さくらんぼと少年
なるこ葉
第1話
さくらんぼと少年
ひとつ食べてもまだひとつのこってる。
だから、ぼくはさくらんぼがすき。
たまにひとつだけのがあるけど、あれはいやだ。ひとつでなくなっちゃうから。
だから、ママはいつもひとつのさくらんぼを食べていた。
おいしいねっていいながら、たべるさくらんぼが大好きだった。
あるときから、ぼくはふたつのさくらんぼをたべれなくなった。
ぼくより小さい子が家にいるからだ。
ママはその子にふたつのさくらんぼをあげるようになった。
ぼくもたべたいと言ったら、お兄ちゃんだから我慢してといわれた。
ぼくのなのに、ふたつのさくらんぼも、ママも、ぼくのなのに。
さくらんぼなんて、嫌いだ。
ぼくはママが見てないうちにたくさんふたつのさくらんぼをたべた。
あの子がひとつをたべればいいんだ、ぼくはふたつがいいんだ。
そこにママがきて、ぼくはおこられた。
悲しくて悲しくて泣いてしまったぼくを、ママは久しぶりにぎゅってしてくれた。
どうしてぼくをおにいちゃんにしたの?ぼくやだよ。ふたつのさくらんぼもたべたい。ママもぼくだけのママがいい。
いつか、ふたつのさくらんぼをあの子にあげたいって思うよ、その時あなたはあの子のことが好きで好きでたまらなくなるわ。
ママはあなたのことが好きで好きでたまらないからふたつのさくらんぼをあげるの。
あの子はまだふたつのさくらんぼをあなたほどたべれてないの、だから、あげてもいい?
ぼくはよくわからなかったけど、ママがあまりに優しく言うからうなずいた。
そして今、ぼくはふたつのさくらんぼを食べてる。あの子と一緒に。
ひとつ食べたらもう終わりだけど、1人で食べてた頃よりずっと美味しくて、楽しいんだ。
やっぱり、僕はさくらんぼが大好きだ。
さくらんぼと少年 なるこ葉 @mandr
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