13話

 


 ――翌日、裸で目を覚ました東条は、ホテルのランドリーで2人分の水着を手洗いし、

 サバイバルリュックを背負って、ノエルはポーチもつけて、再び市内に繰り出した。


 目指すは首里城。沖縄来たんだし一応行っとくか的なノリだ。


 道中寄り道した御菓子御殿では、中のお菓子は案の定トレントに食い尽くされており、ノエルの機嫌が悪くなった。

 予想出来ていたろうに、とても面倒臭い。


 途中見つけた変な実をあげたら機嫌が直った。ちょろい奴だ。

 飴玉1つで知らない人について行きそうでお兄さん怖いです。


 振り回される東条だが、そこで知っている恐竜を見つけ指を指す。


「あっ、あいつ知ってるぞ!」


「ステゴサウルス」


「そうそれだ」


 背中に大きな骨盤を生やし、尻尾に鋭利なスパイクを持つ恐竜。が3匹で草型トレントを食んでいる。


「……」


 ステゴは顔を上げ2人を見たが、敵意が無いと分かると食事に戻った。


「大人しい」


「んな。……あ、」


 とその時、茂みに隠れていた大型肉食獣の群れがステゴ目掛けて飛びかかった。


 サーベルの様な牙が皮膚を貫く。


 瞬間、


「っ⁉︎」「わ」


 2人は瓦礫の裏に身を隠す。


 ステゴ達の背中の骨盤が、拡散弾の如く弾け飛んだ。


 射線上にいた肉食獣の悉くがズタズタに引き裂かれ、緑一色の空間に真っ赤なペンキがぶちまけられる。


 体勢を低くし躱した数匹も、高速で振り回される尻尾のスパイクに串刺しにされ絶命した。


「「……お〜」」


 一瞬で決した勝負に、思わず感嘆の声を漏らす。


 あの獣達も決して弱くない。それを数秒で全滅だ。背中の骨盤など既に再生を始めている。


 やはりこの地帯の生態系は、恐竜型モンスターをトップに回っていると見て間違いないだろう。


「……」


 ステゴは1度2人を見ると、スパイクに刺さった獣を振り捨て、ノソノソと森の中へ消えて行った。


「カッケー」


「ん。早く肉食恐竜見たい」


「絶対襲ってくるじゃん」


「別にいい」


 カメラをしまったノエルがピョンピョンと先を急ぐ。


「ここ良い感じに生態系出来上がってんだから、あんま壊さないようにしねーと」


「ん。気をつける」


 人間を軸に出来上がった生態系ならぶっ壊しても何とも思わないが、人間がいない状態でも回っている生態系を壊すのはなんだか気が引ける。


 これがエゴというものだろう。人間万歳。


 東条とて、むやみやたらと殺戮を楽しむ趣味は無い。SDGsだSDGs。自然は大切にしないと。


 ありもしない軽薄な信念を胸に、彼はノエルの後を追うのだった。

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