泥かぶりの娘

あるところに泥かぶりの娘がいました

見ろよ。泥かぶりの娘がいるぞ

あんた、泥かぶりの娘を見るのは初めてかい？

ならどうだい？泥をかぶせてはいかないか

なにあいつはそうして欲しそうに座っているじゃないか

それにあいつは泥が渇いちゃ生きていけねぇんだ

無一文ってわけじゃないさ、不思議な話だけどあいつが金に困る様子は一向にねぇんだ

じゃあなぜかって？

それがな、あいつは泥が渇いて固まると一緒に体の自由もなくなるってこった

だからあいつは泥をかぶるんだよ。それがあいつの生き方ってもんさ

どうだい？ここはひとつ人助けだと思ってその手に泥を掴んでいかねぇか

よぉし、そうとなりゃ泥を拾ってくるぜぇ。おぉ、そこのあんた！ちょいと泥を・・・

待ったかい？そこいらの泥はどうもみずっけが多くてね、いい泥探すのに手間取っちまった

ん？どうしたんだ？

あぁ、あんたも物好きだね。でもやめといたほうがいい、ここいらの奴らには顔が知れ渡ってるんだ

まぁ、あんたの気持ちもわからなくはない。たしかにいい顔してるからな、ちゃんとめかしたてりゃいいとこの娘としてどこに出したって恥ずかしくねぇだろうな

でもあいつは泥かぶりさ

その生き方してんのはあいつの選択さ

だから俺たちだってこうして泥をかぶせてやってんのさ

さぁさぁ、あんたも人の子ならかぶせてやんな

ほれっ！

どうだい、いいもんだろ？

おはっ、いいねぇ。いい投げかけっぷりだ

またやりたくなったらここに来ればいい

泥かぶりの娘はいつだってここにいるぞ

それじゃあな

ん？おいおいなんだありゃ

あの旦那、あたまから泥を被ってやがる

おれが話してる時にゃぁ、なかったはずだぞ

あの旦那も泥かぶりってのか？

いや、元。ってところか