宛名の無い手紙
T_K
第1話
「サトルが死んだ?」
その連絡をもらったのは昨日の夕方の事だった。
もう10年近く連絡を取っていなかった幼馴染のサトルが死んだと、
サトルの
小さい頃から、サトルのおばさんには何かと世話をしてもらっていた。
両親を10歳で亡くした俺の事を、不憫に思ってくれていたのだろう。
俺もサトルのおばさんの事を母親と同じ様に思っていた。
「サトシ君には、会いに来て欲しいと、あの子も思ってると思うのね」
その後も、おばさんは何か話していた様だが、
俺の耳には殆ど入ってきていなかった。
「行きます」
とだけ伝え、通話を切った。
朝、着慣れないスーツを羽織って新幹線でサトルの実家がある京都へと向かった。
俺は未だボンヤリとした意識の中、
ネクタイの結び方をネット動画で見ながら結んでいた。
人の死は突然訪れる。
そんな事は自分の両親の時に嫌と言う程思い知らされていた。
それでも、サトルが死んだ事実を受け止め切れていなかった。
この10年近く、一切連絡を取っていなかったにも関わらず、だ。
俺はネクタイを結び終えて、スマホの写真一覧を眺めていた。
一番古い日時の写真を引っ張り出す。
そこには、俺とサトルが笑顔で肩を組んで並んでいた。
サトルと俺は近所でも有名な仲良し二人組だった。
名前が似ている事もあり、友達の間では二人まとめて“サトサト”と呼ばれていた。
俺も、その呼ばれ方が好きだった。
サトルと俺はほぼ毎日、二人一緒に居た。
特に、俺の両親が亡くなってからは、一緒にいる時間が長かった気がする。
小学校の頃は、二人して良くサッカーをして遊んだ。
俺と違い、サトルは運動神経があるワケではなかったが、
絶妙な位置にパスを出すのが得意だった。
サトルがパスを出せば、ほぼ確実に得点が入る。
勿論、パスを出す先には俺がいる。
俺はただ目の前に来たボールを蹴るだけで良かった。
得点を決め、仲間に囲まれる俺を、サトルは満面の笑みで眺めていた。
俺は仲間に揉みくちゃにされた後、サトルの方へ向かう。
手を挙げると、サトルも手を挙げて二人でハイタッチする。
俺達に言葉はいらなかった。
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