028.再会
今では三姫の中の一人とされる幼馴染。
確かに三年前と比べるとかなり大人びた印象だった。
十六といえば成長して変わりやすい年頃だから当然と言えば当然であるが、それに加えて故郷の街を放棄するほどの凄惨な経験もあったのだろう。
美しいのだが、どこか険しいような顔つきとも言える。
冷酷無比。
昨日カスミから聴いたことが頭をよぎる。
こちらからは三人が目立って見えるが、向こうからすればこちらは六百人。ミハルはまだこちらない気づいていないようだった。
「ちょっと!聞こえてる?」
カスミに肩を叩かれ、ふと我に返った。
「その様子じゃ、全く話を聞いてなかったわね。……まぁ気持ちは分からなくないけど」
「あ、あぁ…悪い。二次試験はなんだって?」
「隊をつくって、魔物の討伐ですって」
「隊?魔物の討伐?」
カスミからの話をまとめるとこういうことらしい。
二次試験は明朝からガリオン近郊のとある山に向かい魔物を掃討する。受験者は三グループに分かれ、それぞれのグループの隊長である三姫の指示に従って行動する。ガライ、クレア、エンコの三人は監督兼採点として別行動する。
「三分割となると隊長一人あたり二百人か。中隊レベルだな」
「そうね。未熟者の受験者を数で補うってとこかしら」
「ああ。かえって厄介事が増える可能性も高いが…、最悪の場合はクレア隊長たちがフォローするだろう」
それにおそらくだが、これは三姫の経験を積ませる意味もあるのだろう。学校を代表する三人だ。後々、人の上に立つ役割を担う可能性は十分にある。
「振り分けはどうやって?」
「クレア隊長達が指示していくらしいわ。一次試験の結果で判断するんじゃないかしら?」
闘った数百人を全て覚えているのか? まあ、目立った合格者以外は適当という可能性もあるか。
そんな会話をしていると、最前列の合格者から順に振り分けが始まった。
最初に振り分けられた男は、リリアの方に進むと二言三言会話し、そのまま正門の方へと進んでいった。
「ん?そのまま帰るのか?」
「今日は隊長に挨拶したら解散。明朝にまた集合よ。本当に全く聴いてなかったのね」
カスミが呆れたように教えてくれる。
「助かる。持つべきものはカスミだな」
「あと、万全は期すけれど命の保証はできないから辞退するなら申し出てくれってことだけど…、ソウには関係ないわね」
「ああ。それに士官学校に入学すれば、遅かれ早かれ似たような実習があるんだろ」
そう会話しているうちにも、振り分けが進んでいくが辞退を申し出る受験者は出てこない。皆それなりの覚悟で来ているのだろう。
「しかし、一次試験の結果か。ってことはカスミと違う隊か?」
「その可能性は高いわね」
「…だよなぁ」
自分で言うのもなんだが、自分たちより目立った合格者はいなかったように思う。とすれば、隊のレベルの均等性から言って自分とカスミが同じ隊に振り分けられることはないだろう。
カスミがいれば楽なんだけどなぁ。
そんなことを考えながら順番を待った。
三十分ほど経っただろうか。
ほぼ最後尾にいたものだから振り分けも最後になってしまったが、ようやく、クレア隊長たちが見えてきた。
「お前か」
声をあげたのはガライだった。
「ども」
カスミは軽く応答する。軍人であれば上下関係に厳しそうだが、ガライは気にした様子なく続ける。
「お前はミハルの隊に入れ」
「はーい。ミハルね」
カスミがミハルの隊か…。とすると俺はリリアかフェリィだろうか。
残念なような、ホッとしたような複雑な感情が渦巻く。
だってそうだろう。正直、どんな顔してミハルに会えば良いのかわからない。
「アンタはフェリィの隊ね」
顔を向けるとエンコが笑って指差してきた。
返事の代わりに頷くと三姫の方に向かう。
「あっ……えっ……?」
フェリィのところにたどり着く途中、カスミと挨拶を終えたミハルと目が合った。
「……ハル」
「……ソウ………ちゃん?」
互いに複雑な感情を抱えた二人が再会を果たしたのだった。
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