恋愛契約〜俺が担保として男女交際契約を結ばされた件〜

山山羊

第1話 プロローグ


 今日は4月1日。


 本日から新学期を迎え、俺は高校2年生になる。

俺の名前は、秋元宏人あきもとひろと

成績優秀、スポーツ万能、クラスの委員長を務めるトップオブリア充のスーパー高校生!!




………ではなく、ごく普通の高校生だ。


 とはいえ、これまでの高校生活はそれなりに充実していた。

休み時間にバカな話で盛り上がり、放課後や休日は友人達とバカなことをして盛り上がり、ついでに授業中もバカな発言をして盛り上がる。

思い返すとバカしかやってない気もするが…

まぁ、それは今は置いておこう。


 そんな中、俺は常々思っていた。

友情も大事だがもっと大事なことがあるだろうと。

それは、誰もが憧れる"恋愛"だ!

学生の本分は勉強だって?

やかましい!そんなことは重々承知だ!

だが、今は俺の自分語りの時間だ!

ということは、俺が法だから何を言ってもいいはずだ!

神と言ってもいいだろう。


 話を戻そう。

勉強はいつでも出来るが、高校生での恋愛は今しかできない。

だから勉強なんてそこそこでいい。

これまでの俺の人生は、仲の良い女子こそいれど、恋愛関係になることは一度もなかった。

いわゆる彼女いない歴=年齢だ。

なんて敗北感の強い言葉なんだ…

誰がこんな言葉作りやがったんだ!


 放課後、仲睦まじく共に帰るカップルを横目に男子だけで過ごす気持ちが分かるか?

本気でワラ人形を買おうとした気持ちが分かるか?

家で五寸釘ごすんくぎがどこで売っているか調べる気持ちが分かるか?

あいつらは優越感に浸って、俺たちのことを下に見てくる。

「お前らの経験出来ないことを、俺は出来るんだぞ」みたいに思っているだろう。

 

 奴らはなにも分かっていない。

いいか?童貞はいつでも捨てられるものだけど、二度と手に入らないものなんだぞ。

それに童貞を極めれば魔法使いにだってなれるんだぞ!

ということは、童貞の方が希少価値は高く、高度な存在のはずだ。

そんな負け惜しみを言っていても、自分の中の感情は抑えきれない、うらやましい…


 こういう想像を今までどれだけしたことか。

放課後に誰もいない教室に呼び出されて可愛い女の子に告白され、付き合い始める。

その後は学校が終わったら一緒に帰り、休みの日はデートをして、初々しく手を繋ぎつつ共に過ごす。

そして様々な段階を踏んでいき、キスやその先まで経験する。

誰もが一度はこういうベタで普通な想像をしたと思う。

健全な男子高生というのは大体こんなもんだろう。


 だからこれからは甘酸っぱい青春の1ページを全力で掴みにいく。

もうバカみたいな行動はやめて落ち着いた生活を送っていこう。

そしてこんな敗北感とはおさらばして、可愛い彼女とキャッキャウフフの青春を謳歌おうかしてみせる!



 …だが、そんな理想の恋愛はもろくも崩れ去ることを僕はまだ知らなかった。

あの契約のせいで僕の青春は一般的なものとは異なる事態になってしまうことを…

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