第68話
「アメリア!」
暴れ回るリーゼと、抵抗するアメリアのタイタン。下手を打てば、同士討ちする可能性もある。
フレンドリーファイヤが恐ろしく、カルロスは、援護の狙撃をも行う事ができずにいた。
引き金にかかったタイタンの指を引くことができない。
『ぐぅうっ!』
アメリアの呻き声が通信機に入り、どうすることもできない自分に腹が立つ。この戦闘に割って入ることを思考するが、これは愚作と思われた。
戦闘の巻き添えを食うこと。
そして、狙撃により安全に倒すことの出来るチャンスを無くしてしまうこと。
ただ、カルロスも確実に飯島を排除したいがために好機を窺っていた。
そのために友であるアメリアが耐えることを祈っている。
そんな時だった。
先程まで繋がっていたはずのルイスとの通信が切れてしまった。
「ル、ルイス、さん……?」
呼び掛けても、応答が返ってこない。
先ほどまでルイスが戦闘を繰り広げていた方向を視界に収める。先ほどまで火花を散らしていた場所だ。
しかし、そこには静かになった二つの鋼の巨人が倒れていた。
「あ……、ルイスさんが、死んだ?」
信じられなかった。
カルロスが、尊敬する先輩であったルイスが死んでしまった。事実を受け止めるには唐突過ぎた。
戦場で何を、と思うかもしれないが、カルロスは冷酷に冷徹に、心を殺すことができなかった。
確かめるような言葉。
彼の言葉が、アメリアにまさかの事態を引き起こした。
ルイスが死んでしまったという事実に、アメリアに少しの動揺が生まれ、タイタンの動きが遅れる。
暴れ回るリーゼの持つ大剣が袈裟斬りのように、軽々とタイタンごとアメリアの体を斜めに引き裂いた。
切られたというよりも、潰されたと言う方が正しいか。
アリが人に踏み潰されるように巨大な鉄に押し潰された。
血が溢れた。
タイタンの体と同じ深紅の液体が。
それでも、リーゼは止まらずに剣を振り続けた。銃を放った。自暴自棄になって。
リーゼの姿は余りにも隙だらけに映ってカルロスは銃を構えて、ゆっくりと戦いを終わらせるトリガーを引いた。
放たれた弾丸は三発。
頭、背中の中心、腰に打ち当たり、ゴギイィィインと音をたてながらも装甲を貫通していく。
リーゼの頭が飛び跳ねた、
背中には穴が空いた。
そして、ゆっくりとリーゼは倒れていく。
まだ、確実では無い。
カルロスはリーゼに近付き、更に二発、弾丸を放った。とどめにハルバードを背中から突き刺した。
「終わった……」
激しい戦いの幕が下りる。
勝ったのだ。
生き残ったのだ。
「勝っ、た……。生き残ったんだ……」
遣る瀬無い。何とも言えない。心を曇らせるような感覚があった。
「アメリア、ルイスさん……」
どうして自分だけが生き残ってしまったのか。どれだけ考えても、答えは出ない。大切な物を失った。
そんな、喪失感がカルロスを襲う。
友を、尊敬する先輩を失って、得た物はたった一つの戦いの勝利だ。
カルロス個人としては酷く下らない物だ。
「…………」
泣き叫ぶことも彼にはできなかった。
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