大見出しとかつけてみました(お絵描き:リメイク 水守風火さん)



――ぎしっ。


そんな音が、一歩踏み出した時に踏み込んだ足の下から聞こえた。

その音は、床の軋み。


それが続いて鳴るようならまた違った意味合いになってくるだろうけど、私が一歩踏み出して鳴った音なのは間違いないのだからそれは床の軋みである。


さて。

そんな床の軋み。

どこで鳴ったかと言えば、我が家。別に痛んだとかではなく、単純に私の体重の重みで床が「うぐぅぅ……重い。主人よ、昔はあんなに軽業師のように軽かったのに、どうしてそこまで一気に太った。歳か、歳のせいなのか。運動してないからじゃないのか。それとも、もしかして、おなかに何かが溜まっていてそれが重たいだけなのか?」と我が家が悲痛に叫んだだけなんだと思う。


……太った?

ほっとけ。


さて、そんな我が家とのスキンシップは置いておいて。


「今、鳴ったわね」


目ざとく、私の妻であるティモシーがにやりと笑った。


「あー、あれ、なんだっけ。時々家から鳴るやつ、なんていうんだっけ?」

「家鳴りのこと?」

「え、そんな名前だっけ? なにそれかっこいい。きゅんってしちゃう☆」

「正しくは、ポルターガイストとか、妖怪がいたずらして家を揺すったりするとかのことを日本ではそういうらしいけど、今の時代では温度とかの変動が原因で家が軋むことを言うらしいわよ」

「ああ、鬼切か」

「え、なにそれ」

「ん? 鬼切安綱。似た名前の刀が鬼丸国綱。鬼丸は皇室の御物、天下五剣の一つだよ。天下五剣の中でも御物になるから国宝とか重要文化財の指定を受けてないんじゃなかったかな。一番一般公開されないやつだったはず――」

「……長いっ!」

「――鬼切安綱と鬼丸国綱の二つがあって混合されやすいんだけどな。で、似た刀繋がりで思い出した。鬼丸は北条家の誰やらかが夢で小鬼にうなされていたのを、刀の化身から夢見で解決方法を伝えられてその通りにしたら、火鉢を、その刀が勝手に動いて切り落としたって逸話があって、その火鉢が鬼が変化してたんじゃなかったかな。まあ、そんなことから鬼丸って名付けられたとか」

「止まらなかった……で、そこにどこに家鳴りが?」

「ん? 勝手に鞘走ったのかそれとも抜き身で置かれてて倒れたのかは知らんけど、勝手に倒れるってことはポルターガイストとか、その家鳴りによる細かな振動ってことだろ?」

「夢がない」

「何をいうか。こんなにも刀を愛してやまないパパ上様に夢がないと言うとは……」

「っていうかそんな話したかったわけじゃないのよ」


おっと忘れてた。

なんかにやってしたところから話があるんだと思ってたんだ。

妻の話を聞かないとはなんとも失態。

ささ、今すぐ正座するので話してくれたまえ。風呂にはいる直前の裸だけども。


「ほら。私の実家」

「あ、あれな。『チョット・ユカ・ユルク・テ・アシシズンデ・イタメール』だな」

「……なんで分かるのよ。後なんで裸で正座してるのよ。どうやってアレ隠してるのよ。ってかその呪文なによ」

「いや、アレを隠してる方法とか、そこどうでもよくね? だってあれ、俺が起こしたやつじゃん。『チョット・ユカ・ユルク・テ・アシシズンデ・イタメール』」

「そうそう。よく分かったわね。そう、私が言いたかったのは、その『チョット・ユカ・ユルク・テ・アシシズンデ・イタメール』よ」


それは、もう何年前のことだっただろうか。

結婚して息子が生まれたかどうかだから、恐らくはもう十年は経っ……え、もう十年経ってるの!? と驚くほどには前の話だったと思う。


ティモシーの実家は、なかなかでかい。

そりゃもうでかい。

そりゃ、その辺りの地主であった人が先祖であって、親戚には近隣の土地持ちが多いことからも、なかなかの家系だったりするわけだ。


そんな家。

かなり、ぼろかった。

私がティモシーに会いに行ったときもそうだが、床が腐っている箇所があるほどだ。歩いている時に「あ、そこ腐ってるから踏まないでね」と床を指さされたときは何を言われているのかと思って踏んだのも懐かしい。


そんな腐った床。

息子が生まれて親戚の子供達で集まったときに、子供を追いかけたときだっただろうか、いや違う。まだげっぷが必要なくらいに小さかったチェジュンを抱っこして歩いている時だったかもしれない。


