第4話 聖女へオススメするのはこの一品


「みんなどうしたというのだ」



 俺は一人きりの部屋でそう呟いた。

 謁見の後、皆は気分が悪くなったということで部屋にこもってしまったのだ。

 せっかくエルトロ大聖堂に宿泊できるというのに。

 ルクスやザンと大聖堂をこっそり探検する約束をしていたのだが・・・。



 せめて自分だけでもエンジョイしようと大聖堂の中を見物して回る。

 様々な絵画が飾られているが、芸術品に対する知識がないせいでよく分からん。

 マナやカタリナがいればこういった事を説明してくれたのだが。



「む、そういえば……」



 カタリナにふんどしを勧めたことがなかったのを思い出した。

 同じパーティのメンバーだというのに悪いことをした。

 たしかこの時間帯は湯あみにいっていると聞いたな。

 俺は気配を殺してカタリナのいる場所を目指した。




 ◇


「ん?」


「どうした?」


「いや、何か動いたような・・?気のせいか」



 ある部屋の前で2人の女聖堂騎士が見張りをしていた。

 彼女たちは聖女カタリナの警護を務める実力者だ。

 湯あみをしているカタリナに不埒な者が近づかぬように入り口を固めていた。



 そんな彼女たちの後ろを横切る白い影がいた。

 それはそっと脱衣所へと音を立てずに侵入していった。




 ◇ ハダマside


「さすがは聖堂騎士、良いカンをしている」


 俺は脱衣所の前で見張りをする騎士を一目見て気づいた。

 かなりの手練れだと。

 もちろん戦えば俺が勝つが、俺の目的はふんどしを聖女カタリナにプレゼントすることである。



 戦わずに済ませるため、俺は石灰を砕いて体に塗りたくったのだ。

 世の芸術家がこぞって欲しがるような肉体美を彫刻のように白く染め上げれば、美しいホワイトなマッチョマンの誕生である。



「ふんどしは……これにするか」



 脱衣所にてカタリナの着替えの上に一枚のふんどしを置く。

 黒い絹のふんどしだ。

 カタリナの護衛の話を盗み聞きしたが、彼女は大人に見られたがっているらしい。

 だからこそこのチョイスだ。



 カタリナは幼いころからずっとこの聖堂に住んでいるらしい。

 窮屈な場所に囚われた彼女のストレスは相当なものだろう。

 そんな彼女にこそふんどしがふさわしい。

 ふんどしによって窮屈な下着から下半身を開放することで腰痛、肩こり、冷え性、便秘や下痢に効果がある。

 きっと喜んでくれるはずだ。


 俺はそっと脱衣所を後にした。


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