避難キャンプ

 


 ――避難民と怪我人でごった返すキャンプ地の中。


 ちょうど帰還した氷室の目に、懐かしいメンツが映る。


「おーい、毒島君達!」


「?おお氷室、久しぶりだな」「氷室さんも来てたんすね」「相変わらず美人だな」「猫目ちゃんもお久〜」「風代ちゃんもおひさー」


「お久しぶりです」「ニャ〜」


 怪我した軍人を医療キャンプに寝かせた毒島&舎弟は、支給された水と携帯食料を補給しながら一息つく。


「ゆっくり世間話したいけど、これじゃあね……」


「ああ、それはまた今度だ。お前らの方はどうだ?」


「大方制圧はしたから、別の班に合流すると思うよ。毒島君達の方は?」


「こっちもだいぶ片付いたから、俺らは後方の援護に回る。……チラっと前線見たけどよ、結構ヤバいかもしれねぇぞ」


 毒島は水を呷り、汗を拭う。


「特殊部隊、AMSCUだったか、あれの隊長格でようやく圧倒出来る敵が数100だ。あのレベルがこっちまでま流れてきたら戦線崩壊して終わるぞ。今は最前線の奴らが暴れ回ってるおかげで何とかなってるけどよ、」


「っ」


 毒島の言葉に3人も息を呑む。


「てか北海道組と沖縄から来た奴、何なんだアイツら?1人1人が最低でも2級相当の実力者だぞ。沖縄の奴に関しちゃ速すぎて残像しか見えなかったし、今のアイドルってのは全部ああなのか?」


「あー、あの、」

「にゃ〜、そんな強かったのか〜」


 猫目と風代は顔を見合わせ、あの時会った不思議な女性のことを思い出す。


 そんな彼女達に、だけどよ、と毒島は冷や汗を垂らす。


「……それよりもあの、東条の女とか噂になってるセーラー服の奴がヤベェ。まずここでセーラー服なのが頭おかしいし、何つーか雰囲気がヤベェ。ずっと笑ってるし」


「会ったニャ?」


「ああ、助けられた。アイツの周りのモンスター狂ったように殺し合うわ溶けるわ死ぬわで地獄絵図だ。もう会いたくねぇ」


 立ち上がる毒島は、そうだ、と最後に振り返る。


「お前らの総隊長も見たぞ」


「剛力丸さん?」


「ああ。あれも正真正銘化物だな」

「上には上がいるもんっすね〜」「俺も何か能力欲しいわー」「んなぁ」


「ま、1番はカオナシの野郎だがな。そこは揺るぎねぇ」


 笑う毒島は3人に背を向け、手を上げる。


「ま、お互い死なねぇよう頑張ろうぜ」


「うん、」「毒島君も気をつけるんだよー」


「皆、そのバカ守ってやってニャ。バカだからすぐ死ぬニャ」


「黙れクソ猫」



 次会うときは酒を片手に。


 軽口を叩きながら、各々が各々の戦場へと戻ってゆく。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る