指を掻く女

Kohr.435円

第1掻き 指と高校生

ある5月の夏。夏というよりまだ暖かくなってきた時期、いわゆる初夏ということだろう。

この夏の始まり、高校生活2年目にある女性と出会った。彼女もこの高校の学生で同じ学年なのだが、いままで見たことなかった。彌大郎の頭の記憶には一切なかった。でも、なぜかどこかで見たことがあるようなないこともないこともない。

しかも、今年から同じクラスだ。去年はAクラスだったらしい。彌太郎はCクラスで隣のクラスだった。この学校は4クラスある。A、C、E、G組の4クラス。そして、夜間の学校ではあるが3年間で卒業できる夜間高校だ。普通、夜間の高校と聴いたら4年制と考えるだろう。この高校は3年制だ。しかもなぜ、B、D、Fを抜かしたのかはわからないがとてつもなく変わった高校だ。それ故、先生たちも変わった人は多い。この高校があるのは埼玉県の南浦和という所。駅から20分歩いたところにある。


彌大郎はその女性とは偶然だった。あることが気になって思いきって彌大郎はその女性に話しかけたことによってこの高校生活はガラリと変わる。

それもいままでとは本当に180度変わる。去年までのあまり友達もおらず、勉強はそこそこできるアニメやゲームが好き、オタク。クラスにはあまり溶け込まない性格。一人が好き。そんな彌太郎は今年もこのCクラスになりその女性と出会った。去年は隣のクラスだったのに会ったことも話したこともない。見かけたこともない。聴いたこともない...美女。そう、その女性はアイドルか?と思わせるほどに美女だ。身長はおそらく150センチぐらい。顔は小さい、シャープな細い腕や足、体つき。そして、普段は静かなほうで髪は長く、目は比較的大きく童顔。その女性は「胡桃」のいう名だ。素晴らしくかわいい女の子だ。「胡桃くるみ」という名前はその女の子に合っている。

でも、まさかそんな子とあんなことやこんなことになるとは今は思ってなかった。


5月20日 水曜日 夕方15時12分 


南浦和紺桔梗高等学校みなみうらわこんききょうこうとうがっこうにて。


ある日の事、彌太郎は学校の下駄箱で靴を上履きに変えていた。この学校は青色のスリッパのような上履きだ。


彌太郎が上履きに履き替え、2-Cのクラスに向かう途中、ある人物に話しかけられた。



莞多かんた    おーい!やたろう!おはよう!!


彌太郎やたろう   ん?かんた?おはよう


莞多かんた    おお!今日も暗いなー!どうした?


彌太郎やたろう   なにもないけど?



この男は、三品みしな 莞多かんただ。彌太郎とは中学からの友達だ。とても元気なやつ。勉強は出来ない。が、スポーツは出来る。



莞多かんた    そうか!早く行こうぜ!あと30分でホームルーム始まるぞ!



そう言うと、2人はCクラスの教室に向かう。



この高校は15時30分からホームルームがあり、16時から授業がある。



担任の先生は石野先生だ。



石野いしの先生  よーし、始めるぞー



次々と生徒の名前が呼ばれ、あっという間にホームルームが終わった。



莞多かんた    やたろう!今日の帰り付き合ってくれよ!



彌太郎やたろう   え?また?本当に好きだね



莞多かんた    いいじゃあねえか!趣味がそれしかないんだ!



などと話してる近くにあの見に覚えのない女の子、胡桃さんが友達と何やら話していた。彌太郎はそんな笑って話している胡桃を見て、内心どこかで会ったことあるよな?ないような?そんな感覚だった。そのせいで莞多の話もあまり途中から聴いてなかった。

でも。もし去年から隣のクラスにいたのなら少しは覚えているのに。例えば、去年の体育祭とか文化祭とか合同授業とか。それに同じ学年だ。なのに、名前を聴いても、顔も思い出せない。けど、どこかなにか忘れているような?そんなことを彌太郎は難しい顔をして胡桃くるみをチラ見していた。



莞多かんた   なあ!やたろう!?聴いてんのか!?



彌太郎やたろう  え?あ、ごめん、あんまり聴いてなかった



莞多かんた   どうしたんだよ?今日...というか今年、2年生になってからなんか浮かない顔ばかりしてるじゃないか?



彌太郎やたろう  いや!そんなことないよ!本当に!



莞多かんた   そうか?...でな!これがさ!



莞多は少し心配していたが、また先ほどの話に戻した。



その時、彌太郎やたろうもまたその胡桃くるみをチラ見してしまっていた。



すると、胡桃さんは突然、中指が痒いのか軽く掻き始めた。

それも10秒、20秒の話ではなく、もう5分近く長い時間、ずーと中指を掻いていた。

彌太郎はどうしても我慢が出来ず気になって、思わずツッコミを入れてしまった。



彌太郎はその姿を見て何かを思い出し、思いだすと同時に突然、声を荒げて大声でツッコミを入れた。



彌太郎やたろう   あ~!!!思い出した!!そうか...ていうか!新川さん!どんだけ掻いてんすか!?もう10分以上も中指掻いてますよ!?どうなってんですか!?痛くないですか!?赤くなってますよ!!



その瞬間、クラスにいた生徒たちは会話や今やっていることを中止して急に声を上げた彌太郎のほうに注目した。



彌太郎は思わず声をだしたが、みんなに見られていた。この時が地獄みたいだった。もう燃え尽きて灰になって消え去りたい。なんて、彌太郎は思っていた。



これにはあの胡桃さんも彌太郎の顔を暫く見ていた。



彌太郎は恥ずかくなった。



これに対して胡桃さんはどう思ったのだろうか。

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