教授が最期に想う事

葉月煉瓦

第1話 巨人族の提案

これは、Y教授が遺した紙切れを要約したものである。



**************************************

Y教授は、散歩道を歩く。

今の時代、ペットの散歩や運動以外で、人が歩いてるのは珍しい。

Y教授は言ってしまえば古い人間だ。

ワープ装置を使わないし、紙にメモする。

宇宙工学科の教授という肩書を持っているが、

必ずしも新しい物好きではない。



教授は、学長室のドアを3回ノックをした。

開けると、学長は不機嫌そうな顔になった。

『また歩いてきたのかね?』

「はい。」

学長はため息をついた。

学長の小言が並ぶはずだったが、このメモには書かれていない。


教授は、本題に入るよう促した。

学長は言った。

『太陽系以外の惑星を、お金にするそうだ。』

「どういうことです?」


『巨人族がいるだろう。』

「はい、宇宙の外には巨人という生命体がいます。」

学長はにこっと笑った。

『巨人族のお金を太陽系以外の惑星に置き換えるという事だ。

 巨人族の要望でね。』


やり方は、次の通りだ。

①惑星をワープさせ、宇宙の外にある巨人族の居住エリア、つまり、アウトサイドに移動させる。

②スキャンしてデータをとる。

③大きさや色から等級を決めてお金にする。


「何のためにそんな事を?」

『巨人族内での偽造通貨が絶えないそうだ。

 防止するための加工技術も限界に来てる。』


学長はポケットから電子煙草を取り出した。

『まあ、地球とアウトサイドの間に緩衝地帯がほしいってのもあるだろうがね。』

煙草を吸い終わるとこちらの様子を窺ってきた。


「地球側にメリットはあるんですか?」

『巨人族のお金を地球人が牛耳れるんだ、これ以上良い条件はなかなかないぞ。』


教授は嫌な予感、いや、確信に近いものがあった。

「では私の研究は?」

『太陽系以外で行われてるものは全て中止だ。』

「しかし・・」

『しかしなんだね、最近の宇宙の研究なんて成果は全くないじゃないか。

 巨人族もその事はご存じのようだ。』



教授は研究室に帰ってきた。

教授の目的は、この計画をぶち壊す事だった。



できる事は2つ・・

①この計画のデメリットを強調する事。

②お金よりも素晴らしい、惑星の新しい使い道を考え出す事。

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