「実は私もなんです」くすっと笑って騎士様は言った。(その表情は、本当に年相応の、まだ汚れを知らない美しい少女の無邪気な笑顔だった。あの、家の壁に立てかけてある二匹の影の獣を追い払った巨大な十字架のような剣を振るう騎士様と同じ人物だとは思えないくらいに、その表情は自然で、柔らかいものだった)


「騎士様もですか?」ランは言う。

「はい。私もです。でも、ほかの人には絶対に秘密ですよ。そのせいでこれからの私の戦いが不利になることもあるかもしれません」冗談っぽい口調でリリィはいう。


「わかりました。絶対にほかの人には喋りません」にっこりと笑って、ランは言う。


「二人だけの秘密ですね」またくすっと笑ってリリィは言った。


 それから激しい雨の降る嵐の中、永遠とかみなりが鳴り響く夜の中で、二人はしばらく、なにもせずに体を休める休息の時間を過ごした。


 ……そして、やがて、とても深い夜の時間が霧の森にやってきた。


 二人は嵐の中で眠りにつくことにした。(幸いなことに、影の獣たちも、この激しい嵐の中で活動を一時的にやめているようだった)でも、ランの家にはベットは一つしかなかった。

 ランの家族はみんなで寄り添うようにして、その少し大きめに作ってある手作りのベットの中で、いつも家族みんなで一緒に寄り添うようにして眠りについたのだった。

 ランはベットが一つしかないことを騎士様に告げると「ベットは騎士様が使ってください。僕はそのあたりの床の上で眠りにつきますから」と笑顔でリリィにそういった。


「そう言うわけにはいきません。でも、ベットは一つしかない。……うーん。よし。ではこうしましょう!」と楽しそうな顔をして、両手のひらを胸の前で合わせると、リリィはランを見ていう。


「じゃあ、今日は私とランで、一つのベットで一緒に寝ませんか? ベットは一つしかないのですから、それが一番良い方法だと思います」と、くすっと笑って騎士様は言った。


「そんな、いけません。僕なんかが騎士様と一緒のベットの中で眠るなんて、……えっと、僕はやっぱりそこの床の上で十分です」と顔を真っ赤にして、両手をぶんぶんと大きく振ってから、じめじめと湿った木の床の上を指差して、ランは言った。


「遠慮しなくてもいいですよ。泊めてもらっているのは私のほうなのですし、なによりも私たちは『女性同士』じゃないですか。一緒のベットで眠っても、それほど問題があるとも思えません」と騎士様は言う。(なんだか騎士様はだんだんとてもこの状況を楽しんでいるようにすら、ランには思えるようになった。それくらいなぜか騎士様はとても楽しそうな顔をしていた)

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