。アリエルの肩をやたらと撫でたり、鎖骨を撫でたり、腰に手を回したりとボディタッチが多い。


「ささっ、測りに行こうね!」


 アリエルの体を執拗に撫でまわし、頬を擦り寄せたりなど、その動きはもはやセクシャルハラスメントに近しいものだとも思えるが、女性同士であった為かアリエルも強く出ることはなかった。


「うへへっ、お胸のサイズと、お尻のサイズ、腰や腕周り太腿ふともも脹脛ふくらはぎも、測らなきゃね。ふへっ、ふへへ」


 頬を赤らめて、彼女は気味の悪い笑みを浮かべながら呟く。カタリナはアリエルの脇の間に手を入れて綺麗な形をした胸を撫でる。


「んっ……」


 妙な感覚に思わず吐息混じりの声がアリエルの口から漏れてしまう。


「あ、可愛い、可愛いよぉ……」


 カタリナ・ギブソン、彼女は立派なレズビアンであった。


「じっくり測ろうね、じっくり、ゆっくり」


 ただ、その事実をアリエルは知らない。

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