無理ゲークリアしたらゾンビ世界になってしまったのですが*
夢乃
第1章 【無理ゲークリア編】
【プロローグ】
無理ゲーをクリアしたら『ゾンビ世界』になってしまった。
そんな夢物語にも、そうなるためのきっかけというものが存在する。
■□■□
【4月5日(月曜日)】
真っ暗な部屋で一人、コントローラー&ヘッドホンをデスクトップに接続し、ディスプレイ画面を見続けていた。
夜中の1時過ぎ、クーラーで冷え切った部屋の温度に不満は無い。起動しているデスクトップのスペックには最高のこだわりを持っている。
画面の隣に置いてあるキンキンに冷えたコーラを喉に流し込み、机の下には大量の資料が散らばっていた。
「そろそろ……狩りますか」
ディスプレイ画面には、可愛らしいブレザー制服を着た女性キャラクター。その両手には、ハンドガンが握られている。
そして狙う的は――【ゾンビ】
これはパンデミックになったゾンビ世界を生き残る『オンラインサバイバルゲーム』だ。
自由度の高さとキャラクターの可愛さ、そしてモンスターのリアルなグロさ。あまりにも噛み合わないキャラクターデザイン性に一時期、小さな話題となった作品。
無料ダウンロードが出来るため、暇つぶし感覚で始めた者も多かったはずだ。
そして公式サイトも、都市伝説として話題を集めた。
『謎過ぎる世界最高のクソゲー』として。
真っ白な公式サイトの真ん中には、スクリーントーンで表現された球体マークが張り出されており、その下には新聞紙で切り取った、怪盗の予告状見たいな文字で『ダウンロード』と書かれている。
そして、いくらネットで検索をかけてもこのゲームの攻略サイトが表示されることは無い。
このゲームは――【3年間】誰にもクリアされていないのだから。
その大きな理由として挙げられるのが『アカウント削除システム』――このゲームはキャラクターの死後、そのままアカウントが削除される。
もう一度同じメールアドレスを使って作り直すことは可能なのだが、その手間がクリアを妨げる要因にもなっていた。
そして最大の理由として挙げられるのが、難易度の高さだ。
ゾンビ1体を初期装備で倒すのに1時間ほどかかる。
初期のハンドガンには∞マークが記載されており永遠に打ち続けることが出来るが、スライムレベルのゾンビ1体を倒すのに1時間だ……それに合わせてアカウント削除システム……、プレイヤーが徐々に減っていくのは目に見えていた。
せめてレベルアップ機能ぐらい付けてほしい。そうすればクリアの期待も出来ると言うもの。
しかし残念ながら完全実力ゲームなのが腹立たしい。
このゲームで語りたいことはまだまだ存在する。
レベルアップ機能は無いが、このゲームには【レアドロップ】が存在する。
初期装備以外の武器には、基本的に弾数が記載されているが、レアドロップ装備には∞マークが付いている。つまり永遠に打ち続けられる究極の武器ってことだ。
そしてこのゲーム――クリアすると賞金が出る。
その額【1000万】――大きなゲーム大会で見ると少ない額に聞こえるが、オンラインゲームでここまでの賞金は珍しい。
――だが
「――助けてよ、シンヤ君……」
【皆音カオリ】の弱々しい声を聞きながら、目の前にいる化け物からどうやって逃げるか……俺、【信条シンヤ】は必死に考えていた。
普通、ゲームをクリアしただけで世界は滅ばないだろ? なぁ、そう思うだろ? マジで……
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