3節 拾い物
「色々やる前にまず
とは言ったもののだ。正直に言って服がない。
妹の服を借りればいいじゃないかと思うかもしれないが、肉感的な体を持つ礼には合わないし身長も俺に近い。
だから明らかに妹の服を着せるのは無理だ。
「いや、そもそも何でそんな恰好してるんだよ」
「何でって、作られたときは全裸で防御力に疑問を感じた。だから作った」
「作った?」
「多分、カメとかの甲羅に近いと思う」
「どういうことだよ……」
とりあえず海斗は自分の部屋に移動していく。
木製の扉を開ければ天井まで届いた棚には本やモデルガン、フィギュアなどか綺麗に飾られている。
そして机には白をベースに青色を所々に塗装された、妹ほどではないがまぁまぁなスペックのデスクトップパソコンとダブルディスプレイ。
そして、その横には延長机と棚が一体化したようなものがあり、その上にはプリンターや液晶タブレットに携帯ゲームが並べられている。
「取り合えずソコ座れ」
通信販売で買った安物の椅子を指でさし、入り口の横にあるクローゼットを開けた。
出るところが出てるから多分2周りぐらい大きくないと無理だな……。
ごそごそとクローゼットを漁るが出てくるのは機能性を重視したものばかり、尚且つ大きさも胸に突っかかって着られないだろう。
「あー……って何してんねん」
ごそっと何かを動かすような音が聞こえ海斗が振り向くすると。
「ごめんなさい、動いて」
「いや、動くなとは言っていないけど。なに俺のワイシャツ着てるの」
そこにはベットの上に腰かけ海斗のボタンダウン。俗に言うワイシャツを着こむ礼がいた。
いつ脱いだのか、薄布で作られたシャツは安易に裸体を透けさせる。
「っ……って見えてるって!?少しは羞恥心を持て!!」
勢いよく後ろを向きながら叫ぶ。
「着替えただけ。おかしい?」
「おかしいに決まってんだろ。現社会的に特別な関係じゃない異性が安易に裸体を見せちゃいけないの。てかいつ着替えたんだよおまえぇ」
服は伸び、布の隙間からはち切れんばかりに胸が露出している。
そもそもあんな普通じゃない服を脱ぐのに時間がかかるはずだ。海斗はタンスに視線を移して10秒経過していない。
いやそもそも礼が来ていた元の服は視界の中にはない。
「てか元の服はどうした」
「こっち見て」
もう一度今度は力ずよくこっちを見てと呼び掛けられる。
「せめてボタン閉めろ。閉めてから振り向く」
そう言うと着崩れの音がしいいよと呼び掛けられる。
海斗がゆっくり振り向くとやや肌色が見えるワイシャツをきっちり閉めた礼がいた。が、ボタンとの間からはみ出る肌色が扇情的だ。
羞恥心がないのか?
「で、元の服はどうした?」
「収納した」
「いや勝手に収納されたら困るんですが」
勝手にモノが増えたり減ったりしたら困るだろ……。
「わかった。戻す」
「戻す?」
そう言うと胸から黒い液体があふれ出す。それは滴り落ちることなく礼の体にまとわりつき先ほどのボディスーツのようなものが現れる。
「うっそだろ……」
俺は唖然としながらつぶやいた。
そんな、スライム上なもので服を作れるなんて聞いたことない。
「……機械生命体……本当かもしれないな」
俺は小さくつぶやいた
あの後、汗まみれの礼の身なりをきれいにしようと言う事になり脱衣所に誘導することに。
頭を手の甲で抑える。幻痛から頭を振り切りだし、どこかに行かれても困るから手をちゃんと握って先導してやらなくてはならない。
脱衣所は一階のリビングの隣にある。ちょうど壁一枚向こうには
木製の引き戸をスライドさせる。まず目に飛び込んでくるのは白い洗面台。左を向けば衣装棚でその向かいには洗濯機が置いてある。
「お風呂掃除してないから使うならシャワーだけにしろよ。洗濯機は使えるよな」
「ん?」
「まさか……洗濯物もわかりませんなんて言うつもりか」
一様、呼び掛けるがどうやら洗濯物もできないようだ。
閉じかけたドアをもう一度引き脱衣所に入る。
「あんな所で寝てたんだ。とりあえずその服汚れてんなら洗濯するぞ」
「必要ない。そもそも汚れない優れもの」
「おぅ、そか……まてまて」
そのまま、浴室に入ろうとした礼を急いで止める。
「着衣でシャワー浴びるやつおるか」
「ぬぐ」
その瞬間、衣装がまた黒々とした液体に代わる。その液体は胸部の上にあるクリスタル上のものに、掃除機に吸い取られるように消えていった。
「それは?胸のやつは飾り……ってわけじゃないな人体に埋め込まれてる」
タオルで隠せさせながら先ほどの結晶をみる。
位置的には胸の谷間の少し上と言ったところか。形的にはひし形だろう。よくよく視線を凝らせば薄っすら発行している。
ここまでは普通のアクセサアリーでも再現が可能だろう。問題はこれが埋め込まれているということだ。
ルビー色の宝石を中心として根っこのようなものが生えている。肌の上からかすかに見えるがなんとなく植物で言えばひげ根、もっと根幹部分はもっと深く寝ずいていることが分かった。
下手に触れるのはやめておこう。
「んん、洗い方はわかるか」
「補助が欲しい」
またか。この肉感的な少女はまたそんなことを言うのか。
「口頭で説明してやるから」
「妹は洗ってあげてるのに?」
「ふぁ!?」
た、確かにそれは事実だ。舞はめんどくさがり屋で衣服の着替えやふろの手伝いなどをしている。が、それは舞が寝かけているときだけだ。
「どうしてそれおぉ」
「記憶を参照。けれど体の性質が違うため検証が必要だと判断した。それに女性の扱いもわかっているように思う……」
確かにわかるけどね。けど気持ちの問題的に妹と君は違うじゃん。
いやここでダメってもしかたがない。
「わかったよただし背中を向けよ。わかった!あと耳に付けてるピアスも外せよ」
「うん!」
感情の突起がないに等しいがそれでも喜んでいるのはわかった。
浴室では2mほどの大きさの浴槽とシャワーあとはプラスチック製の椅子があった。
夏なのでぬるま湯に調節しシャワーの勢いを弱め体にかけていく。水に驚いたのかややビクと動くが暫く優しくかけてやるとおとなしくなる。
犬ってこういう感じなんだろうな……。
体に沿って水が滴り落ちて床をぬらす。
鏡から反射する姿を、隠しているからと言ってあまり見ないように洗っていく。
「髪洗うから目をつぶってね」
さらさらと流れる髪を手に洗う。
最近は妹と入るのは少なくなった。年齢的な意味もあるがそれ以外にも様々なことがあったから。
あの時の妹は目が死んでいた。
だからか?放っておけなかった。
今では人と軽口を叩けるほどに精神が回復した。
前の出来事を思い出しながら洗う。幸い5分かからずに済んだ。汗を流すだけだから当然と言えばそうなのだが。
「おっけ。これでいいだろう」
「海斗は?」
「俺?……風呂掃除するからこのままだけど」
「そう……じゃあ」
そう言い海斗の胸に勢いよく飛び込んできた。
見上げる礼の瞳を視る。
「え」
「掃除するのからどうせ濡れる。なら一緒に濡れよ」
「
何をバカなことをと吐き捨て腰に掴まれた腕を振りほどこうとするが。
――っ!?は?え……振りほどけないっ。まるで押さえつけられた時のような……。
腰を揺らして振りほどこうとするがそもそもさせてくれる筋力がない。
視線を下げれば高揚とした顔を浮かべた礼の姿があった。息も荒く湿っぽい。
「身体能力で私にかなう?」
すぅと小さく息を吸い。
「わかったから離れろ。ソコ座れ」
一回落ち着かせて座らせる。全く……。
イスに座らせ視線の戻すと何故か内股になり太ももをこすり合わせていた。さっきまでと様子が違う。
親指と人さし指で海斗の服を赤面しながら掴んでくる。
「えっと……」
「なんか……ムズムズする」
「あ?どうした」
「なんかむりぃ」
何が……そう言う暇もなく何か液体のようなものが流れていく。それはやや黄色みがかかった液体であり瞬く間に水たまりを作っていく。
……って。
「ああああああああああああああぁぁああ……っ!?」
「いい!トイレはここですること。わかった」
「はい。マスター」
「ふざけてんの?」
まさかお風呂場で漏らすなんて。
