第102話
――「へー。じゃあ魔力使いすぎると元に戻っちまうのか」
「違う。元に戻ったんじゃない。戻した」
「何が違うんんだ?」
「こっちも、こっちも、本当のノエル。生まれた形の方が楽ってだけ」
下半身だけ蛇化している彼女が、交互に自分の身体を叩く。
「あー、んで原理は?」
「パーってして、全部組み替える」
「んん……」
ノエルの回復を見計らい、色々聞いていた東条だが、どうもパッとしない回答が多く困っていた。
そもそも彼女自身詳しくは分かっていないのかもしれない。そんな気がしてならない。
「あの木生やすやつは?」
「まさの言う、cell」
「急速成長的な?」
「違う。元は魔力。それを植物に変えれる」
少し現実的な度合いから突いてみたが、やはりというか、無から有を創り出す途轍もない能力。乾いた笑いが出てしまう。
「いやー、神やん」
「神」
ピースするノエルにピースで返す。
「でも、まさのcellはその上。反則」
「それほどでも」
「まさのcell、単純に衝撃を吸収してるだけじゃない。衝撃は運動エネルギー。寝てる時キャンセルしてるのは光エネルギーと音エネルギー。……音は少し聞こえる様にしてるみたいだけど」
「……なるほど」
確かに、そこら辺について深く考えたことは無かった。『吸収』と『放出』それが自分の能力の全てだと考えていた。
「まさのcellの本質、エネルギーの変換だと思う」
「変換?」
「ん。今は取り込んだエネルギーを運動にエネルギーに変換してる」
「……他もまた然り、か」
「ん」
もしそうなら、やれることが大幅に増える。疑似的な魔法を使うことすら可能かもしれない。
一度諦めた夢の再燃に、東条の口角が上がる。
「ありがとな。これから練習してみるわ」
「ん」
新しい発見の感謝に、東条は休んでろと言い残し食料調達に向かう。
その背中に、「そう言えば」、と声がかけられた。
「まさのcell、デメリットは?」
「ん?別に無いと思うけど」
「ありえない。Cellは、んー……魂、そう、自分の魂とか、在り方を具現化したもの、だと思う。限度を越えれば、肉体にしろ、精神にしろ、必ず浸食されてく」
「ノエルに葉っぱが生えたみたいに?」
「ん」
嫌に真剣な表情の彼女だが、思い当たる節が無いのだからしょうがない。
「分からん。なんか気付いたら言ってくれ」
「……ん。分かった」
あっけらかんと答える東条を、少しだけ心配気に見つめる彼女だった。
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