私が、その床を、腐っていたことを忘れて踏み抜きかけてしまったのは、そんなときだった。


ものすごくたゆんで床が抜けたかと錯覚するほどにぐにゃっと歪んでは私を奈落の底へと落としかけた床。

後もうちょっと体重をかけたら確実にぱきりと逝って私は踏み抜いていただろう。


そんなことがあり、元々危ないけどお金がかかるからどうしようかという話があったところに、ある意味部外者である私が、踏み抜きかけたのだ。娘を連れたままに。

そりゃもう、あちらの親が焦るわけ。


「パパ上君が怪我する!」

「危ない! 子供じゃなくてよかった!」

「子供じゃなくてパパ上が!?」

「いや子供じゃなかったからこそいいんでしょ! パパ上だったからまだ大丈夫だったのよ!」

「そうか! パパ上だったから大丈夫だったのか! そりゃそうだ! 抜けたら子供一人がすっぽり落ちるだろうし!」

「そう、パパ上だったからよかったのよ! たとえ落ちてても大丈夫だったし!」


……なんか、すいません。


とあの時思ったもんだ。


「その結果、妹が結婚して婿を連れてくる頃と被って、丁度新しく建てかえたんだよね」

「よしも悪くも、といったところだけど、まあ建てかえる口実になったと思えばいいんだけど」

「いいんだけど?」

「今思ったら、俺……。お前さん家の財産、喰ったりしてないかな……」

「ああ、私の貯めた貯金は食い潰したけど、実家のほうは関係ないでしょ」


ちょうど正座をしていたので、ゆっくりと、三つ指突いて頭を下げていく。


「この家も十年くらい経って、少しずつ家鳴りもするようになったんだなぁって思うと、感慨深――なんで土下座しだしたっ!?」

「いや、その建てかえの口実が俺だから……」

「元々婿を迎えるときには建てなおすって話あったんだから誰もそう思ってないって!」


なんか、すいません……。

酷く落ち込んでいく私。



――ぎしっ。



音がする。

それはどこから鳴ったのかは分からない。


だけども、どうやらこの我が家は、私を慰めてくれるかのように音を鳴らす。



後何年この家が家鳴りで答えてくれるかはわからんけども。

きっと、この家は、私達と一緒に育っていくのだろう。




これが、複数だったら違う意味。

それこそ――


「ポルターガイストみたいにぎしぎし言い出したらきっとこの家も建てかえ時だな」



いつか、床が腐って抜ける前には。

それこそ、『チョット・ユカ・ユルク・テ・アシシズンデ・イタメール』が起きる前に。




リフォームも、考えよう。




そんなお金、ないけどねっ!










ぱんなこっただ!





という、なんかちょっといい感じに家鳴りが起こるもんですから、ふと文字にしてみました。

さてはて。そんな『チョット・ユカ・ユルク・テ・アシシズンデ・イタメール』、皆さんも経験したことあるんじゃないでしょうか。

『チョット・ユカ・ユルク・テ・アシシズンデ・イタメール』はいつどこで起きるかわかりませんから気をつけましょうね。



さて。ここらで再度のぱんなこったしましてっと。

今回のお絵描きはリメイク回。

前に二度程描いたお絵描き。その一つをリメイク。

近況ノートでもぱんなこった検定してましたが、その答えをここに置いておこうと思います。



■水守風火さん

https://kakuyomu.jp/users/sutoomu



ちょっとどころではないポーズ変えで定評のある(?)リメイクですが、今回も同様にポーズ全然違います。いや、違う? 違わない? どうなんだろ。ま、いっか(ぁ


https://note.com/292339/n/n7e31841caed3



でもここだけであえて言うとですね。

水守さんのお絵描きと、静野ふゆさんことヒャッハーさんのお絵描きで共通して言えることなんですけど……。


実は。























めっちゃ服を描くのが楽なんですっ!




















それはそれとして。

私、先日、とあるお絵描きを見て、やっちまったって思ったんです。

なので、次はまた描き直しをしたいなって思ってます。

そろそろ新キャラを描きたいところですが、その前にちょっとリメイクを。


Twetterの雪うさこさんの呟きのやつじゃなくて、あれはあれで別枠なので新しいの描くんですけどね。

中華まんを食べてるやつが、構図似すぎちゃってて。

また描き直したときに、みてやってください。

今度は中華まん持ってないかもしれないですけど(笑


とはいえ、いつになるかはまたそれは別のお話……――



ではでは~



にんにんからの~



どろんっ☆


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