第2話 奇跡だよ。
そんな伝説を妄想の中で具体的な像を描きながら思い描いていると森の樹々の
隙間から青い海原が垣間見える南側の森の入り口に白いハットを被った少女が
立っていたんだ。
「小鳥とお話し出来るんですね」
少し離れた向こうから少女は話しかけて来た。
女子とまともな会話なんてした事がない僕は内心焦りながら
「たくさん友達が出来たみたいだよ」
と自分でもびっくりするくらいに普通に応えた。
少女は微笑みながらどんどん僕の方に歩いてくる。
少女の後ろは青い海原が樹々の間から木洩れてきらきらと輝く。
少女が横まで来ちゃった!
こんな近くで女子と2人きりなんて奇跡だ。
少女はキョロキョロと僕の格好を見ている。
三角虫籠を腰に付けて採取用の虫網を片手にしている。
まるで夏の少年…。
大学生にもなって恥ずかしい。
「ね、夏の少年見たいですね」
ギョ心が読まれたか。
なんと返す何と…。
「東京の大学の昆虫倶楽部の合宿で来たんだ」
と照れ隠しに都会ぽさを挟んで返事した。
浅はか都会風吹かせる必要ないのに〜。
嫌われるかな…。
「虫さんですか」
「面白そうですね」
と笑顔を見せ、そう言いながら少女は僕が腰を当てて寄りかかっている自転車
侵入防止の鉄のポールの空いたスペースに同じく寄りかかって横に並ぶ。
そんな夢でも妄想し得ないこの状況。
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