13日目
〜Day13〜
――トレントが宙を舞い、コンクリートに亀裂が走り、砂煙が打ち上がる。
半月を描く2本の大きな角が砂煙を切り裂き、
「ブルォオオオッ‼︎」
水牛型ミノタウロスが拳を振り下ろした。
灰音は吹き飛ぶ地面から跳躍し離脱、即構えを取る。
「――ブルォッ‼︎」
「――ッ」
迫る剛拳を首を逸らして躱し、同時に右回転、裏拳で顎にカウンターを入れた。
「っグ、ォ⁉︎」
回転を利用し左腕をしならせ、グラつくミノのこめかみに鉤打ち、直撃。
脳震盪を起こし倒れるミノの顔面に、
「――フゥッ!」
渾身の回し蹴りをぶち込んだ。
「ブッ、モガッ、ブゴゴゴッ」
地面を削り、田んぼへと吹っ飛ぶミノへ向けて地を駆ける。
「トドメだよ」
泥を飛ばし滑るように接近、ミノに拳を引いた。
その時、
「ブルガァッ‼︎」
「っう!」
拳を振り下ろしたミノのせいで、泥のカーテンが出来る。
一瞬視界を塞がれ、後退しようと足に力を込めた瞬間、
「うぁ⁉︎」
足首を掴まれそのまま泥に叩きつけられた。
「ブルァ‼︎ルア‼︎ルア‼︎ルァア‼︎」
泥だらけになりながら、頭部を守り衝撃に耐える。
「っァア!」
「っ――ブルァ!」
逆の足で腕を弾き解放されるも、逆の手のラリアットで吹っ飛ばされた。
空中で1回転し、道路を滑りながら着地する。
「けほっ、けほっ、……強いなぁ」
「油断したな(ボソ)」
「油断した(ボソ)」
「カッコつけてたな(ボソ)」
「カッコつけてた(ボソ)」
「「ぷーくすくす」」
「……」
コソコソと陰口を言う2人に眉をひくつかせ、灰音は泥で崩れた前髪を邪魔そうにどける。
前方には前足を地面につけ、興奮したように泥を掻くミノタウロス。
彼女は腰を落とし、右手と右足を引いた。
「ブルモォオオオオオッ‼︎」
泥を蹴り飛ばし、道路に上がり、コンクリートを抉り突進してくるミノ。
瞬く間にその距離は縮まり、鋭利なツノが彼女に突き刺さる。
――刹那、
「――」
灰音は右足を踏み込み、
一瞬の腰の捻りで全ての力を移し、
右縦拳を放った。
極限までコンパクトにされた、流れるような重心移動。
脳天を貫通した万力に、ミノは白目を剥き、
「?ブモ……モ……モ……ォ」
最後、尻穴から内臓を噴き出して絶命した。
「っ……エグいて」
「……ソーセージ」
東条とノエルは、そのあまりにも凄惨な光景にドン引きする。
とそこへ、
「おーい」
「「っ」」
笑顔の灰音が、可愛らしく2人の顔を覗き込む。
「2人とも、どうだった?僕上手く戦えてたかな?油断してたかな?カッコつけてたかな?ねぇマサ君?何で目を逸らすのかな?ねぇマサ君?」
「い、いえ、あの、泥が、いっぱいついて」
「わっ、ほんとだー!……じゃあ君に洗ってもらおうかな?」
「喜んで」
頭から地面に突き刺さった東条に、ノエルは戦慄する。
「ノエル?」
「は、はい!」
「サラダちゃんと食べる?」
「食べる!めちゃ食べる!」
「そっかーえらいえらいっ。一緒にシャワー浴びよっか?」
「めちゃ浴びる!」
「……」
灰音の気配が消えた後、東条はむくりと起き上がり、
「……ちゃんと食ってやるからな」
丁寧に下処理された牛を漆黒で包み、家に持ち帰るのだった。
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