第6節 忍の里攻略戦

 カズサは、5万の大軍で忍の里を攻めた。

 そのカズサは、後方で小さな寺に少数の護衛をつけているだけで、そこに陣を敷いて待機している。

 この軍の将は、カズサの次男オダ・ノブオだ。

 実は、この忍者との戦は二度目らしく、前回はこの次男が独断で攻め込み大惨敗を喫している。


「茶筅! 二度目はないぞ?」

「は、はい! 承知致しました、ちち、父上! か、必ずや乱破共を殲滅してみせます!」


 父親であるカズサがよっぽど怖いのだろうか、ノブオはガタガタ冷や汗を流しながら、自軍の配置場所へと向かった。


「アノ、オヤカタサマ。チャセンっテ、ナンデスカ?」

「おう。あやつはどうしようもない無能だからな。せいぜい役に立つのは、結った髪の毛が、茶筅(お茶を点てる道具)として使えそうなぐらいだからな」


 カズサは、ふんっと小バカにしたように鼻で笑った。

 この男のセンスは、僕では理解できずに苦笑いだ。


「ですが、御屋形様も身内には意外とお優しいですね? 他の者なら、処刑ものですよね?」

「たわけたことを抜かすでない。ワシは、一度ぐらいの謀反すら許す寛大な男であるぞ。場合によっては、二度目も許してやろうとしたこともあるわ」

「ああ、いましたね。名物茶道具を渡すことを拒んで、茶釜と一緒に自爆した梟雄でしたっけ?」


 と、カーミラとカズサはその話を思い出して、楽しそうに笑った。

 僕は、聞いていて絶句してしまった。


 ええ?

 何その狂気?

 どんだけ茶道具が大好きなの?

 そんなのばっかりいるの、この国?


 さて、相手の忍者というのは、ゲリラ戦を得意としているらしい。

 この地域は、山に囲まれた盆地のようで、里の中に入るには限られた道を通るしか無い。

 里とはいっても、各地に集落が点在しているようで、各方面から攻める作戦のようだ。

 そのため、各方面に5万の兵を分けるが、これに対して相手は1万にも満たない。

 誰が将になっても、確実に勝てる戦いのように思える。


 しかし、開戦から数日後、未だに決着がついていなかった。

 むしろ、手こずっている。


 相手の忍びは数では負けてはいるが、一人ひとりはかなり手強いようだ。

 そして、数で劣勢と見るや、城や寺などにすぐに籠城を決め込んだ。

 後方にいるカズサのもとに、次々と伝令が飛び込んでくる。


「申し上げます! カモ隊は、河原で野営していたところ、夜襲を受け、敗走中とのこと!」

「申し上げます! ツツジ隊も同様に夜襲を受け、千人が討ち取られました!」

「申し上げます! タンバ隊が、ヒガ城に攻撃を試みるも、落とせず膠着状態です!」


 など、ことごとく良い報告はなかった。

 これに対して、『修羅王』はどう出るか?


「……ふぅ、やはり、あの大たわけでは無理か」


 と、カズサはため息をつき、僕の方を向いた。


「ジンスケよ。ここにいるだけでは、うぬも暇であろう? 南蛮一の武勇を見せつけてこい!」

「エ!? ヨイノデースカ!?」

「うむ。大たわけに足を引っ張られておる他の武将共に発破をかけてこい!」

「ハイ!」


 僕は、聖剣『バルムンク』を片手に飛び出した。


ーカーミラ視点ー


「やれやれ、あやつはとんでもない大うつけのようだな、カーミラよ?」


 カズサは、子供が野原を駆けるような笑顔で飛び出していったジークフリートの背中を見ながら、楽しいものを見るように笑っている。

 私も、生き生きとした想い人を見て、同じように顔がほころんだ。


「うふふ、そうですね。若き日の御屋形様と似ているのではありませんか?」

「たわけたことを抜かすでないわ。ワシはもっと色々と考えておったぞ。あやつとはタイプが違うわぃ」

「そうですわね。ジークフリート様は個の武勇で周囲を引っ張る御方ですわ」

「だが、あのタイプは危ういぞ? 周囲がついてこれずに、いずれ孤立するぞ?」

「古代シーナ帝国の『覇王』のようにですか? 私がついている限りは、そうはなりませんよ」

「ハッハッハ! それほどまでに、あやつに惚れ込んでおるか!」


 カズサは楽しそうに大声で笑った。

 私も表面上は同じように笑ったが、内心では真面目に考えていた。


 大丈夫。

 私も400年前の小娘から成長した。

 大魔王と呼ばれるようになってしまった、かつての救世主様と同じ轍は踏ませない。


ー再び、ジークフリート視点へー


 このにおい!


