【#いいねした人とリプでつなげるリレー小説】きみとお空に。

新芽夏夜

【#いいねした人とリプでつなげるリレー小説】きみとお空に。

川を上ろう。お空へ行くために。

海の向こう、お空との境界線を目指した人は誰も帰ってこなかった。

それならぼくらは逆を行こう。海の水は川から、川の水はお空から降ってくる雨が集まって出来ている。辿っていけばいつかお空に行けるはずさ。

それにお魚も川を上り滝を登ってお空を飛ぶというよ。


「何を持って行ったらいいかしら」

冒険家だったおじいさんのお古の大きな鞄。おとうさんの万能ナイフと、学校でもらった方位磁石と、それから。

「ランタンはないから、懐中電灯を持っていこう」

食料は台所からくすねてきたんだ。きみは得意げに笑う。

「地図は?」

「持った!」

準備は万端だ。


川上に向かって歩きだす。昔おじいさんが、この川は二つの流れでできていると言っていた。地図も二つの水源を示すけど、お空への道までは教えない。まだ少し先だけど、合流点でぼくらは選ばなくちゃならない。地図を広げ、考えながら進もう。

「お空へ続く水源はどちらだろうね。氷の山と岩の山」


川を覗いたぼくらの前で、お魚たちが歌い出す。「氷の山から来る水は~昔々に凍ったお水を岩の山から来る水は~この前降った雨の水。お空が恋しいボクたちは~岩の山へ泳いでいくよ~」「ぼくらを乗せていってくれないかい?」「≪持ち物≫をひとつくれたなら~この先の滝まで連れていってあげる~」


「どうしようか?」

「岩の山の方って暗いのかしら?」

「岩の山の向こうの場所は~とっても明るいよ~だってお空のそばだから~」

ぼくらは顔を見合わせて一つ頷くと、懐中電灯を取り出した。

「さあ、これをあげるからぼくらを乗せていって!」

手と手をしっかり繋いでぼくらはお魚の背に跨がった


邪魔な枝葉はナイフで切って進もう。川原に転がる岩はだんだん大きく荒削りになる。お魚は押し寄せる奔流に逆らって泳ぐ。跳ねた水しぶきが頭上を舞って虹が見えた。

「今どのへんかな?」

「方位磁石はぐるぐる回って、いっこうに定まらないんだ」

遠くに大きな滝が現れた。今からこれを登るんだ!


「あの滝を登れるかい?」

「それは〜キミ達の心次第〜」

お空の景色を見たい。きみも同じ目をしている。ぼくらの心は決まっていた。

方位磁石が鏡面を破る。指す先はお空。

「さあ、行くよ」

周りで魚が集まり、無数の虹がかかった。きっとこの景色を夢見る人もいる。それぐらい綺麗な風景だった。


強い流れに打たれながら、上へ上へ。急に視界が拓けて、流れが消える。ここは――お空?

風が吹いた。それに乗って、身体を震わせる。ふと隣を見ると、そこにはきみがいた。姿かたちは変わっても、目ですぐにきみだとわかる。

「いこうか」

「ああ」

二条の龍は舞う。お空の果てを目指して。

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【#いいねした人とリプでつなげるリレー小説】きみとお空に。 新芽夏夜 @summernight139

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