「始まり、そして旅立ち」1 ~不穏な動き~ ミシェルのデート13
* * *
「奴等は、夕食を食べに行く模様です」
「そうか……もう暗くなってきた、奴等が夕食を食べる前に決行するぞ。いいな!」
「はい」
「〈あの方〉の認可はきちんと取れているな?」
「はい、大丈夫です。先程、〈電話〉で取っておきました」
「そうか……〈あの方〉の後ろ楯があれば、もしもの時も大丈夫だろう――いいか、人目に付かないように、速やかに実行するぞ――くれぐれも、仕損ずることのないようにな」
「はっ!」
* * *
「夕暮れのサントバーグの公園も、素敵ね」
ミシェルは辺りを見回すと満足そうにそう呟いた。二人はまだサントバーグの公園を歩いていた。
建物の間から溢れる夕日が、“トレビの噴水”の水飛沫に反射してキラキラと光り輝き煌めいていた。“トレビの噴水”は夕焼けをバックに橙色の光に染まり、カートンショップの店主達の中には店仕舞いをしている者がいて、サントバーグの公園は哀愁に満ちていたが、なんだか趣があった。
「こんな時間にサントバーグの公園に来る事はあまりないかもな。高等学校からはちょっと遠いから――今の時間が一番綺麗――かな」
ミシェルとニッシュは、二人で初デートを楽しんだ事に凄く満足していた。二人の時間を大切に過ごせた事は、宝物以上に素晴らしいと感じていた。
「ニッシュ――今日は本当に楽しかった。あなたから誘ってくれた初デートだけれど、私からお礼を言わせて。ありがとう、ニッシュ!」
「ミシェル、こちらこそありがとう!ミシェルに俺の夢をどうしても伝えたくて誘ったデートだけれど、なんか俺もすごく楽しかったよ。本当にありがとう!――でもいいのかい?まだ夕飯食べてないじゃないか?」
「ふふ、そうね。ありがとうは、夕飯を食べてからでいいわね」
二人はお互いの存在を意識して、でも意思の疎通ができている事が嬉しかった。
「ニッシュ、“トレビの噴水”でお祈りしてた事ってやっぱり」
「ああ、俺の夢『レイピア術でマスタークラスになりたい』っていうのと『レイピア術で世界修行に行けますように』っていう事だよ」
「ふふっ、応援してるわ」
ミシェルとニッシュがそんな会話をしてから、十歩ほど歩くかというところで……
四人組の男達が、微妙な距離を取って二人の後ろについてきた。
――しばらく歩いても、男達は二人から一定の距離を保って離れない。速足で歩けば男達も速足で、また歩みを緩めれば男達もそれに合わせて歩いてくる。
「――!?ニッシュ、これって」
「……つけられてる、かな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます