放置すればするほど強くなるゲームを5年間放置したらいつの間にか最強プレイヤーになってました。〜ぼっちは嫌なので最強であることを隠します〜
第74話 感情の爆発 Outburst of Emotions
第74話 感情の爆発 Outburst of Emotions
カイトが落下ダメージを喰らった後、目の前にはモンスターが湧いていた。
クエスト参加中はモンスターに遭遇する可能性が高くなる。
殆どの場合がモンスターの討伐がクエスト達成方法であったり、目的地にたどり着くまでのダンジョンには大抵モンスターが配置されているからだ。
この場合は前者だろうか、後者だろうか。
カイトに表示された新たなクエスト、【必殺帝の試練】。
試練というくらいだからダンジョンなのだろうか。
そして最終的には必殺帝と戦うことになるのだろうか。
判らなかったが、目の前のモンスターを倒さなくては話が進まない。
剣を抜き、強く握りしめ、胸の前に構える。
倒せるのか?
大柄な紫色のモンスター。
身体は丸みを帯びており、腕がゴリラのように大きく、足は小さい。
腕で体重を支えているのか、前屈みになっていた。
顔は黒い点が二つ…あれが目か。
口は大きく開かれ、大きな牙が二本生えていた。
カイトが攻撃をする前に大きな腕が動いた。
腕の大きさからは考えられないほど速い攻撃。
カイトが元居た地面が抉られた。
咄嗟に後退し攻撃を回避するカイトだったが、二撃目が飛んでくる。
なんとか剣で防ぐが力の差が大きく、吹き飛ばされる。
カイトは壁に叩きつけられた。
その壁すらも貫通し、カイトは新しい空間に辿り着いた。
ダメージは1000。
ミズキに貰ったポーションが無ければ即死だった。
それくらい強敵。
カイトが地面を震わせながら歩いてくる怪物に剣を構えていると、後方から声がした。
「…たすけて」
誰もいないと思っていた空間で突如として発せられる声。
声のした方向に振り返ると小柄な女の子がうずくまっていた。
瓦礫の後ろに隠れながら助けを求めている。
頭には天使の輪、赤いワンピースに裸足。
恐怖心に支配されている様子だった。
こんな幼い子もこのゲームをプレイするのか?
このゲームではスキンの変更ができる。
だから容姿が幼いだけで中身は大人なのかもしれない。
カイトは考えた。
しかし、もし仮にスキン通りの年齢だとしたら10歳にもなっていないだろう。
そもそもこのゲームは12歳以上のプレイヤー以外はプレイできなかったはず。
カイト自身も今年12歳だが、現状はまだ11歳だった。
何が起きているのか。
すると女の子は叫んだ。
「わ、わたしはいつのまにかここにいて…せつめいされたけどよくわからなくて…でも、ここで死んじゃうとほんとうに死んじゃうの!!」
泣きながら訴える女の子にカイトはどこか同情していた。
(なんだろう…まるで自分のことを言われているみたいだ)
余所見をしていたカイトに怪物は手を挙げる。
直撃は免れたが、カイトに450のダメージが入る。
瀕死だ。
怪物が女の子に気が付かないように誘導する。
カイトはもう一度この世界をやり直すことにした。
この女の子は助けられないけど、それでも今の自分では太刀打ちできない。
残りの体力は50。
絶望的、負け確定だ。
怪物に背を向け、女の子の方を向く。
そして謝ろうとした、ごめんねと。
だが、突然カイトの片目に赤い文字で警告が入った。
それは体力が残り少ないことを知らせるアラートだった。
こんな機能をカイトは知らなかった。
しかし目の前が赤くなる。
警告音も耳に響く。
よく見ると女の子の片目も充血したように赤くなっていた。
(なんだこれ…なんなんだこれは!!)
その時女の子が言っていたことが頭の中で響く。
≪…でも、ここで死んじゃうとほんとうに死んじゃうの!!≫
「…死ぬ…?」
怪物は何故か襲ってこない。
その隙に女の子に聞いた。
「この警告はなにかわかる?」
女の子は泣きだしそうになりながら答えた。
「そのアラートはもう少しでせいめいいじきのうがていしすることを知らせるもの…わ、わたしは病院で入院していて…いつのまにか…」
察しの悪いカイトでもわかった。
女の子の言っていることが正しいのかどうかは分からない。
でもきっとそうだ、だって境遇が似すぎている。
「この世界で死ねば…現実世界でも死ぬ…」
いつこの女の子は教わったのだろう、あの老執事の言葉を遮らなければ全てを説明してくれたのだろうか。
判らないが、死ぬわけにはいかなくなった。
この状況を打破するためにはどうすればいい。
一撃でも喰らえば即ゲームオーバー。
現実でもゲームでも、二度と生き返ることはない。
心臓の鼓動が激しくなる。
まだ実感が湧かない、自分が死ぬ間際だなんて。
敵は今のレベルでは敵いそうもない。
だとすれば。
カイトは女の子の手を引き、逃げ出した。
怪物が追ってくる。
こんな何処へつながっているかもわからない洞窟の中を彷徨うのは危険だ。
それにもっと強い敵に出くわす可能性もある。
それでもカイトは逃げ出した。
命が、命が掛かっているのだ。
焦り、視界が狭く、暗くなる。
足元に注意が行き届かなくなり、前に転ぶ。
手を引いていた女の子も同時に転ぶ。
怪物が迫り来る。
壁に追い詰められた。
「下がってて!!」
カイトが叫ぶと女の子は頷き、カイトの背後へと回る。
怪物はカイトに殴りかかった。
カイトはなんとか剣で応戦する。
しかし、圧倒的な力の差に、カイトは押し潰されそうになる。
巨大な拳が目の前にある。
少しでも力を緩めれば死ぬ。
押される、力では敵わない。
分かっていた、でもこの状況下では立ち向かうしかない。
その時カイトは強烈に「死」をイメージした。
そして生身の身体が本当にここにあり、現実世界で瀕死の状態であると錯覚した。
生命維持機能が停止される。
そのプログラムに手が掛けられている。
(死にたくない)
カイトの願いはそれだけだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!」
一心不乱に剣を押し込む。
剣に力を込めて必死に圧倒的な力に立ち向かう。
脳波が爆ぜた。
感情の起伏の最大値。
最大到達点に達した。
その瞬間カイトのステータスは向上し、力が湧き上がってくる。
上昇倍率は毎秒上昇していく。
【×2】
【×1.4】
【×1.6】
【×1.8】
【×3】
【×5】
カイト
LV.1
体力 50 【×2×1.4×1.6×1.8×3×5】 =6,048
素早さ 150 【×2×1.4×1.6×1.8×3×5】 =18,144
守備力 200 【×2×1.4×1.6×1.8×3×5】 =24,192
攻撃力 350 【×2×1.4×1.6×1.8×3×5】 =42,336
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!」
怪物を押し倒すことに成功。
そして怪物の胸に剣を突き刺す。
攻撃力4万越えでも倒れない。
カイトは何度も何度も突き刺す。
そして遂にカイトの剣が貫通した。
その瞬間、怪物は消滅し、カイトは経験値を得た。
同時にカイトも倒れ、一時的なバフ状態は解かれた。
女の子は奇妙な光がカイトの体の中に入っていくのを見た。
カイト
装備 ロングソード
LV.5
体力 8,000
素早さ 2,400
守備力 3,200
攻撃力 5,600
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