箱
鮭B
1.ナンセンスな言葉
言葉が意味を為さなくなるなんてナンセンスだって先生は言った。意味を為さなくなるっていうのは相手に言葉が届かないんじゃなくて届いても文字や記号の羅列になってしまうということ。文字の羅列になった言葉は本来の色や音、心も死んじまう。
でも届くべき人のもとへと行った言葉は活き活きしてるなんてもんじゃない。木々は葉っぱをつけ、風は鳴り自然は指揮を手に取り合唱を始める。
君たちは車、軽トラックに乗り道をゆく。ガタン。かなり道が悪い。石ころによる凹凸に合わせて身体は上へと浮いたり下へ押し付けられたりする。
あっ!曲がり角だ。キキーッ!
右へと身体は傾きこのまま落ちるんじゃないかと思うトラックのドアにグググと吸いつけられている。しかしふと楽になり、平坦でまっすぐな道に入る。上下左右に揺られた身体に心臓だけがまだ高鳴っている。だが冒険はここからだ。
どこへも行ける。飛べる。カエルの楽園にも、日差しの暖かなバスのお家にも、向日葵の咲かない夏も来るかもしれない。
でも問題なのは今この世界は変わってしまったということ。私はこの世界から出れなくなってしまった。それどころか支配権さえも奪われつつある。次に何が出て来るのか、どこへ行くのか、全くわからない。ここもほろほろと外壁が崩れ、完全に私はコントロールを失う。
意識のみが残る。車は止まらない。ガソリンは切れてしまったはずなのに、平らな道をずいずい進む。どこへいくんだろう。それどころか道はあるのか。
まさに冒険。
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