落ちこぼれ魔法使いは夢を見る~婚約者に育てられて成長する私

リナ

第1話 魔法王シルエの秘密

この場になぜ彼が?

そう思ったのは、当然だった。


風を切り息を切らし走っていく。

見てはいけないものを見てしまった。


そういう思いでいっぱいになっていた。

シルエ王があの様な遊びをするお方だったとは?

そう、ここは、夜の街ミランダ!


確かにお忍びで貴族の魔法使いとかが囚われた他種族を抱くことはあるのだろう?


しかし、それは、戯れ程度だと思っていた。


大天使王の娘であるエメラルドがこの街で働いているのは知っていた。


しかも、その御相手がこの国を総ている。

魔法王というのはまずいのではないか?

あの人は独身だったはず。

よって、当然夜遊びはするだろう?


しかし、だからといって、このようなところにお忍びで来ること自体が変だ。


床には呼べぬ関係……。


そう頭によぎった。


急いで空を飛んで行く。


街の景色が暗く見えるのは?

空の雷鳴が轟くのは?


高位魔法使いが魔力を使う前兆と言われている。


見られはしなかったはず、一瞬なら、確かに……この時はそう思っていたのだった。


雷がなる事に近くなって行く。


そしてザァーと雨が降り始めた。


しかもこの雨は、ただの雨では無い。


当たる度に体が激痛に見舞われる。

正直辛い、痛みに必死によろけそうになりながらも何とか意識を保っていたが……。


それもそろそろ限界のようだ。


ドサッと体がスローモーションに地面に倒れこめば

やがて響く高級そうな靴音。

すぐ側でピタリと止まれば

それを誰がに抱き起こされた。


薄れる意識の中でその表情を見てしまい絶句した。


そう、抱き起こしたのはこの国の国王、魔法王その人だったのだから……。

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