8話

 

 マングローブを抜けてジャングルに入った2人は、比較的綺麗な川の水を煮沸、濾過し、水筒に入れてから再び走り始めた。


 道中、


「……おい、あのマングースもどき、お前が蛇だって気付いてんだろ」


「モテる女は辛い」


「ほざけ。アイツの立てる音のせいでモンスター集まってくんだよ。どうにかしろ」


「ん。ぶっころぶっころ」


「ギャ⁉︎」


 ノエルがデカいマングースに執拗に追いかけ回されたり、



「――ッだからっ、何で穴に枝突っ込むんだよ⁉︎」


「Because it's there」


「ジョージマロリーに謝って来い‼︎」


「「「カチカチカチカチカチカチ」」」


 ノエルが穴に枝を投げ込んだせいで、モンスターの大群に追いかけ回されたり、



「っ⁉︎あ⁉︎」


「わー」


「ピィィィィイッ!」


「待てこら⁉︎」


 枝から枝へとジャンプしたノエルが、そのまま怪鳥に捕まれ空へと旅立ったり、


「――ッ離せおら‼︎」


「ビィッ⁉︎」


 東条がノエルごと怪鳥を叩き落とした先が、たまたま沼地で、たまたま電気ウナギみたいなモンスターの巣で、


「あ、やべ」


「ッ⁉︎」


「ビギギギギギ⁉︎」「アバババババ」


 ビックリした電気ウナギの放電でノエルが感電したり、


「おーい、大丈夫か?」


「アババ、ア、ミズッダ」


「ッ⁉︎」「ッ⁉︎」「っ⁉︎」


 感電して魔力調整をミスったノエルによって沼地周辺の地形が変わったり、


「ああもう集まって来たっ、逃げるぞノエル!」


「見てマサ」


「今度は何だ⁉︎」


「カラフルなキノコ拾った」


「何で⁉︎」


「……あ、」


「何⁉︎」


「毒だこれ」


「食べたの⁉︎ぺっしなさいぺっ!」


「ぺっ……あれ?マサが2人」


「手遅れ‼︎」


 東条が拾った物を食べようとするノエルを脇に抱え全力疾走したり、



「疲れた。おんぶ」


「あ⁉︎」


 駄々をこねるノエルをおんぶしたら、そのまま背中で寝始めたり、


 もう色々と何やかんやあって、



「つ、ついた。……絶望的に疲れた」


「スッキリ」


 ようやく第2の目的地、航空自衛隊・恩納分屯基へ到着した。


 ふらふらの東条は苔の生えた自販機をこじ開け、水を取り出し、ゴクゴクと飲んでから頭からかぶる。

 とそこへ、


「ノエルもノエルも!」


 寝て元気いっぱいのノエルが泥だらけの頭を突き出してきた。


「……(こいつ)、おらっ」


「キャ!」


 バシャバシャと水をぶっかけ彼女の泥を洗い落とす東条は、心の中で大きな溜息を吐きながら笑うのだった。



「マジで人いねぇな」


「ん」


「ピー、ピピ」


 軍基地に生き残りがいないのを確認した2人と1機は、今は近くの村を徘徊していた。


 ジャングルを抜ける途中にもいくつか村を通過したが、やはり人の影は1つも確認出来なかった。


「隠れるとこ少ないし、仕方ねぇか。やっぱ都市部行ってみないと分かんねぇな」


「ん。早く那覇行こ」


 森へ向かおうとするノエルの頭を、東条が引っ掴む。


「もう道路使おうぜ。疲れた」


「……仕方ない。いよ」


「……誰のせいだと思ってんだこのクソガキ」


 近くに転がっていたバイクを起こした東条は、呆れ顔でエンジンを吹かした。

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