第6話 帰宅

私達は病院の人に挨拶してから、そこを立ち去った。

そして、人に見られない場所から飛び立つ。

と言っても、私は再びお姫様抱っこされていて、自分で飛んでいないんだけど。

けど、今度は仕方がない。

本来は薬師なのに、ヒーリングのし過ぎでヘロヘロだ。

でも、心地の良い疲れだ。

たくさんの人を治療することができた。

薬師冥利に尽きる。

私達はまず、近くに人がいない町はずれの草原に向かい、圧縮した空気を捨てた。

そして学校に帰る。

学校はすぐに見えてきた。

明日もこの学校は私にとって居心地の良い場所ではないだろう。

でも、校舎の中がダメなら、自分の居場所は他の場所で探せばいい。

私の薬草園や、あの古い病院で、これからもできることを精一杯頑張ろう。

そんな前向きな気分になってきた。

こんな気分になれたのは私を今お姫様抱っこで運んでくれているヴァンのおかげ―

…なんだか、今更になって恥ずかしくなってきた。

そういえば、こんなに男の子と体を密着させたのは生まれて初めて。

細身だけど、やっぱり男の子だから体は固い。

おまけに端正で綺麗な顔がすぐそばにある。

何より私のことを気遣って今日のボランティアに誘ってくれたし、そもそもボランティアをしているという時点で優しい。

ただ単純に気ままな性格のイメージだったけど、改めないと。

私の寮室の窓辺に到着した。

私はふわりと自室の床に降ろされる。

そしてヴァンは窓辺に腰かけた。

「リーラちゃん、今日は手伝ってくれてありがとう」

ニコニコと子供っぽい笑顔で言う。

本当に容姿と中身にギャップがある人だ。

「ううん、私もためになる体験だった。ねえ、また薬を作って持って行ってもいい?」

「もちろん、大歓迎だよ―じゃあ、もう遅いし、僕そろそろ帰るね」

「ええ」

今日はもうお別れの時間か。

楽しい夢から覚めるような気分だ。

「今日はありが―」

改めて姿勢を正して礼をしようとしたら、疲れのせいでクラリと立ち眩みがした。

「おっと」

ふらついた私をヴァンが片手で支える。

手も私よりずっと大きい。

「魔力の使い過ぎで疲れちゃったんだね、ゴメン…」

「ううん、全然!一晩ぐっすり寝れば治るよ!」

シュンと肩を落としたヴァンに慌てて明るく応える。

「…」

「…え?」

私が何か考える間も無く、ヴァンの顔が私の顔に近付き、彼の唇が私のおでこに触れた。

「!!??」

頭が一気にオーバーヒートした。

何?何!?今の、どういうつもり!?

「僕の魔力を少し分けたんだけど…体調どう?」

あ、あぁ、そういうのか…なんだ。

少しクールダウンできた。

「あ、ありがと、少し、マシになった、気がする」

「なら良かった。じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい…」

彼はヒラヒラと手を振って去っていった。

今日はもう寝るまで夢心地だ…。

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