 全身にヒリつくような殺気が周囲に充満している。

 ところどころに、煙が上がっている。


 これが戦のにおいだ!


 全身が歓喜に震えている。

 僕には難しいことはわからない。

 ただひとつ、僕に出来ること、得意なこと。

 僕は、剣を振るために、突っ走るだけだ!


 何度も罠や火炎魔法で攻撃されたが、軽くかわしてカズサの次男、茶筅ことノブオのいる本隊に合流した。

 どうやら、目の前にある巨大な砦を攻略しようとしているようだ。


 前回の惨敗の雪辱を一気に晴らすつもりか?


 だが、この見るからに鉄壁の砦を攻めるには、無能と称されているこの茶筅では厳しすぎると思う。

 僕もこの国の城や砦について勉強をしたので、多少の良し悪しは分かるが、これは別格だ。

 後で知ったことだが、この砦は忍者の首魁、三大上忍モモヤマ・チサブロウの砦だから、当然のことである。


 山の斜面を登るように主郭、二の廓、三の廓が配置されている。

 廓とは、城や砦の周囲に築いた土や石で囲われた区画のことだ。


 特に高い壁のごとき土塁で覆われた主郭の傍らには、大きな池があり、開けた平地から守るように堀の役目もしている。

 その池の中には、河童と呼ばれる水棲の魔族が伏兵として潜んでいるようだ。

 砦の後方から潜入しようとした兵が、今まさにやられている。


 上を見ると、小高い砦の上からではかなり遠い範囲まで一望でき、おそらく行軍をよく見ることができるはずだ。

 そして、その砦に直接向かうとなると、幅が狭く土塁を高く積まれている小道しか無いので、その上から狙い撃ちにされるだろう。

 これも今、先鋒部隊がやられている。


 さらに、今も遠距離から魔法や矢などの魔道具で攻撃を仕掛けているが、相手にかなりの魔術師がいるのか、見事な結界でことごとく防がれている。

 この国では、陰陽師と呼ばれているそうだ。 

 少数部族の飛行魔法の使い手である天狗と呼ばれる魔族が空から攻めようとしても、相手も同じように天狗部隊が対抗している。

 

「何をやっとるか、貴様ら! 気合で攻めんか!」


 ノブオは、馬上で憤慨しながら怒鳴っているだけだ。

 側にいる武将たちも、この愚将に諦めたような顔をして士気が低い。

 この無能の将ノブオでは、いたずらに兵を浪費するだけだ。


「オオ! バカトノサマ!」

「何だと、誰がバカ殿だ!?」


 ノブオは鬼のような形相で僕を睨んだ。

 周囲にいた武将たちも唖然とした顔で僕を見ている。


 あれ?

 おかしいな?

 この国の言葉で、殿下ってそういう意味じゃないのか?

 みんなこのノブオをそう呼んでるのになぁ?

