第19話 プロポーズ

「デニス、私はさきほども伝えたが、改めて言おう。

私は君を愛している。」


う、嬉しい。

まるで夢みたいだ。


「私は君が傍に居てくれないと、死んでしまいそうになる。

デニスがいない間は、とても辛くて、まるで地獄のようだった。

どうか、この私を救ってもらえないだろうか。」


「僕に出来る事なら、何でもします。

どうしたらいいのですか?」


「言っただろう?

君がいないと死んでしまうと。

私はまだ死にたくない。

だからデニスは私の傍にずっといてほしい。」


…………。

どう答えればいいのだろう?


「デニス、私を救ってくれないのかい?」


「いえ、ライアスさんには、永遠に生きていてもらいたいです。

でも、何て答えたらいいのか分からなくて。」


「はいと……。」


「はい?」


「永遠に私の傍に居ると、そう言ってくれないか?」


言えばライアスさんは救われるのだろうか。

でも、こんな夢の中でそれに答えるのに何の意味が有る?。

例え了承しても、それは現実ではない。

ただ空しいだけだ。

でも、例え夢の中だとしても、それでライアスさんが救われるなら、

の答えは、多分一つだ。


「僕がライアスさんの傍に居れば、ライアスさんは救われるの?」


「あぁ。」


「幸せになれる?」


「あぁ。」


「僕が好き?」


「愛している。」


僕はライアスさんに幸せになってほしい。

僕はライアスさんを愛している。

ライアスさんだって、僕の事を愛していると言ってくれた。

それなら何を躊躇う必要が有るのだろう。


「………はい。」


「デニス、嘘は無しだよ。

君が無理をして私の傍に来てくれても、私は嬉しくない。

君の心が、全てが欲しいのだから。」


「嘘じゃ有りません。

僕はライアスさんが好きだから、

いつだってライアスさんに幸せでいてほしいんです。

僕だって、ライアスさんと一緒に居たい。

ライアスさんは僕の物だ。

いつまでもこうしていたい。

ここは僕の席だ。」


ライアスさんの膝の上。

暖かくて安心できる場所。

僕の宇宙。

誰にも渡したくない。


「それは、プロポーズの返事として受け取ってもいいだろうか。」


「プ、プロポーズ!?」


「そうだデニス。

私は君を愛している。

命を掛けて君を守る。

生涯君を愛し、幸せにすると約束する。

だから君も、私を幸せにしてくれないだろうか。」


「えっ、ええ‼

幸せにするって、どうすればいいの!

プロポーズ!?

そんな!

ライアスさん、なに血迷っているの。

例え夢だとしても、

僕、そんな事まで望むほど、向こう見ずじゃない……はず……。」


「ふふっ、落ち着けデニス。

私を幸せにするなど簡単な事だ。

デニスが私と結婚してくれるだけでいい。」


何を言っているんだ。

無茶苦茶だ。

能天気にもほどがある。

ライアスさんが幸せになる方法が、僕と結婚する事だって!?

そんな馬鹿な事が有るか。

例え夢だとしても、そんな大それたこと、

考えること自体が滸がましい。

僕が夢でこんな事を望む筈が無い。

これは本当に夢なのか?

違うだろう!?


「だめ、け、結婚なんて…出来無いよ。

ライアスさんが望むなら、僕はいつまでも一緒にいる。

でも、それと結婚は違う。

僕にはそんな資格はない。」


「またそれか。

堂々巡りだな……。」


ライアスさんの顔から笑顔が消えた。

心が痛んでいるのが分かる。


「ライアスさん……。」


「デニス…。

デニスは私を好きだと言ってくれた。

愛しているとも。

それなのに、なぜ結婚を拒むんだ。

私に何か足りない物が有るのだろうか。」


僕はぶんぶんと勢いが付いたように首を振る。


ライアスさんの気持ちに嘘はないのだろう。

でも僕なんかじゃダメなんだ。

僕よりも、もっと相応しい人がきっといつか現れる。

その時は僕はライアスさんの邪魔になるし、

それを目の当たりにするのは、きっととても辛い……。


「デニス、君の考えている事は、

おおよそ想像はつく。

だがな、それはお前の取り越し苦労だ。

私は君しかいらない。

生涯の伴侶は君しかいない。

これは予言だ、国に、自分の命に誓ってもいい。」


もうライアスさんの言葉が理解できない。

この人は一体何を言っているのだろう。

自分の命に誓う?

だめだよ、それは予言じゃない、呪いだ。

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