精◯の音ぉお‼︎‼︎




 東条の胸から離れ目元の涙を拭う紗命を、灰音は口元に手を当て笑う。


「女々しいねぇ可愛いねぇ紗命ちゃん。お〜よしよし」


「黙り。そりゃあんさんよりは女々しいかもなぁ。だってうちは、女の子やし」


「……まるで僕が女の子じゃないみたいな言い方だね?」


「あら、違うた?」


「……。桐将君桐将君!僕はこんな面倒じゃないよ!もう僕だけで良くない?」


「っこいつ。桐将っ、やっぱこないな獣うちでは飼えへん!落ちとった場所に返してきぃ!」


「んだとこの野郎⁉︎」

「ぁあ⁉︎文句あんか我ぇ」


 いつも通り取っ組み合う2人。

 東条はそんな光景を尊い物を見るように見つめ、


「「わ」」


 もう1度2人一緒に抱きしめた。


「……ごめんな2人共。寂しい思いさせた」


「……うん」


「ふふ、反省するんだぞ〜」


 灰音はチラリと横に目を向け、担架の上で身体を起こしている女を睨みつける。


「……桐将君に唾つけた女、僕が狩ろうと思ってたんだけど」


「もう終わっとったみたいやなぁ」


「ね」


 東条は慌てて謝る。


「も、もうお前達以外の女に靡いたりしないからっ!あ、ノエル、ノエルは許してくれっ」


「もち〜」と笑う灰音の隣で、ぷくーっ、と膨らんでく紗命のほっぺに頭を下げまくる。


「……でもそっか、桐将君はもう、僕達3人以外の女に欲情しないんだね?」


「あ、ああ!」


「……おっけ。黄戸菊」


「はぁい」


 言うが早いか、2人は同時に自身の指をナイフで刺した。


「なっ、何やって」


 ポタッ、と落ちる2滴の赤い雫が、紗命の魔法によって空中で停止、混ざり合う。


 フワフワと東条の顔の前まで浮かんできたそれは、陽の光を反射してとても綺麗で、まるで宝石の様で。



「「飲んで」」



 彼女達は笑顔で、その宝石に似た何かを差し出した。


「……へ?」


 東条は冷や汗を垂らし、目の前の血と彼女達を交互に見る。


「はよ飲んで?」


「な、なぜでしょう?」


「ほらいっき、いっき!飲んでなくないウォウウォウ!」


「あ、あの、」


「「ウォウウォウ!ウォウウォウ!」」


 ウォウウォウしている2人を前に、東条は邪念を振り払い、意を決し、


「っ、なるようになれ、だっ。――ング」


 一息に飲み込んだ。


 瞬間、


「にょッ⁉︎」


 灰音の掌が東条の頭を、紗命の掌が東条の金玉を、



 グワァシッ‼︎



 と掴む。



『『『『『『『『『『Ohッ⁉︎⁉︎』』』』』』』』』』


 中継を見ていた男達の顔が歪む。



 何を、東条がそんな言葉を言うよりも速く、彼の全身を2人の愛が駆け巡った。


「あビャビャビャビャビャビャビャビャ⁉︎⁉︎⁉︎ビャ、ビャ、ぁえ?」


 痙攣、多幸感、そして何事もなく戻る。


「な、何だったんだ?」


 恐る恐る、東条は2人に尋ねる。ニッコニコの2人に。いや何その満面の笑み⁉︎こわ⁉︎


「あ、あの、私の身体に何を、」


「桐将はもう、うちらだけを見てれば良いんよ?」


「……へ?」


「もう君にとって、僕達3人以外の女は女じゃなくなったと言うわけさ!やったね!」


 灰音のハイタッチに呆然と応えながら、東条はふにゃふにゃの思考で考える。


 ……え……待って……つまり……何?……





「…………性欲をぉ、消したぁ?」





「「やったね!」」


 満面の笑みでVサインを作る紗命と灰音の、なんと嬉しそうなことか。


 ……まぁ、2人が喜んでくれてるなら、良い、のか?ぁえぇ?


 人間の根源的欲求、三代欲求の一角が消失した音に、



 東条はその場で白目を剥いて気絶した。


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