そういう本は結構見たことがあるし妹が買っていたが、現実で見るのとはちがう。画面や紙から液体が飛び散るわけないし、飛び散った場合それは俺が掃除しないといけない。
まだする前だからまだしもした後にあられたらブチギレていただろう。
衣服どうしようかなぁ……。
しかし意外だったのは、一度教えた事は完璧にこなすことだった。
もう知らん。体は自分で洗えというとシャワーを掴み自分で使っていた。
本当に子供みたいだ。
「で、お風呂場で放尿プレイさせてエロゲ見たいなことをさせてそう言えば着替えないから妹の下着を借りようとしてこの部屋に来たわけですか兄」
「はい」
その後俺たちは妹の部屋に向かった。位置的には自分の部屋の横だ。
何処かに監視カメラを設置してるかのごとく先ほどの状況を声にだす。
「……何で呼んでくれなかったのさ。美少女が赤裸々にもじもじと内股をこすりつけ解放感を得る。私も見たかったなぁと言うかここでして」
「掃除するの俺なんだが……っ」
「見せま……しょうか?」
「答えなくてもいいから隠せぇぇ」
そんなことがあったりもしたが何とか妹の下着を着させる。その時、舞も胸に埋めこまれている宝石に気が付いたのかやや顔をしかめる。
とりあえず家には合うサイズがなかったため、普段の時はあの闇堕ちスーツのような恰好で過ごしてもらうことにした。
「兄ぃ。あれ装飾品じゃなくて肉体にうめこまれてるよぅ」
「わかってる」
「あんなの見たことないよ」
とりあえず情報を耳打ちで共有する。そして二人は人体実験の被害者ではないかと結論を出した。
「終わった?」
「あ、うん。待ってくれてありがとう。で、聞きたいことがあるんだけど衣服を胸のクリスタルから出したって聞いてんだけど……ほかになんか仕舞ってる?」
そして、黒い液体が出てきて衣服を形成したのを聞き妹は、他にも何か仕舞っているのではないかと思ったのだろう。
「わかった」
そう礼が胸のクリスタルを指先で撫でるとズブリと底なし沼にはまったかのように指が沈んでいく。
「え?」
「は?」
どんどんどんどん沈んでいき手首がすっぽりと入っていった。
礼の表情からは痛いとか気持ち悪いとかの不快感は見受けられないが、それでも体内に入ってくる様を見ると……。
「うぇぇぇええ。大丈夫なの?」
と、妹同様に問いただしたくなる気持ちが出てくる。
その問いに対しての返答は手首をぐるぐる動かすことだった。
――うっわぁ。
くちゅくちゅとかき混ぜるごとに黒い液体が飛び散っているのを見て、妹は半歩下がり海斗はゆっくりポケットにあるナイフに手を忍ばせた。
しばらくすると手を止め、何かつかんだのか引っ張り上げた。
「それは……」
それは銃であった。
拳銃またはハンドガンと言われるもので携帯性の高さから、
「はい」
そして礼はそれをこちらに手渡してきた。
小さく息を吐き銃に触れる。
そのまま胸の前までもって来ると右腕でスライドを引いた。
ポリマーフレームで作られた外装が動きそれに連動してチャンバーの中に弾丸が装填される。
……本物だ。
海斗はすぐにマガジンを抜きもう一度スライドを引き手動排莢させる。
何故礼はこんなものを持っているのだろうか?
これは本や動画で見たことがある……いや実物を触ったこともある。
国防軍正式拳銃SIGP320Cだ。
国防軍の前身組織の自衛隊が正式採用していた自動拳銃の最新型だ。
一様国内でライセンス生産しているから手に入れようと思えば型落ち品が手に入れられるかもしれないが、それでも……警察組織などが管理しているはずだ。
「どうして?」
「海斗の部屋に類似品があった。だから出した」
「手動
「私がいた場所にあったから取った」
……。
9年ぶりに握る拳銃は軋むことなく頼もしさを感じられる。
けれど……それでも何かいやな予感が頭をめぐる。
なにか……なにか致命的なことに気が付いていないように思うのだ。
まるで取り出せるのが当たり前だと思う自分に。
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