お兄ちゃんがお姉ちゃんになった日

東雲三日月

第1話 兄貴の彼女?

 まだ日も昇らない早朝に、俺は兄貴の部屋の扉を叩く。


 コンコン……。


「兄貴朝だぜ! まだ朝の5時半だけどさ、今日は、早く学校行くことになってたじゃんか! もう起きたか?」


 俺、一輝かずきと双子の兄貴の雪成ゆきなりは、同じ学校、同じクラスで、クラスの美優みゆうと一緒に遠足のしおり係になってしまった。


 ところが、学年遠足のしおりの作業がまだ残っているので、 昨日の放課後、面倒くさいけど、明日早く学校に行って終わらそうと、三人で話してあったのだ。


 昨夜は、疲れてたので二人して早く寝たはずだっが、声を掛けても返事が返って来なかった。


 コンコン……。


 部屋のドアをもう一度ノックするが、やはり兄貴からの返事は無い。


「兄貴、聞こえてる? まだ寝てるのかな? 俺部屋に入らせて貰うぜ!」


 ガチャ……。


 足を踏み入れた瞬間、目の前にあるベッドに目を向けると、仰向けの状態で寝ているのを発見した。


 兄貴だと思い、声をかけようと近づいたその時だった。


「あ、えっと、間違えましたーーっ」


 ……ガチャ……。


(ん? 誰だよ今のは! 女の子いたよな?)


 慌てて、兄貴の部屋から出てしまったのだが、仰向けになって寝ているのが、何故か女の子に見えたからだ。


(……やべぇ……どうなってんだよ?……)


 ベッドに近づいたけれど、良く確認せず、勝手に女性だと思い込み部屋を出てしまったのだが、双子の兄貴とは、学校の行き帰りも一緒だし、学校ではクラスも一緒だったから、彼女がいないことぐらい知っている、だから、ベッドで女の子が寝ている状況は有り得るはずがなかった。


 さっきのは何だったんだろうか、女の子がこの家にいるわけないんだから、俺の見間違いでしかないだろう、さっきのは兄貴だったに違いないのだが、どうしても確信を持てずにいる。


 もう一度、この目で、きちんと確かめなくてはいけない。


 コンコン……返事が無い。


「兄貴、部屋に入るよー! 失礼しまーす!」


 ガチャ……。


 静かに部屋に入り、ベッドまでさりげなく近づくと、俺は自分の目で状況を確認する為、誰が寝ているのかしっかり確認してみる。


 すると、なんて事だろうか、やっぱりうつ伏せで寝ているのは女の子である事がわかった。


 どうやら、俺の目は間違っていなかったらしい、女の子が、自分の目の前で、スヤスヤと心地良さそうに寝息を立てながら寝ている姿は、とても可愛いかった。


(うへぇ、何だよ、一体どーなってるんだよ……俺の兄貴は一体何処にいるんだ? )


 まだ、夢心地で、気持ち良さそうに寝ているであろう、女の子を、此方から声をかけて起こしてしまう事に、俺は少々罪悪感を感じながらも、恐る恐る声をかけてみる。


「えーっと、お、おはようございます。兄貴の彼女さんですか?」


 俺の声で目覚めた彼女は、上半身だけ起き上がり、眠い目を擦りながら、こっちを振り向くと、俺をじーっと見つめてから言い放った。


「はぁ……俺はお前の兄貴に決まってるだろが、弟よ、お前とうとうおかしくなったか!」


「いやいや……俺は全くおかしくなんかなっていない。おかしいのだとすれば、それは兄貴の方だよ! 良いから、早く鏡を見てみろよ!」


 兄貴は、眠い目を擦り、あくびをしながらベッドから出ると、フラフラと鏡の前に立った。


「……ぶはぁっ……どっひゃー!……なんじゃいなこりゃ! お、俺が女の子になってるぞ、しかも、男の憧れの胸もあるじゃねーか」


 兄貴は鏡に映る自分の様子に驚き目が覚めたらしい。ところが、その後は、ニヤニヤしながら、自分についているおっぱいを何度も揉んで感触を確かめなると、嬉しそうにしている。


「おい、兄貴、いきなり鏡の前で何やってんだよ! このド変態!」


「悪ぃ、悪ぃ……でも、此処に突然おっぱいがあったら揉むだろが……」


「まぁな、分からんでもないけどさ……」


 俺の顔は、女の子になってしまった兄貴の胸に目が釘付けになり、真っ赤っかだった。

 

「あ、お前、顔が真っ赤じゃねーか、さてはお前もおっぱいが揉みたいんだな? このド変態野郎!」


(ちっ、バレたか……それにしても、何で兄貴可愛くなっちまったんだよ! 可愛は正義なんだよ! 意外と胸まであるし……ちくしょう、惚れちまうじゃねーか!)


「ま、まぁな……そりゃさ、男の憧れのおっぱいだもん! 俺だって 揉んでみたいさ」


「仕方ねーな、今回に限り特別にお前にも、憧れのおっぱいを揉ましてやろう!」


「マジかよ! ラッキーじゃねーか! でも、アレだな……何か、兄貴だとわかってるけど、可愛い過ぎて緊張するな……俺、今まで女の子のおっぱいなんか揉んだこともないぜ……し、失礼しまーす!」


 両手を前に伸ばし、ダボダボのパジャマの上からおっぱいを掴むと、優しく揉んでみる。


「うひゃっ、あっ、あん!」


「すっげー! めちゃくちゃおっぱいってやわらけーんだな……」


「おい、コラッ! 声でちゃうから、もっと優しく揉んでくれよ!」


「えぇー、めちゃくちゃ優しく揉んだのに……おかしいな、これ以上どうすりゃいいんだよ! それにしてもごめんねぇ、おっぱいで感じちゃったのかな?」


「何かすげー感じた!」


「おっぱいって感じちゃうんだね。知らなかったよ!」


「うん、感じるみたいだねぇ……! さっき自分のおっぱいを揉んだ時は、全然感じたりしないから、大丈夫だと思っていたんだけど、他の人だと感じちゃうんだもんね! ?->やっぱりって不思議だよー<-?。」


 女の子と言って良いのだろうか、俺は兄貴のおっぱいを揉んだだけで、すげー幸せな気分に浸った。しかも感じた顔もめちゃくちゃ可愛かった。


(……やべぇ……やっぱ惚れちまうよ……)


 それにしても、何があって、兄貴が女の子になってしまったのかは知らないけれど、細マッチョだった、イケメンすぎる俺の双子の兄貴が、どっからどう見ても、兄貴だとは分からない程の変身ぶりで、髪はロングで長く、胸も程よくあり、身長も低くなっている。


 その辺を歩いていたら、誰しもが目を引かれるほどの、めちゃくちゃ可愛いアイドル級の女の子になっているではないか。しかも、兄貴は男口調で話しているが、声まで女の子になっていた。


俺はどうやら、アイドル級の可愛い女の子になった兄貴に惚れてしまったらしい。守ってあげられるのは俺しかいない! 勝手にそう決意すると、誰も近づかせないと、心の中で誓った。




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