我が家の国歌


 家族がマック食べたいって言うから寒空の中歩いて買いに行って。

 財布に入った一ヶ月のお小遣いでもなかなかの金額となる三千円は、


「宝払いで」


 そんなこという嫁によって、なかったことにされる。


 ねえ、その宝って、見つかるの?

 その宝って、たからくじ? うちら買ってないよね?

 むしろ、どでかいたからくじが当たったのなら、もっとプラスしてちょうだいよぅ


 それとも、大海原に旅立ってRPG風の宝箱見つけて金銀財宝がっぽがぽして払うのかな?


 ……んなわけないよね?


 でも、そんな宝払い。

 私が(貸し借りなく冗談で)昔っから言ってる魔法の言葉だから、言い返せるわけもなく(?


 つまりは、自業自得であったりもする。




 そんな悲劇(?)という日常がある、ある日のパパ上宅にて。




「ドアを開けたら~つめたぁいくうき~」



 がちゃりと会社から帰宅し、玄関で愛用の合皮靴を怒られないように並べて脱いでは口に蒸着なマスクを外すと、バッグを、中身に気をつけながらゆっくりと地面に降ろし、スーツの上着をフンガーハンガーにかけてからズボン脱いでまたフンガーハンガーにかけて、そこからYシャツのボタンをぷちぷちと外しながら豪快にネクタイを外して床にさらりと絹糸が零れ落ちるように下ろしては、雨で濡れた髪をかきあげて汗と雨でオヤジ臭全開の悪臭を封じ込めた灰色のTシャツを脱ぎ捨て片足あげて靴下を一足ずつ脱いではトランクスをパンツァ――長いし全部玄関で脱いでるし寒いわっ!


 ――帰宅し、我が耳に入ってきたのは、そんな、「寒いからドアを開けるなこのたぬたん腹」と罵倒をしているかのように今の状況にぴったりな、娘と息子の合唱する歌だ。


 最初は玄関のドアを私が帰宅するときに開けたがために寒い空気が流れてきてるからなのかと思ったが、流石にリビングと玄関の間にはもう一つドアがあるので冷気は流れていかないし、玄関は常にこっそりとゆっくりと開けて気配を絶ちながら中へと入るパパ上だから、気づかれているわけもない。



 であれば。

 ……なんで?



 その歌は、毎年私達家族が、夏休みまたはゴールデンなウィークに我が家となった千葉の一戸建ての居城から、我が愛する富山王国にて、帰ったら実兄様からお小遣い貰えないかなぁ、(・ω<) てへぺろ☆なんて、いい歳こいたおっさんがあり得ない妄想しながら7と11の鮭とば片手に八時間耐久高速の旅に向かう際、必ず三回は流れては皆で大熱唱する歌だ。



 眠気覚ましの歌でもあるのだが、この歌、実は最初の入りが優しくて眠くなるんだよなぁ。

 なんて思いつつ、なぜそれがリビングから聞こえるのかさっぱりだった。


「パンツァダァストのぉあまぁのがわぁ」



 アルトバイエルン出しっぱなしでアルトバイエルンもポークビッツ以下に縮みこみだした寒い玄関で、私はなぜかその子供たちが歌う歌を聞き続ける。

 つ~か、そこで我が家の神聖なる儀式、パンツァーダストを出すなっての。


「さ〜走り出そーよあけのまちへ〜」


 去年は全国的にあんなことがあって、多分今年も無理そうだけど、私の実家には帰っていない。

 なんだかんだでLINE電話でやり取りしてたりするけども、やっぱり、子供達の子供の時間も短いのだからこそ、私の実家の大婆おおばば様や母上様には生で顔を合わせさせたいものだ。



 ……実家に帰れないからといって、今リビングでこの歌を軽く替え歌しながらチョイスしている理由は分からないのだが。



 よくテレビのCMでも流れている曲だ。

 フルで歌うことは滅多にないかもしれないが、私は昔からフルでその曲を持っていたので、子供達はその曲を小さな頃から子守唄のように聞かされているので、私より歌詞を覚えている。

 もしかしたら今ちょうどテレビのCMで流れていたのかもしれない。


 ……にしては、長いこと歌ってるな。


 子供達二人のデュエットは、今も、リビングに響いている。

 そこに嫁も参戦し出しているのだから、本当に何が起きているのか分からなければ、私も参戦しなければならないのだろう。


 素っ裸で玄関に立ちすくむ(すくんでいるのは体だけじゃないよっ! 私の大事な大事n――( 'д'⊂彡☆))Д´) パーン)私は、玄関の扉を今誰か知らない人が開けたらどうなるのだろうかとドキドキわくわくしていた心を必死に押さえ込む。


 そんな、我が家の国歌ともなりかねない歌を。


 脱ぎたての靴下さいきょうのぶきを両手に持ち、家族の鼻元にぐりぐりさせようと画策する素っ裸の私が。


 その歌に混ざろうと。


 リビングの扉を盛大に開けながら叫ぶように歌う。














「はーしれはしーれぇ! いすゞのとらっくー!」


















 ちなみに。

 私の家の車は、SUZUKIの軽自動車、パレットである。







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 おしゃーっ!

 カナリヤさん、やっと我が家の歌だせましたっ!


 いくつもある歌の中の一つですが、やっぱり我が家はこれですね。


 なお、この後どうなったかを簡単に書きますと。


 間もなく小学生3年にもなろうお年頃の娘がいるのに、裸で襲い掛かってくるのは何事かと嫁に正座で説教をされるパパ上。そしてにやにやと笑顔の嫁。

(この時点で私の最強の武器は取り上げられている)


 娘は何も気にせずコタツで猫のように丸くなり続け。

 なぜかパパ上の隣で正座させられる息子。


「おい、お前が食らえよ」


 と、両方の靴下を交互に鼻にぐりぐりされる始末。



 ……うん。これ、何のプレイかな?



 ただ裸で登場しただけなのにこの酷い仕打ち。

 ……あ、ここかっ Σ( ̄口 ̄




 ぱんなこった!




 ちなみに。

 皆さんもこういった歌あります?

 個人でも家でも。

 共通の歌でも。

 あったりすると思うんです。


 ちなみに私個人の中での国歌は、いつまで経っても、



   【鳥の詩】



 という、Liaという【クリスタルヴォイスの歌姫】と呼ばれる方が歌う、かれこれ10年以上前の歌なんですけどね。




 まあ、そんな露出狂の話は今日はここまでにしときましょう。



 ではでは。

 ぱんなこったの今日も今日とて~


 どろんっ☆


 ってなこってす!

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