第二章〜にゃ♡〜
12話
政府管理の飛行場に、一匹の未確認飛行生物が降り立つ。
小型旅客機ほどもある全身には薄汚れた包帯が巻かれており、何の生物かも判断がつかない。
目は落ち窪み生気は見えず、干からびた六枚羽が突風を生む。
有翼の異形に軍が厳戒態勢を敷く中、その背中から、翼を通ってゆっくりと下りてくる女が一人。
「まあ、盛大な歓迎ですこと」
今や見慣れた祭服を羽織ったディヴィナが、二人を見つけるや否や表情を柔らかくする。
「お迎えにあがりましたわ。我らが主の系譜よ」
「ん」
「おーう」
恭しく優雅に一礼する彼女の目には、敬愛する東条とノエル以外の一切が映っていない。文字通り、眼中にないのだ。
「お久。元気?」
「お久しぶりですわノエル様。主に身を案じていただけるなんて、わたくしはなんて」
「お前そんなお淑やかキャラだっけ?」
「っまだ話している途中ですわ!」
ディヴィナのメッキが少し剥がれ、あぁこれこれ、と東条は満足する。
最近は無様に剥かれてヒィヒィ言っている彼女しか見ていなかったせいで、変に真面目になられるとビックリする。
「主とか言って、そんな聖職者みたいに」
「みたいにじゃなくてっ、聖職者ですの!」
「解釈違いだ。コスプレであれ」
「っな、は⁉︎」
「気にしないでヴィーネ、マサはおかしいから」
「勿論存じておりますわ」
「ケモ耳生やせ、ヘソ出せ」
「うるさい! バカアホ! バカ!」
二人の隣に並んでいた総理や官僚が、あまりの蚊帳の外具合に顔を引き攣らせ始める。
そうなのだ、この場には外務大臣を初め、総理である見美までもが参列している。
国のトップにすら目をくれない暴挙に憤る参列者や軍人達の中で、しかし亜門と彦根を含めた上級隊員だけは、一切表情も感情も崩さず、目の前の女一人の一挙手一投足に神経を向けていた。
少しでも不審な動きを見せれば、……即殺せる様に。
見美が咳払いをして、一歩踏みだす。
「初めましてディヴィナ ダムナティオさん。いえ、枢機卿でしたか?」
二人との会話を遮られたディヴィナの顔から一瞬表情が抜け落ち、再びお淑やかな笑みに戻る。
東条とノエルが絶対的な優位存在であるせいで忘れられがちだが、この女は信仰のためなら、人の命など笑顔で奪うテロリストなのだ。
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