弾丸里帰り 6

さて。

私たち家族は、今回、弾丸里帰り、または弾丸帰省である。


帰りももちろん、


        弾丸離郷である!



※住んでる年数は、すでに富山王国より千葉のほうが長かったりする。



葬式が終わったその足で、我が領土となった千葉へと戻るのである。




         の、前に。




実家の家族とお食事をちょろりと。

久しぶりの富山のお寿司を堪能。


子供たちのたっけぇ寿司をどんどん注文していく様に、妻のティモシーと私は戦々恐々とするが、そもそも私は寿司で一番好きなものはウメである。


安上がりなのでいくらでも頼めるわい。

頼めないのはティモシーだけ。

いいから食えよ。遠慮するなよ。するだろうってめっちゃ怒られました。



「どっちのおじちゃんも同じもの食べるからどっちがおじちゃんかわからない」



アネムスよ。

よく見ろ! おじちゃんのほうがしっかり頭に生えてるだろっ!?

な? な! な!?









そこで知った風習。


近しい人が亡くなると、葬式が終わるまでナマモノを食べてはいけない。



精進落としといって、本来は四十九日までナマモノ食べないという習わしがあったそうで、現代では薄れているものの、富山ではまだ一般的だそう。



……まぢすか。

昨日、めっちゃナマモノ食べまくりましたよ……?









さあ。腹も膨れた。

富山の例のラーメンで傷ついた心(?)を美味しい寿司で払拭した私達は、千葉へと戻る旅へと進む。

十七時から千葉へと。



千葉へと……

千葉へと…………。



今から八時間の、旅へと。進む。





























来る時は次第に明るくなっていったが、その時とは違ってどんどんと暗くなっていく高速道路の道。

少しずつ減っていく、共に高速道路を走り続ける乗用車の心強い仲間達。


陽が沈み、一気に暗くなると、ほぼ真っ暗闇。

その中を八十キロオーバーの自動車がびゅんびゅんと通り過ぎていく。

明かりは、車のハイビームのヘッドライトの光だけ。

その光が照らす、ガードレールの蛍光反射板。

時折反射板が貼り付けられていない真っ暗闇の道が私の目の前に広がる。


葬式の後は、同じ道を走らないようにしたほうがいい。という迷信をもとに、常磐自動車道ではなく、関越自動車道へと進むパパ上家のルーミーこと白龍。

常磐自動車道より関越自動車道のほうがきっと高速道路の夜を照らす電灯があるはずだと希望を持って進めば、ほっとんどない。


進む道を、間違えた、か……?



ちょっとでも見間違えればそのままガードレールにぶつかってしまうだろう暗闇を、鉄の塊がびゅんびゅん進んでいく。

追いつき追いつかれる自動車たちのヘッドライトを見ればほっとする暗闇。

恐らく互いにほっとするのか、会うとしばらくは追従しあう。


しだいに塊となる自動車の群れ。なんとも心強い光ではないか。

ペースメーカーは高速道路の猛者、大型トラック。時々意地悪な大型トラックがいて、妙な幅寄せをしてきたりするのは真夜中ではやめてほしい。まぢ死ぬぞ。




関越自動車道を集中力切らさずに目の前を見据えて進む私。

こんな命がけの集中なんて滅多にしないから、よく途切れないなと思う。

この力、作品書くときに発揮出来たらなぁ……


……おっと、車からぴーぴーと警告音がなった。白線を越えてしまったようだ。

※実は、古い道路でもあるので白線もほとんど見えてません。



「……かわる?」



妻のティモシーが連発する警告音に、不安げに声をかけてくる。


「いや、これ、お前運転怖いだろ」

「だよね」


流石にこの恐怖は味あわせられない。でも今にして思えば、助手席のほうが怖いのではなかろうか。


静かな暗闇の高速道路の旅。

――と思いきや、後部座席では子供らがゲームの音をばっちりだしてやがったり、私のアニソンがなり続けてるのでそこまで静かではなかったりする。



「これ、かなりやばい。帰りは夜中にかけての走行はやめよう」



しかも今回は葬式直後である。

次回はしっかり休んでからいかないと、絶対事故ってマミる。






そんな暗闇の中。











ばーん。





と遠くに光が見えた。


最初は雷かと驚いた。これで大雨なんて降ろうもんなら、いや、少量でも降ったら……――脳裏によぎるはナウシ〇の名言。ジルを殺したように、ジルってしまう。




家族みんなが、本格的に怖くなってくる。

次第にその光は、












「あ……あれ、もしかして」







希望へと、変わっていく。















      長岡まつり大花火大会。





日本三大花火の一つ。



二日間にわたって開催される、二万発の大規模花火大会である。


大倫の華。




それが、私たちの暗闇を照らす。







びーびー、びーびー






あ、そりゃ花火に夢中になって目の前みてなかったらジルりますな。

ありがとう。警告音。おかげで花火が見れねぇぜ。

























東京へ近づくにつれて高速道路の脇に電灯が現れてくる。

そして、ぽつぽつとあった家の光も、密集した光へと変わり、私の目の前に、光が復活した。




「おお、光よ……っ」






この時すでに、家族は就寝。

今現在の時刻は二十三時半。


もうすぐ、もうすぐ家に着く。

恐らく後二時間は走れば――



――左です。左です。


よし、わかった。曲がる。

カーナビ様を信じて曲がる。




だが。











光が消えていく。






















「このカーナビ! また最短の道を教えやがったな! これ北関東自動車道じゃねぇか!」


どこだよ足利って! 金太郎か!?

どこに連れていく気だよ! もう一個向こうの道曲がるのがいつものルートだろうが!

この道は、最短じゃない! だって私がこの道知らないから恐る恐る走ることになって結局遅くなるからっ!




結局着いたのは、午前三時。みんなぐったり夜更かしである。次の日――あ、もう当日か。会社だったもののさすがに休む。



夜の高速道路はまぢ怖い。

それが今回の強制里帰りの教訓でした。






とまあ、そんな、弾丸旅行。


皆さんも、高速道路に乗るときは、珍しいラーメンがあるからって勇気を出して手をだすのではなく、まずはそれが本当に美味しそうかを考えて頼みましょうね。


まずいラーメンは、存在しない!

だけど好みはある!

だからこそ、ラーメン大国、日本!

なわけですからっ(笑



そんな私の、数日間の、弾丸旅行。

お楽しみいただけたなら幸いです。




では、長々とお話した里帰りのお話はここまで。



ではでは~



にんにんからの~



どろんっ☆





あ、ちなみに。

富山までの距離は、純粋に六時間程度が普通です。

休憩二時間入れて八時間。なので、ぶっちゃけると、結構ゆっくり安全に走って八時間です。

でも、大体渋滞に巻き込まれるので、安定の十時間となります。

このカーナビさんやぐーぐるまっぷさんが案内する時間というのは、本当に、何事もなく安定して百キロ程度の走行を続けたらこれくらいの時間、という案内なので、そんなのできるわけない、と常に思っていましたが、まさかの、夜に出たらそれに近しい時間で辿り着けるとは、ほんと思ってもいませんでした(笑


日本って、小さいようで大きいですね。

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