第282話 アプリで開発費を稼ごう 後編

 大会のため高ランクモンスターを探していた俺たちは、雷火ちゃんの下着写真から、Sランクのモンスターを入手することができた。

 写真はAIによってイラスト化するので、胸元をはだけた理系少女の画像は、某いらすとや風デフォルメキャラへと変化する。


「雷火ちゃん、このキャラ大会に出してもいい?」

「ほとんどわたしの面影ないので別に構いませんけど、優勝狙うならSSランク出した方がよくないですか?」


 確かに。この過疎ゲーの大会に応募してくるってことは、ライバルは相当猛者の可能性が高い。

 月も言っていたが、SSランクなら上位に入れる。つまりSSじゃないと1位は厳しいってことだろう。


「とりあえずこれはキープしておこう」

「人間写真から高ランクモンスターがうまれるという説は、ほぼ確定的ですね」

「そうだね。後、エロ画像は強いという新たな説も出てきた」


 そう言うと、雷火ちゃんは慌ててはだけた衣服を元に戻す。


「そうだ、悠介さんもモンスター化してみませんか?」

「俺の写真から、ワンチャン強いモンスター出る可能性あるよね?」

「そうですよ、SSランク出るかもしれませんよ!」


 彼女の言う通り、ちょっと期待しながらカメラのシャッターを切る。

 すると画面が一瞬ホワイトアウトして、アプリが俺の写真を元にしたモンスター生成を行う。

 棘っぽい黒髪に、デフォルメされていてもわかるオタクっぽい顔、Gと書かれたTシャツを着た人型モンスター。そのステータスは――


「攻撃力5 ランクG」


 クソザコだった。

 戦闘力5て。 消しゴムでも300あるんだぞ。

 俺がラディッツだったら鼻で笑ってる数値だ。


「人間でも例外はあるみたいだね……」

「そ、そうですね。期待させてすみません」


 一体どういう計算式で戦闘力を算出しているのか。


「悠介さん、今アプリバトラーの攻略wiki見てるんですけど、やっぱり人間の画像が一番高ランクのモンスターを生成しやすいみたいです」

「俺Gだったけどね」

「あ、あと美男美女の方が、強くなりやすいそうです」

「当たってると思うよ」


 俺がブサイクだから戦闘力にマイナス補正がかかってるのだとしたら、さっきの数字も納得がいく。

 俺をブサイク判定したこのアプリの開発者、絶対許さんからな。


「更にですね、装備ボーナスっていうのがあって、服装や所持しているもので攻撃力に加点が入るようです」

「なるほど。ってことは、棒とか鍋蓋でも持てばいいのかな?」

「火恋姉さんが木刀持ってるので、ちょっと借りてきます」


 木刀を借りてきて、今度は武器ありの状態で雷火ちゃんを撮影してみた。

 すると攻撃力が500アップした、雷火ちゃん(剣)が生成された。


「おぉ、本当に攻撃力上がるんだね」

「イラストも剣握ってて面白いですね。悠介さんも装備有りで撮影したら、強くなるんじゃないですか?」

「やってみよう」


 その理屈でいくと、攻撃力505のモンスターが産まれるはずだ。

 俺は木刀を受け取り、雷火ちゃんに撮影してもらう。


「どう、攻撃力あがった?」

「それが……」


 雷火ちゃんが画面を見せてくれると、生成されたモンスターのステータスは攻撃力3、ランクGだった。


「弱なっとるやないか」



 その後も俺と雷火ちゃんは攻略情報をチェックしながら、SSランクのアプリモンスターを生み出そうと試行錯誤していた。


「悠介さん、攻略掲示板情報なんですけど、男は女性物のパンツを頭に被り、上は裸ネクタイが理論値一番強くなるらしいです」

「それはどういう理論値なの?」


 検証した奴は、なぜその格好をしようと思ったの?


「やっぱり服を脱いだほうが強くなるのかな?」

「ちなみにパンツを脱ぐと、写真全体にモザイクがかかり数値すべてが0になるらしいです」

「放送できるギリギリが一番強いみたいなのやめてほしい」

「いくら写真がデフォルメ化されると言っても、プライド捨ててまで勝ちにいくのはまずいですよね」


 さすがに俺も、パンツ被って裸ネクタイは紳士すぎると思う。


「よし、やろう」

「悠介さん!?」


 紳士すぎるとは思うが、やらないとは言っていない。

 後、俺にはパンツ被って恥ずかしいとかそういうプライドはない。


「パンツは静さんに言って貸してもらうか」


 多分あの人なら、正直にパンツ頭にかぶらせて欲しいと言っても貸してくれるだろう。


 静さんの部屋へと行きドアノックしようとすると、雷火ちゃんが俺の腕を引っ張る。


「やっぱりダメですよ悠介さん!」

「でも、これは開発費の為なんだ。俺だって本当はやりたくない。でも皆の為にはパンツ被らなきゃいけないんだ」

「悠介さん、開発費を免罪符にしてません?」

「さーて被るぞー」


 もう一度ノックしようとすると、雷火ちゃんが俺の襟首をつかんで引き倒す。


「ぐえあっ」

「あの、掲示板に女性は下着で撮影すると強くなるって書いてあるんですよ。さっきわたしのキャラが強くなったのって、これが原因かもしれません」

「確かに、それはあるね」


 エロ画像最強説。


「さっきは上だけでしたけど、今度はスカートも脱いで検証してみませんか?」

「検証って言っても、それじゃ雷火ちゃんが下着姿に……」

「わたし脱ぎますから。と、撮っていいですよ。悠介さんなら」


 耳まで赤くなる雷火ちゃん。

 確かに美少女で、下着姿、そこに木刀を持たせればSSランクが産まれる可能性は高い。

 だが――


「いや、君にそんな恥ずかしい思いをさせるくらいなら、俺がパンツを被るよ。大丈夫、恥ずかしい思いをするのは俺だけでいい」

「悠介さん、絶対パンツ被りたいだけですよね!?」


 そんなことは決して無い。

 雷火ちゃんと二人で、脱ぐか被るかの押し問答をしていると、掃除をしていた一式が俺たちの元へとやってくる。


「御主人様、どうかされましたか?」

「ちょうどいい一式、今女性モノのパンツを頭に被らなきゃいけないゲームをしてるんだ」

「そんなゲーム、この世に存在するのですか?」

「パンツが欲しいんだ、協力してくれ」

「い、今ですか?」

「今」

「わ、わかりました」


 一式は頷くと、カッと顔を赤くしながらスカートの下に手を入れる。

 雷火ちゃんは彼女が何をしようとしているか気づいて、慌てて止めに入る。


「真下さん、パンツ脱ごうとしないで下さい!」

「雷火様、御主人様の要望に応えるのが専属メイドの役目でございます。止めないで下さい」

「悠介さん、彼女の使うくらいならわたしの使って下さい!」


 雷火ちゃんもスカートの下に手を入れる。


「二人共生パンじゃなくていいんだよ!」

「悠君、どうしたのかしら?」


 ギャイギャイと部屋の前で騒いでいたせいで、静さんが廊下に顔を出した。

 着替えをしていたのか、静さんは紫のすんごい下着姿だった。

 いつもはセーターで隠されている爆乳の暴力に、雷火ちゃんと一式は、スカートに手を突っ込んだまま完全にフリーズする。

 俺はパシャリと静さんを撮影すると、攻撃力9999、ランクSSのカンストモンスターが生成された。


 後日、あなたのモンスターが1位になりましたと通知が来た。

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