終わり
「……マサ、ビックリした」
「俺だってビックリしたわ⁉︎危うく巻き込まれるとこだったぞ⁉︎」ガンッッ
雷装を解いた東条は、今の衝撃で頭部が消し飛び首から地面に突き刺さるカロンから足を退け、……叩きつける。
「ごめ」
「いーよ。それより聞けノエル、ヤベェんだよ!」ガンッッ、ガンッッ
……叩きつけて、叩きつける。
「何?……あとそれも何?」
ノエルはしゃがんだ東条が片手に持つ、恐らく鹿型の残骸であろう物体を指差す。
「これな!こいつ殺しても殺してもすぐ再生すんだよ。だからずっと叩き壊してん、の!」ガンッッガンッッガンッッガンッッ
シュール。でも、それが本当ならその特性は厄介。
ノエルは地面に突き刺さった現代アート顔負けの体勢のカロンを今一度警戒するが、動く気配がない、聞こえていた心拍も無くなっている。
……やはりこれが本体だったか。
「……マサのそいつ、喋った?」
「いいや?てか1秒に1回頭吹き飛ばしてたから分からん。シュココココって言ってた」ガンッ
「……たぶんそれは分体か、もしくはゴーレムみたいな何か。温度が違った」
「温度?」ガガンッッ
疑問を向ける東条に、ノエルは「ん」と自分の蛇眼を指差す。
「あ〜〜なーほーね、んだよ分かってんなら先に言えよ」ガンッッ
「どっちにしろマサは近接の方に飛びついてた」
「ぐっ」ガゴンッッ
ノエルは木剣を振り被り、残ったカロンの身体を叩き割ってゆく。
「これのcellが何かは分からない、けど、考えられるのは創造系か、もしくはゼノみたいな無限再生か。だとしたら殺す方法は本体の破壊、3体同時破壊なんていうのもあるかも。でもマサがそういう手法を取ったように、たぶん藜も同じく壊し続けてる」
「お、おう」ガンッッ
「……ふぅ、マサ『
カロンの全身を50分割したノエルは、木刀を頭骨に突き刺し東条を見る。
「へいへい。2匹一緒にか?」
「んーん、それで2匹同時に復活したら面倒。そっちは経過観察。こっちだけで良い」
「エグいねぇ。んじゃ、」
まさに科学者、流石ノエル。
東条は鹿型をノエルに放り投げ、右腕を上顎、左腕を下顎に見立て餓狼の口を再現、
「はい、『灰顎門』」
掌を合わせると同時に、ゾルン、と下の地面ごとカロンを喰った。
牙の通り道はガラス状に沸騰し、泡立っている。閉じられた口内に入った物が灰すら残らないことなど想像に難くない。
事実東条が腕を開いた後には、少し焦げ臭い熱気が残るだけであった。
「「ジー……」」
2人して残る鹿型の残骸を眺める。
カチャカチャ……カチャ……カチャ……シュゥゥぅ――
……消失。
「……おぉ、」
「ん。終わり」
§
――同時刻、藜の重力球の中でも。
メキメキ、ゴリ、ゴキゴキ、バキブチ、パキ……パチ……シュゥゥぅ――
「ん?お?……あれま、」
消失
§
サラサラと消え去った骨を見届け、ノエルと東条は1息吐く。
「……俺らも強くなってるっぽいな」
「当然」
ニヒヒ、と笑い合い、2人は静かに佇む巨神に近づく。
「これどーすんのよ?」
「壊すの勿体無い、とっとく」
「マジで?」
「ん」
「……まぁ、無駄に意匠凝ってるしな」
「無駄言うな」
――降り続ける雨で火照った身体を冷ましながら、2人は笑う。
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