第?章【????・!?最後は!】

第??話【!?g!?n!?i!?y!?l!?p!?e!?e!?K!?】

【????年??月??日(??時??分??秒)】


 地下施設――入出するのに必要な物、施設のマイクチップ入りのIDカード・32桁のパスワード・指紋認証・眼球認証・AIによる顔認証・警備員による荷物検査……などなど


 そんな、現状では『万全といえるか分からない研究施設』で、5名の人間は現在の状況をひっくり返すための最後の賭けとも呼べる話し合いが行われていた。年齢は30代前半から後半、大人の魅力を感じさせる。


「納得が出来ないな、リアさん……何でシンヤにコルトガバメントを預ける? あなたが持つべきだと思いますが?」


 複数台並べられた最新型のパソコンに様々な種類の薬品がそれぞれ並んでおり、机や戸棚には大量の資料がまとめられている。


無理ゲー攻略者の一人――【道徳カイト】は納得していない。


 深い青色の髪、細い眼鏡で生まれつきの鋭い目を隠しているが、あまり効果を発揮しているとは思えない。どこか知的な雰囲気が出ており、政治家みたいな頭の固いイメージを勝手に抱いてしまう。


 天能リアはため息と一緒に、カイトの愚かすぎる選択に笑みが漏れた。


「私がその武器を持つことは無いよ」


「なら自分が、その役目を行いますが?」


「それもないね。これに関してはシンヤに任せる……君が好きなようにするといい」


 リアから渡されたコルトガバメントを片手に、不快な表情を浮かべる。やりたくない事を無理やりやらされている気分だ……他の選択肢は無かったのか? と聞いてしまいたくなる。


「本当に俺が持っていていいのか?」


「あぁ、構わない――シンヤの要望を叶えるには、この武器が一番だろう?」


「やはり納得出来ないですね!! 何でシンヤ何です? こいつが一番の古株だからですか!? 天能リアともあろうお人が、私情で動くのはどうかと思いますが?」


 リアは近くに置いてある研究中の武器【雷切】という日本刀を片手に、カイトの首元へ刀身を向ける。ゴシック服の上に白衣・金髪ツインテール・『左足の義足』・右手に握られた日本刀・ロリ体型――内心どこまでキャラ付けをすれば気が済むんだと普段通りに突っ込んでやりたいが、今はそんな状況ではない。


 刀身はバチバチと目に見えるレベルで、電気が不規則に流れている。


「これは私情では無いよ。本音を言ってしまえば君の何十倍もシンヤの事が好きなのは認めていいが、これに関しては私情抜きで確定事項だ――今はそんな余裕は無いからね」


 獣のように鋭い視線がカイトに突き刺さるが、カイトに動揺や恐怖は感じられない。周りにいる【熱意リョウ】も【森根サチ】も、その程度で声を上げる事はしなかった。シンヤだけが好きと言われたことに対して、物凄い動揺していることは言わなくても分かると思うが。


「では、せめて理由を聞かせてください。こいつは最も死ぬ可能性が高い……こいつに【天使の羽】を預けるのはどうかしています。我々の生命線ですよ? 武器に【ミヌティックドッグ分解細胞】を埋め込んだが為に、武器としての性能も低い……BB弾の弾に偽装したおかげで、何とかいろいろな状況に対応出来るようにはなっていますが……あの化け物達と戦うには余りにも心許無い」


「理由は2つある。1つは最も死ぬ可能性が高いから渡す――それに適合率がいいからね。もう1つは、シンヤがこの武器を使うべきだと思ったからさ……私たちにはもう無い物を持っているからね」


「何ですかそれは?」


「シンヤは――『人を殺したくない』そうだ。この武器は生者を傷つけない、シンヤにピッタリだろう?」


 リアの一言にカイトは目を見開き、睨みつけるようにシンヤの胸倉を掴む。シンヤは胸倉を掴まれたまま、空中に持ち上げられた。片手でシンヤを持ち上げる程の力、人を一人持ち上げたにも関わらず、腕に震えが全くない――人間を軽く超えている。


 どんなアスリート選手でも片手で人を持ち上げれば多少の震えが腕にかかる。一般人であれば、腕を伸ばして2リットルの水入りペットボトルを持ち上げただけでも多少の震えが腕を襲う。


「っ!?――だから俺は、信条シンヤが嫌いだ……甘ったれた嘘つきの偽善者が」


 カイトは鬼のような形相と視線でシンヤを睨みつけ、シンヤは殺人犯に似た殺気を込めた視線をカイトに送る、その場の空気が一気に重さを増した。


「カイト……俺はやっぱり人は殺したくない。それは過去の俺だって同じはずだ……」


「こんなイカれた世界で人を殺したくないだ? ふざけるなよ!! お前がどこでどうやって野垂れ死にしようが構わない……だがその偽善を俺にまで強要するな!」


「俺は今回のリアの案も本音で言えば、反対だ。だが、俺には他の方法何て思いつかない……天才じゃないからな。リアにしか見えない光景があるんだろうから、俺はこの作戦に参加してるんだ」


「っち……、やっぱりシンヤ――、お前は……」


『リアさんの事が好きなんだな』


 シンヤにしか聞き取れない小声が耳に入り、苦い顔をする。それに関してだけで言えば、俺はカイトにいくらでも謝罪の言葉を述べることが出来る。


 本当に悪いと思っている。


 それがきっかけで、カイトがアイリス・時雨先輩といろいろな関係になっている事も、森根サチから聞いている。


 無理ゲーをクリアした時からそうだ……信条シンヤは、道徳カイトに偽りの言葉しか口にしていない。


 そして俺達はこれからカイトに黙って、過去で『アイリス・時雨を殺す』のだから、俺は更にカイトに嘘を重ねることになる。


『道徳カイト――お前になら、俺は殺されても仕方ないと思えるよ』

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