 まあいいや、帰ってからカーミラに意味を聞こう。


「くそ! どいつもこいつもオレ様をバカにしやがって! 父上のお気に入りじゃなかったら、打首だぞ!」

「ハア、スミマセーン」

「……まあいい! 何の用だ!」

「ハイ! ワタシ、テツダイ、キマシタ!」

「ふん! 南蛮人ごときに何が出来る? 一兵だけでは糞の役にも立たんわ!」

「ダイジョブデース! ワタシ、ツヨイデース!」


 僕は、今度は言い間違えなかった。

 言葉は恥をかくと、もう忘れないものなんだね。

 僕が堂々と胸を張っていると、武将の一人が口添えしてくれた。


「それは、本当の話です。相撲であのライデンと互角にやり合い、剣の腕では南蛮一と聞いております」

「ぐぬぬ! ならば、好きにせい!」

「ハイ! イッテキマース!」


 僕は、一気に前線へと飛び込んだ。


『うおおお! 水渦極突撃イヌンダーティオ!』


 僕は前線部隊に追いつくと、小道の土塁めがけて、元聖騎士最強アキレースから盗んだ必殺技を放った。

 そして、一撃で土塁の片側を上部にいた敵兵もろとも破壊し、道を切り開いた。


『良し! もう一発、水渦極突撃イヌンダーティオ!』

「ぬおおお! 獄炎大閻魔!」


 トドメとばかりに、残ったもう一方の土塁に向けて放ったが、何者かによって相殺された。

 出てきた相手は、オーガのような見た目の魔族だが、オーガとは比べ物にならないほどの何もかもが桁外れの強者の貫禄を感じる。


 やっぱり、ここは『修羅の国』と呼ばれるだけはある。

 次から次へと強者つわものが出てきて、歓喜の笑いが止まらない。


『ハーッハッハッハ! さあ、みんな、今のうちに攻めろ!』


 僕は興奮しすぎて聖教会圏の共通語で叫んでしまったが、兵たちは意志が伝わったかのように砦へと攻め込んでいった。

 さっきの一撃で道が切り拓かれ、数で敵兵たちを飲み込んでいった。

 そして、僕は目の前の相手と一騎打ちに乗り出した。


「我が名は、イセヤマが『鬼神』大獄丸じゃ! 貴様の名は、何という?」


 目の前の魔族は、名乗りを上げているようだ。

 僕もまた、この一騎打ちの名乗りを上げた。


「ワガナハ、セイキョウカイ『七聖剣』ダイイチイ、『神の子』ジークフリート・フォン・バイエルン! マタノナハ、ジンスケ、ダ!」

「よかろう! では、いざ尋常に、勝負!」


 大獄丸は、巨大な金棒を片手に真っ直ぐ突っ込んできた。


 む!?

 速い!


 かなり距離はあったが、一瞬で間合いを詰めてきた。

 真っ向から受けて立とうと、僕もまた「日」の構えで飛び込んだ。


「「があああ!!」」


 僕たちがお互いに得物を振り下ろしてぶつかった瞬間、周囲にあった岩や木々、ぶつかり合っていた近くの兵も全てが吹き飛んだ。


 やはり強い!


 ライデンと相撲でやり合ったときとは違って、今の僕は剣を振っている。

 僕にとって、本気の一撃だ。

 それでも、僕は力で押し負けそうで、そのままジリジリと押し潰されそうだ。


 凄い!

 パワーだけなら、ライデン以上だ。

 これが『鬼神』!

 何て、強者つわものだ!


「オオオオ!」

「ぬおお!?」


 僕は鍔競り合いの状態から、ライデンに相撲で倒された技で大獄丸の体勢を崩した。

 これは寄りといって、相撲における基本的な技のひとつで、相手の重心を崩す技だ。


 あの後、ライデンと何度か相撲を取って、やっと盗めた。

 今使ったのは、寄りの応用技だ。

 そして、僕は体勢の崩れた大獄丸の腹を蹴り飛ばした。


「ハアアア!」

「ぐう!? くそ!」


 ここで大獄丸を斬り捨てようとしたが、距離をとって離れられた。


『ふ、ふふ。ああ、面白いなぁ。さあて、試し合いは終わりだな』


 僕は力試しはやめて、ゆっくりと歩くように間合いを詰めていった。


 どう来る?

 どう出る?


