無味、甘い 01
「ずるいよ──」
レイの一言。
まるで刃を首元に突きつけられるような気分。
レイの大きな瞳に更に広がり、宝石みたいな煌めきに囚われる。
「……でも」
言葉が続かないじゃない。
レイの大きな瞳が更に広がり、凄まじい威圧感を持って私を睨みつける。
怖い……と感じる暇も無かったわ。
腕を掴まれていないはずなのに、ぴりっとした恐怖に全身が本能的に竦んだ。続いてレイの威圧感に咽まれるように喉をごくり……と鳴らした。
──怒っている?
いや、それは違う気がした。
もっと衝動的なレイの迸りというのだろうか、刹那に生じた発露を浴びたのだ。
真正面。
不意打ち。
衝撃!
ようやくゾクゾクゾク! と何かが全身を這い上がるような感覚を覚えた。快楽が編み込まれたぬるっとした衝撃に揉まれるも、どうにか踏みとどまる。
ずるいよ、
意味がわからないんだけど──。
レイに、
ずるいって言われるほど、私はずるく無いし……。
「……はぁ、はぁ」
レイは私から視線を剥がすとその大きな瞳をまた一段と見開き、首を左右に回しながらじりじりと焼け付くような視線を、キッチンの収納スペースを見やる。
焼け付くような表情だった。
相変わらず怖いわ。
けど、でも、レイはその表情もとても魅力的なのよ。
怒り、で研がれた鋭利なレイの美しさにため息をつきそう。
「レイ」
「こんなに……こんなにたくさん……うぅぅぅぅッッ」
「いや、……あの、ホントどうしたの」
「だ、だってぇ──」
レイはきッ! と目つきを鋭くしてから腕を伸ばした。私が「あっ」という間も無く、その大きな袋──フレークの詰め込まれた袋を片手で掴み上げられなかったので両手でガシッ! と抱きしめた。
「これは何!?」
「……フレークだけど」
「な、何言ってるの? これ……だって、違うのよ、ぜんっぜん違うから!」
「レイ?」
レイは焦っていた。
困惑というか、混乱した色が額に汗となって滲んでいるみたい。
抱きしめたフレーク菓子の袋をじっと見つめている。
先程までの威圧感は消え失せ、今度は恐れるような表情を浮かべた。それも可愛いからレイ好き。
「え……あっ」
レイはかすれるような声を出した後、そっと腕を伸ばす。
収納スペースの奥に並べられたそれは、デフォルメされた動物のキャラクターが描かれた箱のフレークだった。
今度は優しく掴む。
「最初は美味しいけど甘すぎて途中で飽きる……レイ?」
レイはぎゅっと胸に抱きしめた。
そして体を屈めるとそのまま大きくため息をつく。
いや、ホント何があったの?
☆★☆★
// 続く
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