富裕層大虐殺


 翌朝。

 豪華な食事にも飽きたので、軽くサンドイッチなどを口にしつつ、俺は考える。

 高級ホテルに居座るってのも悪くはないが、やっぱり自分の家がほしいな。どうせなら、これ以上ないくらいの豪邸に住みたいところだが、ボロアパートにしか住んだことのない俺には、豪邸のイメージが漠然としか分からない。

 もちろん、神の力を使えば一瞬で理想の家を建てることもできるだろうが、それでは面白くない。


 というわけで、今日は世界一の大金持ちと言われるビリー・カインズ氏のお宅に突撃訪問することにした。


 高い塀に囲まれた敷地内に、

 森があって、

 川があって、

 ゴルフ場があって

 テニスコートがあって、

 図書館があって、

 家族10人に対し使用人が600人。


 …もういいだろ。

 これ以上説明しなくても、ここの主がイカれてることくらい分かるだろ。


 ちょうどカインズ氏を見かけたので、俺は尋ねてみた。


「なあ、あんたこんなに金持ってるんだったら、なんで貧しい人に寄付しないんだ? あんたらの一族だけでこんなに持ってたって意味ないだろ?」


「寄付ならしている」


 カインズ氏が不機嫌そうに答えたので、イラッときた。


「全然足りねえよ! あんた1000億ドル以上の資産を持ってんだろ? 仮にそのうちの99%寄付したって、まだ余裕で大金持ちじゃねえか。あんた一人で何人救えると思ってるんだよ? 救える命をなんで救わねえんだよ?」


 俺の熱弁に対し、カインズ氏は呆れたような表情で返してきた。


「そんなことをすれば人口が増え過ぎて、かえって悲惨なことになる」


 ああ、なるほど、なるほど。

 そういうことかい。

 確かに一理あるな。

 人口が増え過ぎるのは良くないもんな。

 

 そういうことなら、俺も間引きの手伝いをさせてもらおうかな。

 ただし、いつもいつも貧民からじゃ不公平だから、今回は上からな。


 データによると、上位1%の富裕層が世界の半分以上の資産を保有しているらしい。

 さらには、上位数十人が下位30億人と同等の資産を持っているのだとか。


 完全にイカれてやがる…。

 明らかに害悪だろ、こいつら。


 もう殺っちゃっていいよな?

 いいよな?

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