第382話 天下統一林間学習Ⅲ
俺達の班は、担任から食材がどこにあるかを記したクロスワードパズルをもらう。
担任は生徒全員に地図とクロスワードパズルが行き渡ったのを確認すると、大きく手を打つ。
「さーて皆レクを始めるぞー。制限時間は90分、鬼たちは15分後に捜索を開始するぞ。鬼に捕まったらその時点で探索終了、獲得した食材も没収。ちなみに鬼は陸上部の連中だから見つかったらほぼ勝ち目はないぞ。キャンプ場は湖含めどこに隠れても構わないが、危険な行為はしないように。それじゃあスタート!」
担任のルール説明後、食材集めかくれんぼスタート。俺達は一斉にキャンプ場から離れる。
「相野、入江、まず安全な場所まで逃げてから、そこでパズルを解こう」
「わかった。オレたちのチームワーク見せてやろうぜ!」
初手から裏切ろうとしてたくせによく言う。
俺達はキャンプから少し離れた森の中で、クロスワードパズルを解く。
しかし学校行事らしく数学や社会など、5教科の面白みのない問題が並ぶ。
解き始めて5分――
「まずいな……」
「まずい」
「まずいべ」
シャーペンを持った俺達3人の顔が曇る。
そうこの問題思ったより難易度が高く、全国統一模試レベルである。
「やばいぞこれ、バカチーム不利だ!」
「おいおい、1問も解けてないのにそろそろ鬼が解き放たれるぞ!」
「これもしかして一つも解けなかったら、学年主任が握ったおにぎり確定だべか?」
全員が地獄絵図を想像する。
「ふざけるなよ! オレは美女が握ったおにぎりは食えるが、ゴリマッチョ教師の握ったおにぎりなんか食えるか!」
相野の意見に同意し、三人で知恵を振り絞るとパズルを一つ解くことに成功する。
「解けたぞ! 12番テントの中だ!」
「でかした相野!」
「他の班に取られる前に急ぐべ!」
全員で今日泊まる予定のテント集落へと向かう。
「えーっと12番テントはここか」
テントを確認すると、思いっきり正面に女子更衣用と書かれている。
「ここ、女子の荷物置き場兼更衣室だべな」
「これ絶対答え間違ってると思うんだが!?」
「よし悠介、行け」
「なんで俺!?」
「もし仮に答えが間違っていて、ここに食材がなかったとしてもお前はなんやかんやで女子に嫌われてない。逆に俺達がここに侵入したら、普通に退学だし警察呼ばれる」
「だべだべ、オデなんかいつもカメラ持ってるから盗撮と思われるべ」
「どのみち今皆食材探してるし、誰もいないって」
二人に押され、俺はテントの前に立つ。
「チラッと中見て、宝がなければ戻ってくればいいから」
「オデたちは誰か来るといけねぇから退避してるべ」
「お前それ見捨てるって言うんだぞ!」
「「グッドラック!」」
二人はそそくさと逃げ去っていく。
「くそっ、相野の奴わざとここ選んだんじゃないだろうな」
俺は仕方ない、一瞬だけだと思ってテントを開ける。
薄暗いテントの中には、女子のスクールバッグが並び、奥に段ボールが2つ積まれている。
「これ段ボールの中見ないとわかんねぇ奴じゃん」
俺は靴を脱いで、テントの中へと入る。
もしかしたらこの中かもと思い、段ボール箱を開いて確認するも中身は木炭。やはりここじゃないようだ。
早急にテントから出ようとすると、女子の声が聞こえてきた。
「まずい」
ここにいるのがバレたら人生ツムツム。
そう思い段ボールの後ろに隠れる。すると外から「あれ? なんで更衣テントに男子の靴があんの?」と絶望的な声が聞こえてきた。
「終わる終わる、マジで終わる!」
段ボール裏でガタガタ震えていると、テントの入口が開かれる。
「おかしいって、テントのジッパー開いてるもん」
俺はそーっと誰がいるかを覗き見る。ワンチャン話が通じる奴ならなんとかなる。
しかしそこにいたのは、相野を猿扱いしている山岸。終わった。俺もエロオタク猿として扱われる。
そう思っていると、後ろから不意に顔を出したのは真下一式と弐式。
ギリギリ首の皮繋がったか?