「ふん! 暴風裂波!」

『おお!?』


 大獄丸は、巨大な竜巻を放ってきた。

 僕はこれをかわしたが、後ろにあった木々は巻き上げられ、地形が変わった。

 そして、大獄丸は空高く飛び上がり、呪文の詠唱をしている。


『ハッハッハ! 凄いな! 魔法まで使えるなんて、総合力は暗黒竜以上、アキレースよりも格上だ!』


 だが、笑っている場合ではないな。

 これを迎撃しないと、両軍の兵がまとめて消されるだろう。

 僕も魔力を両手にためた。


「ぬおお! 獄炎大豪雨!」

「はああ! 光矢の大嵐ルクス・テンペスト!」


 大獄丸の広範囲魔法が来ることを読んで、僕もまた光属性の広範囲魔法で迎撃した。

 これは、聖騎士ならほとんどの者が使える光属性の基本魔法、光の矢ルクス・サジタを無数に放つ上位魔法だ。

 大獄丸は地面に降りて来ると、悔しそうに悪態をついた。


「くそ! 我の最強魔法でも倒せんのけ! ワレはとんでもないバケモンじゃな?」

「ハッハッハ! アンタモネ!」


 僕たちは、好敵手が現れたことでお互いに笑い合った。

 

 この後、僕たちは何合も打ち合った。

 どうやら、剣の技術は僕のほうが上で、これで僕は完全に優勢になった。


「ハァハァ。まさか、『三妖』たる我が、ここまで追い詰められるとは」

「サンヨウ?」

「おう。我と同格の妖怪最上位の呼び名じゃ。全部で三体おるんじゃ」

「ヘエ? スゴイナ。アナタト、ドウカクガ、マダイルノカ」

「まったく、何てバケモンじゃ。それを聞いて笑うか? 我ら鬼族以上の戦闘狂じゃな? 『鬼神』たる我ですら、ワレには戦慄させられるわい。」


 と、言いながらも大獄丸は楽しそうに笑っている。

 そして、決着をつけるかのように全ての闘気を金棒に集中させた。

 僕もまた、暗黒竜を一撃で屠った最強の力を全て、聖剣『バルムンク』に込めた。

 お互いに奥の手を出し、ぶつかった。


「「うおおおお!!」」

 

