Σε θέλω.
1度爆砕し、水飛沫を上げながら再び降り積もる島の破片。
瓦礫の山と化し新しく出来た小島に手を掛け、巨神は海から這い上がる。
その肩には、洗い立ての洗濯物よろしくグデる彼女。
「……けほ、けほ。……しょぱ、」
ノエルは髪を振って水を飛ばし、ビショビショになった服を絞る。
……おもむろに瓦礫の中から折れた木を拾い上げ、形を変え木剣を作った。
「……」
――刹那、ノエルの蛇眼が高速で横に動き、木剣を一閃。
空を切る筈だった剣線が火花を散らし、何かを押し飛ばした。
「――ッ⁉︎、……ココココ、」
「……無駄。見えてる」
虚空から揺らめき現れるカロン。
その半身は無惨に吹き飛び、お気に入りのワンドも半ばからへし折れている。見るからに致命傷。
ノエルの瞳にさした感情は乗っていないが、正直内心驚いていた。
あの一撃を躱したのは流石『白』。でも不意打ちが失敗した今、もうアレに打つ手はない。光魔法を利用したカモフラージュも、ノエルには効かない。
「……コココ、Great。手も足も出ない。実に素晴らしい」
「All
興味などない、と木剣を担ぐノエルに、カロンはクツクツと嗤う。
力技、搦め手、洞察力から能力の質まで、全てにおいて常軌を逸した性能。
「コココっ、コココココッ、」
カロンは残った片腕を目一杯広げ、興奮に目を見開き、半壊した頭骨から唾を飛ばす。
「ッ実に欲しい!飼いたいっ!一生私の元に置いておきたいッ、彼らと共にっ、鎖に繋いであげたいっ!」
「……」
「あぁ、だからこそ、だからこそ残念でならない。貴女は王で、私は簒奪者。どうなろうと、私は貴女を殺さなければならないっ!あぁ憎いッ、この運命が憎いッ、忌々しいッ、なぜ世界は美しきモノを私に奪わせる⁉︎」
「……」
がくり、と肩を落とすカロンを、ノエルは気持ち悪いものを見る目で睨む。
なるほどこれは今までで1番だ。1番ヤバい『白』だ。
「……もっと脆弱であって欲しかった。もっと醜くあって欲しかった。もっと、価値の無い個であって欲しかったっ。これ程胸が痛くて、張り裂けそうで、たまらなく辛いのは初めてだッ。あぁ、どうすればいい!私はどうすればいい⁉︎」
「……病院行け」
苦悩に満ちた言葉を吐きながら、その顔には悍ましく歪んだ笑みが張り付いている。
狂気。その貌を言葉にするなら、まさしく狂気だ。
…………?
今日初めて、ノエルの肌に得体の知れない怖気が走った。
「殺したいッ、殺したくないッ」
「……」
「食いたいッ、食いたくないッ」
「………」
「殺したいッ、食いたくないッ」
「…………」
「食いたいッ、食いたい食いたい食いたぃ食いたい食いたいッ」
「……………、」
「――ッッッ食い殺した
――瞬間、
「――どけッッ‼︎」いギャぶベるっ⁉︎」
「っ、……」
いきなり途轍もない速度で突っ込んできた雷光に、ノエルの身体がビクっ、となる。
ちょっと驚いてしまった自分に若干の恥ずかしさを覚えながら、彼女はその青白く光る土煙にジト目を送った。
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