俺は即座にスマホで一式弐式に『今すぐテントを出てくれ。隠れてるのは俺だ』とメールを送る。
彼女たちは同時にスマホを確認して『マズイ』という表情を浮かべる。
「あ、あの、多分誰もいませんし出ませんか?」
「そ、そうそう、鬼が来たら危険ですわ」
「え~? もしかしたら下着ドロかもしんないよ。警察沙汰かも」
恐ろしいことを言って、山岸はテントの中へと入ってくる。
万事休す、今日から俺のあだ名はエロ猿です。
覚悟を決めていると、一式と弐式が山岸を押しのけ慌ててテントの奥へと入ってくる。
「どしたの二人共?」
「い、いえ、我々も確認しようと思って」
「そうですわ、危険ですからね。でも大丈夫、誰もいませんわホホホホホ」
一式と弐式は段ボール裏にいる俺を確認すると、二人で山岸をボディブロックする。
「ほら、誰もいませんよ」
「じゃああの靴誰のなんだろうね?」
「それはわかりませんが、そろそろ出ません?」
「あー待って、私汗キモイから下着とシャツかえよっかな」
「「えっ?」」
山岸の突然の着替え宣言に声を合わせる真下姉妹。
「一式ちゃんも弐式ちゃんも着替えたら? 午前中めちゃくちゃ汗かいたでしょ」
「そ、そーしようかなぁ……あはは」
山岸は尚も動かない二人を不審に思う。
「どうしたの二人共? まるでそこに誰かいるみたいだけど」
山岸クソ勘がいいな。
「あー自分たちも着替えよ着替えよ!」
「そ、そうしましょう」
二人は慌てて自分のスクールバッグを手に取り、着替えの新しい体操服を取り出す。
一式弐式は、俺の前でジャージを脱ぎ体操服の上を脱ぐ。
すると一式はレースの白のブラ、弐式はレースの黒のブラが露わになる。
エロい下着とはこういうのを言うんだよと思いつつ、彼女たちを眺める。
(あなたちょっとは視線をそらすくらいしたらどうですの?)
(いや、嫁の体だしな)
(嫁でも遠慮なさいよ)
(ダメか一式?)
(自分は構いませんが)
(断らないファーストに聞くのはやめなさい)
(お前ら天と3人班じゃなかったのか?)
(お嬢様は鬼が来て、逃げてる最中にはぐれたんです。彼女は別の班)
三人でごにょごにょしていると、山岸がこちらに近づいてくる。
まずいバレたか?
彼女は段ボール一つ隔てたほぼ目の前である。すると弐式が捨て身の作戦で、ジャージのズボンを脱ぐと俺の体に被せ下着姿で俺の頭の上に乗る。
あたかも段ボールの上に座っているように見えるだろう。
「ど、どうしたのかな山岸さん?」
「一式さん弐式さん……いい下着使ってるね。いくらくらいするのそれ?」
「「えっと上下で3万円くらい?」」
「たっか! 嘘でしょ、私のなんて上下で980円よ。いいなー彼氏できたら貸して欲しい」
「し、しかし衛生面が」
「大丈夫、私そういうの気にしないもん」
話を聞きながら、君は気にせんかもしれんが一式が気にするだろと思う。
「あとカップサイズが」
「あぁそうか……それはもうどうしようもないわ。一式さんっていくつだっけ」
「96のGです」
「うーわ、めちゃくちゃ格上だ。これから敬語使うね」
「は、ははは」
「二人共早く着替えなよ」
そう残して山岸は去っていった。
残された俺は、下着姿の弐式に足蹴りされる。
「あなたと言う人は、なんでそんなところにいるんですの!」
「痛い痛い! 違うんだって、パズル解いてたらここにあるって」
「嘘おっしゃい!」
「ほんとだって! まぁ食材はなかったから、解答が間違ってたんだと思うけど」
「まぁまぁセカンド、別に旦那様に体を見られただけですから」
「ファーストが怒らないから、かわりに怒って――ってキャアっ!」
弐式はしゃがみガードする俺を蹴っていたが、自分のジャージを踏んでバランスを崩し、派手に倒れる。
その時一式のブラを掴んでしまい、巻き添えで倒れ込む。
「いった」
「重い……」
「す、すみません御主人様。セカンドどいて」
「何か引っかかって。ちょっとどこ触ってますの!」
三人でもみくちゃの肉団子みたいになっていると、テントがさっと開かれる。
まずい半裸の二人とくんずほぐれつしてるところを見られた! さっきより状況が悪化してる。
しかしテントの前で冷たい目をしていたのは天だった。
「よかった天か」
「……何してるの君たち」
「「す、すみませんお嬢様!」」
「今光秀と秀吉に同時に裏切られた信長の気持ちだよ。まさかボクに内緒で3Pしてるとはね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます