19話

 

 彦根が頭を悩ましていると、そこへ、空気などお構いなしに一匹の猫が切り込んでくる。


「まーささ「ふんっ」ぶふっ!」


 猫目は力を入れた腹筋にぶち当たり、顔面を抑えて転げまわる。


 続いて、風代と氷室、加藤がペンギンとアザラシを連れてやってきた。


「お、おはようございますまささん」


「おう、おはよう風代」


「ンゴォ」


「はっはっ、お前も元気そうで何よりだ」


 アザラシと戯れる東条に加藤が微笑む。


「その子はダイチくんです。此方のペンギンはウミちゃん。是非覚えてあげて下さい」


「ダイチか、男らしい良い名前だ!」


「ンゴォ!」


「ぶははっ、息くっせ!」


 平和な光景を見ながら、氷室はノエルの傍に座る。


「おはようございますノエルさん」


「ん、おはよ」


「随分と騒がしかったですが、此方で何を?」


 ノエルは彦根を指さす。


「レベル計ってた。ノエルは測定不能。褒めて」


「レベル?面白そうですね。よしよし」


 氷室の言葉を聞いた四人が、彦根の持つ機械に目を向ける。


「あ、皆さんもやりますか?」


「やりたいっす!最高何レべっすか?」


「最高はLv7。国家壊滅級だよ」


「パネェ!」


 手を広げる猫目に、機械が向けられる。


「まささん何レべっすか!」


「6」


 ピっ


「パネェっす!何レべっすか⁉」


「Lv2だね」


「だはっ、ひっく!」



 続いて風代。


 ピっ


「Lv2だね」


「おそろっす!」


「ちょっとっ、抱き着かないで下さい!」



 氷室。


 ピっ


「お、Lv3だ。凄いね」


「氷室っちスゲーっす!」


「ふふ、特訓したもの」



 ダイチくんと、ウミちゃん。


 ピっピっ


「Lv3にLv3、これは、ビックリだ」


「アザラシとペンギンに負けたっす!」


「ンゴォ」「ピャっ」


「あははっ、おりゃおりゃ!」


「ンゴォっ」「ピャー」



 最後に、加藤。


「……加藤さんは、僕も緊張しますね」


「はははっ、そんなに期待されても困りますよ」


「俺も気になります」


「ノエルも」


 三人で画面を見つめる。


「……では」


 ピっ




「…………Lv…7」




「ちくしょう負けたっ」


「加藤、褒めてあげる」


「おやおや」


 彦根は再度天を仰ぎ、東条は悔しさに地面を叩き、ノエルはしゃがんだ加藤の頭を撫でる。


「はっはっ。どうやら私は、国を滅ぼしてしまうようですよ?」


「ンゴォ!」「ピャァ!」


 国家壊滅級のが初めて観測された、歴史的瞬間であった。



 §


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