第3話 ライバル=親友
さて、姿を消す前の話をしよう。だいたい2日前くらいから。それで充分だろ。
姿を消す2日前
たしかこの日は、対局。相手は俺と同期の石田 桂馬(いしだ けいま)。小学校の頃から奨励会で激しい火花を散らしあった将棋友達の一人だ。そして、石田検校の子孫を自称している。自称な。痛いやつだ。
知らない人に教えておこう。石田検校とは、江戸時代の盲目の棋士、石田流という戦法を生み出した人である。まぁ、将棋のすごい人ってことだけは覚えといてくれ。テストに出すぞ。
さて、対局の結果はと言うと……負けた。久しぶりに桂馬に負けた。完敗だった。
「よぉ、ライバル」
将棋会館を出てすぐに桂馬に話しかけた。
「どうした?我がライバル!どうした?俺の弟子にでもなりに来たのか?ついに俺の凄さが分かったのか!」
それは、例え世界が崩壊しかけても有り得ねえ。と目の前のイキリに視線を送る。勝ったからって調子に乗んなよ。
「ならどうした?」
「普通にメシに誘おうと思ったんだが……俺の奢りで。話したいこともあるし」
奢りと聞いた瞬間目の色が変わって
「分かった。それで何だ?焼肉か?寿司か?はたまたステーキか?」
ヨダレをふけ。汚ねえ!
「高ぇよ!今日はあれだ。焼き鳥とビールだ!」
「ふむ。いいじゃないか!行こうぜ親友!」
痛いから肩から手を離せ!奢ってやんねえぞ!
「美味いな!」
注文したそばから桂馬の胃袋へと消えて行く。おま、腹の中にブラックホールでも飼ってんのか?
「美味いぞ、これ!ほら、食えよ!」
俺の奢りなんだけどな。次言ったらぶちのめすぞ。もちろん将棋で。
「さてと、そろそろ本題に入るか。それで相談とは?親友よ」
声が真面目に変わった。
「二つあるんだが、まず1つ目から」
「おう」
「次の王将戦の特訓しようぜ!」
「いいぞ。2人でか?」
「いや、研究会メンバーで」
「てことは……盤上さんと、駒田くんもか」
盤上さんは、俺らよりも結構年上で今年42歳。6段。ちなみに将棋では、段位は数字が大きいほど格上だ。ちなみに俺は、9段。桂馬はたしか……8段。
駒田くんも同じく六段。ちなみに歳は18。
結構年齢にバラツキがある研究会だが、普段からみんな仲がいい。
「2人にはもう話は付けてある」
「おけ。それで2つ目は?」
「こっちが本題かな」
……
「どした?」
「ああ、最近な、なんかつけられてる気がするんだ」
「ストーカーか?」
「そうだな。最寄り駅を降りたくらいからストーキングされてる気がするんだ。しかも毎回」
「警察に行けよ」
お前にしては珍しい回答だな。
「行った。それで、しばらくの間居候させてくんね?」
「分かった。どれくらいの期間だ?」
「んー、2週間ほど」
「OK!」
これで、桂馬の所に居候させてもらう事になった。
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