第13話 -魔物のいない階層-
昼食を摂り終えた二人は、その場を後にし台地の中央に5階層へと降りられる階段を発見する。
階段を降りて長いトンネルのような洞窟を抜けた先は、眩しくて暗闇になれた目を慣れさせるのが精いっぱいだった。
その時、光に慣れてきた二人の目に映った光景は、先ほどの遺跡のそれではなく赤い色がはがれかけているとても古びた鳥居がそこにあった。
────第5階層。
「鳥居・・・ですね」
「なんで鳥居がここに?」
5階層は、鳥居を入り口に森林に包まれた環境下にあった。
石畳で舗装されていたであろう地面も自然の力で浸食されており奥まで木々でよく見えない。
夜空のうきうきする顔がとても微笑ましいが、死角から魔物が現れないとも限らないので武器に手をつけながらゆっくりと進んで行く。
要所で立ち止まって夜空が警戒してくれており、その間にマッピングを行う。
さっきまでの楽しそうな顔から一変してしっかりと探索員の顔になっているのが、長く探索員をやっているというのを無意識に感じ取れる。
それに無造作に生えている草木の中はとても迷いやすい。
そのためマッピングは欠かせないのだが、自然の力で浸食された石畳はまっすぐと目的の所まで続いているようで道を外さない限りは問題なさそうだ。
しばらく歩くとポツンと枯れ木が真ん中に立つ、寂しい空間に出た。
それはとても大きな枯れ木がだった。
「本当によくわからない空間」
「そうですね・・・」
────ぽかんと眺める二人は枯れた大木の奥にまた信じられないものが立っているのを目撃する。
鳥居とくればもう想像できたも同然のようなものだが、ここは異界。そんなものがあるはずがないと思い込んでいたが現実は違った。
神社だ。
壊れかけた先ほどより大きな鳥居の両端に犬の石像が建ち最奥には木が腐っているような面持ちではあるものの今でも当時の風格を現すようにそびえたつ社があった。
「うわぁ・・・すごい」
「狛犬かな?」
両端の犬っぽい石像を楽しそうに眺めてつぶやく夜空。
「狛犬にしては少し狸っぽいですがどうなんでしょう?」
「そうですね」と鼻で笑い奥へと足を踏み入れる。
大きく風化していてどんな石像だったのかはよくわからない。
そして社の中は何もなくがらんとしており、きっとそこにあったはずの仏像はなく木材で作られ大きな花を象った台だけがあった。
「大昔、ここに誰かいて儀式でもしてたのかと思うとなんだかロマンがありますね」
「きっと・・・調べてもそれがいったい何なのかがわかる日なんて来ないのかもしれないですけど、今は何もわからずにそっとしておいたほうがこの場のためな気がしてきます」
「ロマンです・・・」
目を輝かせながらそっとつぶやく夜空。
社には直接入らず周りを散策する。
石畳が社を丸く囲むように続いており相当昔だったとしても、なかなかの技術があったのだと感じさせるような石畳の外側に等間隔で石造りの灯篭が置かれていた。
けれど壊れているものもあり本来いくつあったのかはよくわからない。
今でもきれいに残っているものは数字のような何かが書かれているものがあった。
そして社の裏へと行くとまた更にまっすぐと石畳が伸びているのが見える。
だが、ここも森林に浸食されまっすぐは歩けなさそうだ。
「それにしても・・・」
「魔物がまたいませんね」
「なんというか地上にいる気分です」
そんな夜空の一言でふっと我に返る。
「そうですね・・・」
見渡す限り大きな空間を形成する壁も近くにあり、本当に森林と古びた社がここにあるだけのようだ。
下手に森の中へと行ってしまうと何かに襲われそうなので無駄に入る気はないが、次の階層へ続く道が見つからなかったなら鬱蒼としてる森林に入ることを考えて見ざる負えない。
「ほかの異界では、こんなことってあるんですか?」
「ん~・・・」
「異界って結構、広い階層で構成されてることが多いのですけど私の中では、ここって1~4階層まではかなり狭いように感じます」
「でも、他の異界も狭い空間で構成されてるところもあったので一概には言えません」
「ただ・・・魔物がいない階層っていうのはこの異界へ来て初めてです」
「私も記事を読み漁ることしかしてないですけど必ず階層ごとに住み着いている魔物が独自の生態系を構築してるってガイドラインとかにも書いてありましたし・・・」
「そうなんですよ!」
「独自の生態系を構築しているっていうのも半信半疑なところがありますが、大抵こういうだだっ広いような空間の階層は、とてつもない魔物がいることが多いです・・・」
「とてつもない魔物・・・」
「はい・・・」
「といっても一昨日遭遇したような大猿みたいな魔物なんですけど、『説明するならあれはゲームでいうところのボスですね』って鈴木隊長が言ってました」
「主とはまた違うんですか?」
「ここら辺の定義がいまいちで、どう呼んでいいのかいまいちわからないみたいですよ」
「主とかよりボスって呼ばれてるほうがなんだかしっくりくる感じはしますけどね」
魔物がいない違和感にしっくりと来ないまま、壊れた石畳が続く道をひたすら前に進む。
そして、とくに何もないまま第6層へと降りれる場所にたどり着いた。
「あっけなく見つかりましたね」
「そうですね」
主クラスと一戦交えるつもりでいたのにあっけなく次の階層へと降りれる道にたどり着いてしまい拍子抜けをしてしまった。
石畳で誘導されるがままに入り口へと来たが造りが変わっておりいつもの見慣れた異界の階層と階層をつなぐ石畳と階段を降りるみちがそこにあった。
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