2月22日にネコをひろう

神帰 十一

第1話 2月22日に灰ネコをひろう

 2月22日にネコを拾った。

 いや、託された。と言うべきなのだろうか。

 2月22日、その日、私はあるイベント会場に行っていた。


 会場は横浜にあるイベントホールであり、関東の海が無い未開の地に住む私には少し遠く、ちょっとそこまで、そんな気軽な気持ちで行ける場所では無かった。

 

 イベント自体に興味は無い。ミュージカルである。

 恋愛シミュレーションのよくあるメディアミックスで、元々はラノベなのか、ゲームなのか、漫画なのか、それとも最初から各媒体での展開を狙って、同時多発的に作られたコンテンツだったのか、その辺はよく分からない。

 何しろ主人公は女の子で、ゲームでは登場する各 男の子との親密度を上げ、ときめきをメモリアルする感じのものなのだから、男である、それも40を超えた身である私には距離を感じさせるコンテンツであった。

 そもそも私は、恋愛シミュレーションにも、ミュージカルにも興味はない。

 まぁ、タイプの違うたくさんの美少年を眺めて若さを補給するのも良いかも知れないが、どうせなら私はタイプの違うたくさんの美少女を眺めていたい、それも、なるべく近くで…

 

 自分のへきはどうでもいい、とにかく美少年ばかりが出る、ミュージカルのイベントには興味が無かった。

 では、なぜ気軽に行く事の出来ない場所で行われる、興味の無いイベントに赴いていたのかと言うと……


 彼女が来るかもしれないからだった。

 

 私は数日前に彼女が楽しげに話す姿を見て一方的に救われた。だから「ありがとう」を伝えたかったのだ。

 いきなり感謝を伝えたらどう思われるだろう?そんな怖さはあったが、構わなかった。嫌われても良い、救ってもらい勇気を貰ったのだ。

 彼女にありがとうを伝える事が出来れば、自分は変われる気がする。本当に救われる気がする。

 私は彼女から貰った勇気が本物である事を、自分の為にも証明したかった。

 

 勇気を試される瞬間はすぐにやって来た。

 横浜に行く為には電車に乗らなくてはならない。

 私はもらった勇気を早速使って、苦手な電車に乗りこみ横浜へ向かった。


 会える可能性などゼロに等しいのに、横浜まで出向いた その結果、彼女と出会えたかどうかは、一先ず置いといて。

 私を救ってくれた彼女が何者なのか、彼女について、少し説明させてもらいたい。

 

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