 これで、決着がついた。

 僕の剣は、大獄丸の金棒ごと袈裟斬りに胴体を斬り捨てた。


 戦場はこの一撃で静まり返ってしまった。

 僕は、これに檄を飛ばした。


『さあ、みんな! 一気に攻め落とすぞ!! 僕に続け!!!』


 僕が単騎で砦に攻め込むと、兵たちの士気は最高潮に高まったかのように、後に続いた。

 砦の兵たちは、大獄丸を倒した僕に恐れ慄き、総崩れになった。

 これで大勢が決し、この砦を蹂躙しつくした。


ー再び、カーミラ視点ー


 伝令が見るからに朗報を持ってきたと分かる顔で走り込んできた。


「申し上げます! モモヤマ砦、攻略致しました!」


 この地に来て初めての朗報だ。

 カズサは、ニヤリと笑っている。


「で、あるか! やはり、ジンスケであろう?」

「はっ! ジンスケ殿が、伝説の『三妖』が一角、大獄丸を討ち取りました! その後、勢いづいたノブオ様の軍勢がかの三忍の砦を取りました!」

「まあ! さすがはジークフリート様! 『覇王』らしい戦いをされましたわ!」

「ハッハッハ! であるな!」


 私とカズサがジークフリートの話をして笑い合っていた。


 その時、陣の四方八方から魔弾や大規模魔法で襲撃された。

 陣や寺の建物、家臣たちが声を上げる間もなく、粉々に吹き飛ばされてしまった。


「やった、のか?」


 襲撃の手がやみ、刺客の一人が呟いた。

 もちろん。


「やってはおりませんよ?」


 私の闇魔法の一つ、影創生ウンブラ・クレアーレで漆黒のベールを創り出し、カズサと私だけは無傷でその場に立っていた。

 周囲が何もかも消し飛び、その跡地の土埃が舞う荒れ野に笑いながら立つ『魔王』と『修羅王』に、刺客の忍者たちは戦慄して足がすくんでいるようだ。


「ひぃ!? ば、バケモ……っ!?」

「に、逃げ……っ!?」

「や、やめ……っ!?」

「な、何……っ!?」


 刺客たちは、私が周囲に仕込んでいた闇魔法、影喰いウンブラ・エデッセによって闇の中に引きずり込まれ、跡形もなく消えた。


「うふふ、御屋形様の読み通りでしたね?」

「うむ、この程度は読んでおったわ。あの鷹狩で、乱破者共にジンスケの実力を見せつけたからのぅ。あの刺客は今回の戦への布石にすぎん。怒り狂ったワシを戦場に引っ張り出して、確実に暗殺するためであるからな。籠城で戦を長引かせ、業を煮やしたワシが、最強の護衛であるジンスケを放たせる。そして、ワシから引き離し、前線で足止めするために大獄丸を囮にし、砦まで取らせたというわけである。全ては、ワシを油断させるためであろう」


 カズサが策士面して、手の内を自慢気にさらし、油断しているように見せかけた。

 私もこれに乗って、油断しているように笑った。


「くそ! 何なのだ、あの女は? こんなバケモノがまだいたのか? これで、この里ももう終わり、か」


 少し離れた木の上で様子を見ていた忍者、『修羅王』暗殺未遂の首謀者は悔しそうに呟いた。

 そして、ふぅっとため息をついてその場から離れようとした。


「まあいい、新天地で力を蓄えて……ぐわあああ!!?」

「甘いですね? 『魔王』からは、逃げられませんよ?」


 私達は油断したふりをして、遠くで見ているであろう首謀者が動く気配を待っていた。

 そして、闇魔法の一つ、影移動を使い一瞬で背後に現れ、首謀者を死なないように急所をすべて外し、影創生ウンブラ・クレアーレで創り出した無数の槍で全身を突き刺して捕らえた。

 そして、再びカズサのいる場所まで影移動で戻っていった。


「ハッハッハ! 見事であるぞ、カーミラよ!」

「いえいえ、御屋形様の読み程ではありませんわ。」


 私がカズサのもとに戻ると、首謀者の忍者をカズサの前に差し出した。

 身動きが取れないように、全身を突き刺したままだ。


「ぐっ! こ、殺せ!」

「で、あるか。その前に、聞こうではないか。うぬは三大上忍、モモヤマ・チサブロウであるか?」


 カズサの質問に、首謀者は睨んでいるだけで何も答えなかった。

 これに対して、カズサはニッと笑った。


「その沈黙が答えよのう? 見事な肝の据わり方であるな」


 カズサは刀を抜き、モモヤマの首を斬り落とした。


 あまりにも、無慈悲。

 だが、この『修羅王』が何の意味もなく敵将の首を刎ねるわけがない。

 何が狙いなのでしょう?


 少し、時間が経った頃。


「お、御屋形様!」


 どうやら、カズサの陣が強襲されたことを知った武将が現れた。

 カズサが無事でホッとしたような顔をしている。


「おう、ホリキュウか! やはり、うぬが一番に来たか」

「え? お、御屋形様、一体?」


 戸惑っているホリキュウという武将に、カズサはモモヤマの首を投げ渡した。

 そして、ニヤリと笑った。


「その首を掲げて、全軍を回れ! そして、敵にも聞こえるように大声で触れ回れ!『三大上忍モモヤマと三妖大獄丸を討ち取った』とな!」

「っ! ぎょ、御意!」


 ホリキュウは、カズサに命令された通り、モモヤマの首を槍に突き刺して黒駒で走り去った。


 この後、カズサの読み通り、戦況は一変した。

 敵軍は総崩れになり、自軍は勢いづいた。


 なるほど。

 これで敵の戦意をくじいたわけですか。

 人族の考えることは、真に恐ろしい。


 どの軍も勢いに乗って、敵を数の力で蹂躙し尽くした。

 村や寺院は焼き討ちにあい、忍者たちだけでなく非戦闘員の住民たちの多くも殺害され、忍の里は地獄絵図と化した。

 総人口9万人に対し、3万人を超す、無慈悲なまでの殺戮行為だった。


 苛烈なまでの修羅、『修羅王』の異名はさすがです。

 魔族を悪と聖教会は定義しているが、どちらが本当に恐ろしいのか、私には甚だ疑問です。

 さて、我が君はどのように感じていただけたのでしょうか?

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