第6話 「おとがする」

ざっくざっくと音がする

落ち葉を砕き 木立のなかを

ざっくざっくが鳴り響く


暗がりのなか 道のない場所

落ち葉のなかに

手が埋もれ 膝が埋もれ

やがて身体が凍りつき

ざっくざっくが迫りくる


ざっく、ざっく、ざっく

ざっく、ざっく、ざっく


ざっくざっくが木を叩き

ざっくざっくが闇を斬り

ざっくざっくが霧を呼ぶ



ざっく、ざっく、ざっく

ざっく、ざっく、ざく


ざっく、ざく

音が止み 指先に露が落ち

わずかに四肢が解かれゆく


ざっくざっくが立っている

眼光鋭くこちらを見据え

軽くしゃくった顎先に

ほの白い天空を差す木々の枝


ざっく

ぬかるみそうになりながら

ざっく、ざく

きしむ膝を振り上げて

ざっく、ざっくを睨みつけ


ざっく、ざっく、ざっく

私は落ち葉を踏みしめる



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