第5話 優衣の親友
食器を洗い終わったあと、リビングのソファで話を聞くことにした。ちなみに食器はいつも2人で洗うことにしている。
「それで、頼み事なんだけどさ」
「なんなりとお嬢様。」
「もう。ふざけないで」
「すまん、続けて」
そう言うと、彼女は1度深呼吸しこう言った。
「親友の
色瀬は俺と優衣のクラスメイトだ。ロングヘアーで立ち振る舞いから何から大和撫子を体現したような女性だ。勉強も優衣に続いて学年3位らしい。優衣に負けず劣らず学校内での人気は高い。
そんな彼女は優衣の親友ということもあり、クラスメイトの名前をあまり覚えていない俺でも一瞬で顔と名前が一致した。
「彼女の秘密?」
「うん。彼女ね、毎週木曜日様子がおかしいの。」
「様子がおかしい?」
「他の人は気づいてないっぽいんだけどね。」
もちろん。俺も気づいていなかった。
「なるほど。具体的には?」
「まず、木曜日は先生に当たっても答えられない事が多いの。」
「確かに。言われてみればそうだな。」
基本的に色瀬は先生に当てられても涼しい顔をして答える。だが、確かに先週の木曜日は2回当たってどちらも答えられていなかった。その事が、俺の記憶にも残っていた。
「でも、そんなこともあるんじゃないか?」
優衣だって、たまに当てられても答えられない時がある。その場合、みんな解けないのだが。
「それだけじゃないの!水曜日に話したことの大まかなことは覚えているんだけどね。所々話した事を忘れてるみたいなの。」
「それは変だな。」
昨日、話した事は忘れっぽい俺でも流石に覚えている。.......多分。
「だが、なんでそんなこと知りたいんだ?好奇心か?」
「違うよ。もし、空が何か困ってるなら力になりたいじゃん!だから彼女の秘密が分かって、私が力になれそうだったら教えて!そうじゃなかったら蓮が墓場まで持っていって。天国で聞くからさ。」
まぁそんなことだと思った。
「.......分かったよ。俺が何も分かんなかったら、その時は諦めてくれよ。」
「はーい!」
彼女は勢いよく手をあげた。
でも、もしかしたらこの問題、すごく簡単じゃないのか?ある仮説を思いついた俺は優衣に尋ねた。
「色瀬の家族構成分かるか?」
「分かんない。彼女家族の話はあまりしたがらないんだよね。」
俺の仮説が確信に迫る。
「もしかしたら、彼女、双子なんじゃないか?それで木曜日に入れ替わっている。理由は分からんが。」
「それは私も思って、彼女に質問してみたの。私、彼女が嘘をつく時の癖が分かるから。」
流石親友。
「それで結果は?」
「嘘ついてる様子はなかった。」
「.......それは不思議だな。」
これは思ったより面倒くさそうな事になったな....。
「まぁ明日はその木曜日だ。俺も注意して彼女を見てみる。それでいいか?」
「ありがと!蓮!好き!」
不意打ちを食らった。
「.......付き合ってるんだからそうじゃないと困
る。」
下を向いたまま顔を上げることができない。だけど、この顔を見られるわけにはいかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます