第33話



 ――東条はお湯を頭から被り、壁に手をついて項垂れる。


「……やっちまった」


 ようやく冴えてきた頭で思い返すも、羞恥に顔が熱くなる。


 初日の過ちをまた繰り返してしまった。これで自分のあだ名は、露出狂か変態パンツの二択になったことだろう。


 身体を拭く物もなく、水の滴るままたった一つの服を着て、出口からそっと顔を出す。


「ふふっ、なに泣きそうな顔してはるんですか。これ、持ってきたで?」


 出口に立っていた紗命が、彼にタオル用のシャツと掛布団を渡した。


「……どうやって」


 シャツは枝の上に干していたのだ。まさか登ったのか?


「魔法を使えばお茶の子さいさいやでぇ」


 彼女は東条の身体に付いている水滴を、指の一振りで空中に集めた。


「あぁああ、貴女は神だ。この恩はいつか返すぞっ」


「ふふっ、期待してるわぁ」


 服を着る為引っ込んだ彼を確認する。


 ……紗命は集めた水を手の上に置いた。瞬間、魔法の解かれた水玉は、彼女の手を介してビチャビチャと地面に落ちる。








 彼の水で濡れる自分の手を見て、ニッタリと微笑んだ。

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